大阪府・市が大阪北港にある人工島「夢洲」に誘致を進めるIR(カジノを含む統合型リゾート施設)について、大阪の市民団体は26日、IR誘致の是非を問う住民投票条例制定に賛同する署名が必要数に達したと発表した。
IR誘致を巡っては、カジノに反対する大阪府の市民団体らが3月25日から5月25日までの2か月間、IR誘致の是非を問う住民投票を求める署名活動を行っていた。
住民投票条例の制定には有権者数の50分の1に当たる約14万6,000筆の署名が必要だが、市民団体の発表では、それを上回る約15万7000筆の署名が集まったという。今後、市民団体は選挙管理委員会に署名を提出する。各自治体での審査で署名が有効だと認められれば、知事に住民投票条例の制定を請求できる。それを受けた吉村洋文知事は、府議会を招集し条例案を提出する流れとなるが、IR誘致を推し進める大阪維新の会と公明党が圧倒的な議席数を占めている府議会では、否決されるであろうというのが大方の予想だ。
市民団体の共同代表の1人は「議会と住民意見の間に『ねじれ』があり、住民の声が反映しない」と主張。「区域整備計画が国でも承認されれば、いよいよ自治体と運営会社と実施協定が結ばれます。協定締結に向けてこの署名をぶつけます」と述べている。
IR誘致を問う住民投票条例制定を巡っては2021年1月、横浜市でIR誘致に反対する市民団体が必要数の3倍となる約19万筆を提出し、条例案が市議会で諮られた。議会で住民投票条例案は否決されたが、その後の8月に行われた横浜市長選ではIR誘致に反対する山中竹春氏が市長に当選し、横浜市のIR誘致が撤回された。また、ことし1月には当時IR誘致を目指していた和歌山市議会においても、IR誘致の賛否を問う住民投票条例案の採決が行われたが反対多数で条例案は否決された。その後和歌山県では、資金計画の不透明性などを理由に県議会でIR誘致案が否決され、IR誘致計画が頓挫した経緯がある。
大阪府のIR設置・運営事業予定者は米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを主体とする特定目的会社(SPC)「大阪IR株式会社」。区域整備計画では、大阪の人工島「夢洲」にIRを誘致し、2029年の秋から冬ごろの開業を予定している。年間の来場者数は2,000万人、売り上げは5,200億円、経済波及効果は年間1兆1,400億円を見込んでいる。