11月に復活したMGSサミットでは、業界の専門家たちが、マカオのゲーム業界が回復への道のりにおいてどのようになっていくかについて、それぞれの考えを概説した。
コロナ後の世界では、マカオはどのように見えるだろうか?これは、11月のMGSサミットで業界の専門家たちが、世界最大のランドベースゲーミングの中心地が世界的なコロナの感染拡大から浮上した時に、何が変化していて、何が変わらないかに関するそれぞれの意見を述べた際に大きな注目を集めた質問だ。
具体的に、いつマカオが2019年に2,924億6,000万パタカ(4.1兆円)ものゲーミング粗収益を生み出した街のようになるかについての意見は様々であった一方で、特にカジノフロアにおける変化は避けられないことについては広く意見が一致した。
サイエンティフィック・ゲームズのアジア地域バイスプレジデント兼マネージングディレクターのケン・ジョリー氏は次のように語った。
「現在マカオ市場を見回すと、(スロットエリアの)41%~52%の電子製品の電源がオフになっているが、そのフロアが変更・再調整され、我々が、保健局が何を望んでいるかを理解した時、カジノフロアは劇的に変化するだろう。
それはまた、プレイヤーがどれだけの近さを好むかという点も反映するだろう。その距離はおそらく今までより少し遠くなり、製品のレイアウトも異なるものになる。背中合わせのバンクよりも小さな島が増えるだろう。それによって、我々はフロアにあるすべての製品に再び電源を入れることが出来る」
回復の鍵は、マカオのゲーミングおよび観光事業者が安全な方法でゲストが動き回ることができるという自信を彼らに与えることができるかだ。これはすでに中国本土で示されている。観光客が省間を移動できるという自信を取り戻したために、2021年上半期に国内観光が100%以上急増した。比較すると、マカオへの旅客数は、入境制限の頻繁な引き締めと緩和によって、2021年全体で大きく異なっている。
アリストクラートのアジア太平洋地域ゼネラルマネージャー、ロイド・ロブソン氏によると、これは2022年へと向かうマカオの事業者にとって重要な検討事項を浮き彫りにしている。
ロブソン氏はこのように説明した。「(回復は)大きく技術面、マカオでのデジタル化の使用に主導されると思う。これは必ずしもゲーミング決済の観点からだけではなく、人々を入境口を越えてシャッフルし、彼らをごちゃまぜにしてホテル客室に入れて、効率的かつ接触のない形で施設内を移動させるのを助けるものとしてのデジタル化の使用ということだ。数年前と比較すると、その分野で最も大きな革新と機能強化を目にすることになると思う」
行動面では、プレイヤーが、ゲーミングフロアで課される可能性のある制限にどう反応するかを知るには時間がたつのを待つほかない。たとえば、マスク着用の義務は、自由への障害か、逆に「密な環境にいる際のプレイヤーにとっての当たり前になり始める可能性がある」と見られるかだろう」。IGTアジア担当セ ールスディレクター、マイケル・チアーズ氏はそう語る。
「彼らは単に普通の風邪のようなものを予防するためにその行動を続けたいと思うかもしれない。しかし、物事が必須ではなく自発的になると、プレイヤーは独自の基準を見つけ、はるかに快適に感じるようになる。
マスクが自主的な選択になり、人々が自由に向けたまた一歩であると感じたら、彼らはより参加し、カジノ内をより自由に動き回ることができると思う。それは大きな心理的効果をもたらすだろう」
チアーズ氏は、少なくとも電子ゲームの観点からは、コロナ禍がマカオでプラスの作用を持つことが分かって来るだろうと見ている。マカオでは従来、収益の90%以上がゲームテーブルからのものだった。
チアーズ氏は次のように述べている。
「電子分野が我々の市場で成長し続けることは間違いなく、それには電子ゲーミング機(ETG)とスロット製品の両方が含まれている。
一部のフロアが、バンクレイアウトなどの形で、間隔や社会的距離の類に対応できるように再設計される可能性がある一方で、これからETG製品や高品質のスロット製品が伸びることは間違いないと思う。お客様は電子式のゲームにますます順応してきていると感じる」
いずれにせよ、ロブソン氏は「新しい規範」が永遠に続くとは見ていない。同氏は「9.11前と9.11後から今日までの期間に航空業界で起こったことと今回の事には興味深い類似点があると思う。
もちろん、新しいイノベーションが生まれたが、物事は常に大概は元あった場所に戻ってきた。だから一時的な変化はたくさんあるだろうが、これが新体験への機会も作り出すだろうと思う」と述べた。
特に注目すべきは、2020年にマカオのGGRを前年比79%減の604億4,000万パタカ(8,500億円)にまで減少させたコロナ禍の影響は、事業者のマカオへの投資への熱意を衰えさせていないという点だ。サンズ・チャイナは今年、20億米ドル(2,200億円)をかけたザ・ロンドナー・マカオをオープンさせ、ギャラクシーエンターテインメントグループ(GEG)はギャラクシー・マカオ第3フ ェーズの完成に近づいている。
GEGの広報担当シニアバイスプレジデントのバディ・ラム氏はMGSサミットで、グレーターベイエリア内の都市がそれほど遠くない将来に観光マネーをめぐる激しい競争を再開すると予想していると語った。
ラム氏は次のように述べた。
「私たちはマカオの長期的な将来の発展に自信を持っている。新型コロナの感染拡大が抑制されれば、すぐに旅客数が2019年の水準に戻ることがわかる。
我々は回復に向けた準備をするつもりだが、その間にもこの業界内で自己改善に取り組む必要がある。グレーターベイエリアの開発は、この地域の都市間で競争が起きることを意味する。例えば、広州と香港はこの時期に大規模な観光プロジェクトを多数展開している。それゆえ、我々はこの競争に立ち向かい、この休止期間を使って競合他社に対する自社の立ち位置を引き上げる必要がある」
MGMチャイナのケネス・フェン氏は、マーケットシェアがマカオ最小のコンセッション保有者であるMGMチャイナの将来は 「投資にかかっている。しかし、中国がさらに発展するにつれて、我々はその繁栄を享受することになるだろう。私はそうなるとを確信している」と述べた。