アジアのゲーミングおよびレジャー業界を取材して16年目を迎えたIAGの新連載では、ちょうど10年前の特集記事「Join the Club(次に来るのは?)」から、2011年10月当時の話題を振り返る。
アジアの統合型リゾート市場は過去10年の間に急激に成長した。マカオは世界のゲーミングの中心地としての地位を固め、フィリピンはアジアNo.2として明確に台頭し、ベトナム、韓国そしてカンボジアといった国々が、この地方の勢力図に押し入ってきている。
しかし10年前にはこれほど多くの選択肢はなく、マカオとシンガポールのみ、そのシンガポールがたった12カ月前に2つのIRを開業させ、大きな注目を集めたばかりだった。
IAGの2011年10月号では、業界がアジア全土でどのように形成されているのか、そしてどの法域が将来、競争力のあるゲーミング地として台頭する可能性が最も高いかについて考察していた。読み返してみると、非常に興味深い記事となっている。
国内初のIR、リゾートワールド・マニラのオープンから1年を少し過ぎたばかりのフィリピンは当時、未知数だと考えられていた。IAGが書いたように、アナリスト達は市場の大きなチャンスは認めながらも、不安定な政治状況とインフラの問題を考えて、投資を集めることへの懸念も示していた。それら懸念は、大部分が事実無根であったと証明されており、過去10年間に3つのIR(まもなく4つになる)を有するエンターテインメント・シティが、2019年(コロナ前)には業界のGGRを43億米ドル(4,730億円)にまで押し上げた。
韓国とベトナムも、IR開発という点においてはその間に大きな動きを見せており、それぞれが3つのIRをオープンさせた。しかし、そのインパクトは確実にフィリピンほどの規模には達していない。注目すべきは両市場が、それぞれ1つを除いては(韓国の江原ランドとベトナムのコロナリゾート)、外国人専用に厳しく限定している点で、故にコロナ禍の多大な影響を受けている。
おそらく、2011年に我々が考察した国の中で最も興味深いのが日本と台湾だ(そう、台湾!)当時推測されていたのは、日本が、津波と原発事故からの復興を支援するための手段として新カジノ法を通す準備をしているというものだった。事実、2つの法案のうちの最初の1つが最終的に成立するのに6年かかった。そして過去数年間の大きな盛り上がりの後、日本版IRの未来はかつてないほどに不安定な状況となっており、政府が来年、予定通り3つのライセンスを発行するかどうかに大きな疑問符がつきはじめている。

台湾に関しては、年間約20億米ドル(2,200億円)ほどに相当する業界という予想に言及しており、離島に位置し、中国本土市場をターゲットにした2つの統合型リゾートで構成される可能性が高いとしていた。しかし、我々は実現するにあたって克服しなければならない多くの政治的な障害にも注目していた。それ以来、時折関心を示すような動きが見られており、2013年には観光カジノ管理法(Tourism Casino Admin-istration Act )が成立したが、2つ目の法案はまだ成立していない。そしてその一方で、澎湖と金門の二県で行われたカジノに関する住民投票では反対派が勝利という結果が出ている。