マカオの統合型リゾートと観光事業者がコロナ禍から回復するのを早めるカギは、ワクチン忌避を克服することかもしれない。
マカオのカジノ収益が2019年またはパンデミック前の水準に戻るのはいつになるのか?これは、新型コロナの感染拡大によって2020年1月にマカオの中国旧正月イベントが突然中止となり、その直後に15日間のカジノ閉鎖が余儀なくされて以来、たびたび聞かれる質問だ。
マカオのカジノと観光業の回復の軌跡、そしてレジリエンスの構築というのが医学的データと科学に基づいているのは明らかであり、医療専門家達は、核酸検査、追跡技術、新型コロナの急増と新たな変異種の抑え込みの方向へと我々を向かわせている。お隣の広東省で最近コロナ感染が拡大したことで、訪マカオ旅客数とカジノ収益は即座に打撃を受け、回復の軌跡がいかに簡単に変わってしまうかということに気づかされた。マカオの主要供給市場の1つがそのような逆風にまさにさらされようとしているということがほとんど示唆されていなかったことを考えると、ゲーミング粗収益に関する短期予想は、1カ月前、今よりはるかに良く見えた。
新型コロナ再拡大後の広東省の一部報道が、結果としてワクチン接種率が上昇したことを伝えた。ここで特筆すべきは、ワクチン忌避の課題克服における主要ファクターの1つが、新型ウイルスを脅威として認識することだということをそれが示している点だ。ワクチン接種率は今や、世界的に観光、ホスピタリテ ィ、イベントそして娯楽産業の回復戦略に埋め込まれており、再開の中心的要素となっている。
同様に、マカオ政府は、ここ数カ月にわたって成人に対してワクチン接種を促しており、操作が容易なオンラインワクチン予約プラットフォームや多数の接種会場など、街ぐるみの公衆衛生キ ャンペーンを開始している。
最近では、マカオのコンセッション保有6社による奨励金やワクチン休暇取得制度が従業員のワクチン接種数の増加につながっている。繰り返しになるが、こういった奨励制度はワクチン接種に消極的な人を説得するのに効果的な手段であることが分かっている。
「アジアで複数の変異種が発現していることを考えると、街を安全な状態に維持しながら、マカオは集団免疫の目標に向けた取り組みを加速しなければならないという課題に直面している。マカオは経済的に観光に依存している。そしてこのために、継続的に入境口を開き、トラベル・バブルが一定の訪問客を確保してきた。それはまだ限定的であり、業界が利益を生むにはさらなる開放が必要となる」
これは英医学誌「ランセット 地域保健西太平洋版(The Lan-cet Regional Health – Western Pacific)」で、マカオのワクチン接種の課題と、観光業の回復、カジノの採算性そして街のレジリエンスを育むことの関連性に関して、私と共著者であるホセ・ピント氏が考察し、そして最近発表した解説の締めくくりの言葉だ。
つい先頃、私はマカオのあるホテルのエレベーターに4人の大人と一緒に乗っていた。統計的に計算すると、ワクチン接種を済ませているのはそのうち1人だけだった。その場でエレベータ ー内アンケートを実施して全員に聞いてみたい気持ちに駆られた。「ワクチンは接種しましたか?なぜ受けたのですか?なぜ受けていないのですか?」
マカオにおけるワクチン忌避のさらなるデータの作成は、接種率向上の方向に進む中で確実に価値あるものになるだろう。そのデータには、年齢、教育水準、家庭環境、雇用業種、居住者/非居住者などが含まれ、政府がワクチン接種の呼びかけおよび印象作りを行う際に役立つだろう。後々役立つデータとして16歳以下のワクチン接種に関するデータも将来的には可能性としてあり得るかもしれない。
現在進む入境口の再開と回復の一環としてワクチン接種率を上げるという問題においては、季節性のインフルエンザ同様、新型コロナは風土病になるだろうとを医学的に断言することが検討される必要がある。
しかしながら、ホセ・ピント氏と私が書いたように、「ワクチン接種を通じて集団免疫を獲得することで(中略)、これが、新型コロナを深刻な病ではなく一般的な風邪へと変化させてくれる。これは、非現実的な世界での根絶よりも、好ましくそして最も可能性の高いシナリオだ」。
この将来的に可能なシナリオを踏まえると、マカオの新型コロナワクチン接種レベル、コロナ関連の措置、ワクチン証明書そして年次のワクチン追加接種が、マカオのカジノ、ホスピタリテ ィ、観光、小売、交通そしてイベント業界全体で普段の会話の一部になる可能性は高い。マカオにとってのカジノおよび観光の回復の軌跡と時間枠がどういったものになるかに関する将来的なシナリオ計画およびまとめデータの一部として、おそらくそれらは差し込まれるべきファクターだ。