クラウン・メルボルンはビクトリア州カジノライセンスを保持すべきか? これを決めるとなったとき、「公益性」とは具体的に何を指すのか?
2021年2月22日、クラウン・メルボルンへのフィンケルシ ュタイン王立委員会の設置とその調査範囲がビクトリア州の官報に掲載された。これは、約3週間前に結果報告を行ったニューサウスウェールズ州でのバーギン調査に続くものとなる。同調査では特に、クラウン・シドニーがバランガルー限定のゲームライセンスを実施するのに適格な法人ではないこと、そしてその親会社であるクラウン・リゾーツはそのゲーミングライセンスを保有する会社と近しい関係にあるのに適した法人ではないということが報告された。バーギン氏が適格性に反していると特定した行為のほとんどが、クラウン・リゾーツの別の子会社であるクラウン・メルボルンが運営するメルボルンのカジノに関係したものだった。
2つの調査の主な違いは、バーギン氏がニューサウスウェールズ州のゲーミング規制機関である独立酒類・ゲーミング局から任命されたのに対して、レイ・フィンケルシュタイン氏はビクトリア州知事に任命された点だ。コミッショナーのフィンケルシュタイン氏は、公共政策の明示と、それを実行するための法的枠組みの開発及び通過を担当するビクトリア州議会に報告を行う。ビクトリア州のカジノ規制当局であるビクトリア州賭博・酒類規制委員(VCGLR)は事実上脇へ追いやられた形だ。実際、フィンケルシュタインコミッシ ョナーには、 委員会の調査結果または提言の結果、VCGLRが施行する法的枠組みに変更がくわえられるべきかどうかを検討することが求められている。
シドニー、メルボルン、パースにあるライセンスを持つクラウンの各子会社、そして親会社自体の適格性に行き着く問題を特定し、調査し、明らかにすることに関わる大変な作業の大半がバーギン氏によってすでに行われたため、フィンケルシュタイン氏は調査範囲にある「クラウン・メルボルンがビクトリア州のカジノライセンスを保有し続けることは公益に資するものであるかどうか」にかなりの時間をつぎ込むと予想できるだろう。 これこそが、王立委員会と、カジノ規制当局によって委託された調査との違いが重要になる点だ。

ビクトリア州のカジノ管理法は、VCGLRに対して、中でも特にカジノライセンス保有に関するクラウン・メルボルンの適格性、そして同カジノライセンスが継続して有効であることが公益に資するのかどうかについて定期的な見直しを行うことを求めている。同法は、公益性というものを「カジノ事業の信頼性、公正性、安定性への国民の自信と信頼の創出と維持」に鑑みて規制当局が決定するものと定義している。
この定義は、クラウン・メルボルンがビクトリア州のカジノライセンスを保持し続けることを認めることが公益に資するかどうかを評価するフィンケルシュタイン氏の権限の幅を制限することにはならない。同氏の権限はVCGLR、またはカジノ管理法に由来しておらず、コミッショナーに、調査範囲を追求するための大幅に強化された権力と権限を与える2014年の調査法から生じている。
それが良く分かる例を挙げてみよう。カジノ運営とはVCGLRがライセンス保有者によって公益性が保護されるのかどうかを判断するための基準であり、基本的には認可されたゲーミング活動の実施に配備される社内プロセスとシステムだ。そこに含まれないのが、ライセンスを保有する法人のガバナンスの質と独立性、カジノライセンスやゲーミングの実施を規制する法律以外の法(マネーロンダリング防止法など)の遵守、そしてビクトリア州の福祉や経済発展に対してカジノができる可能性のある貢献などといった事柄だ。
これらの事柄は、VCGLRが行う法で定められたライセンスの見直しに関係する基準ではないものの、クラウン・メルボルンがカジノライセンスを保持し、利用し続けることを許可することが、公益に資するのかどうかをはっきりさせようとする際に、王立委員会のコミッショナーが言及するかもしれない要素の範囲には入っている。
公益性審査がフィンケルシュタイン氏の委員会に提起する複雑さというものは、その決定を導くために委員会が適用する基準、そして各基準に持たせる相対的な重さにある。単に、「公」の範囲を構成しているのは誰かということをはっきりさせる必要があるだろう。その言葉には、ライセンス保有者としてのクラウン・メルボルンというよりも、カジノ自体に反対する可能性が高いギャンブル反対派が含まれるのか?そのような規範的な見方は、例えばライセンスの規定に従うという点でのライセンス保有者のパフォーマンスという経験的な見方よりも重視されるべきなのか?
クラウンが実際にクラウン・メルボルンで資金洗浄が行われたことを認めるのを嫌がる根底にあるのがおそらくこの葛藤だ。同社がこの点を認めた場合、この規範的な見方が経験的見方と一致し、それによってクラウン・メルボルンのライセンスは公益性の理由から取り消されるべきであると主張する人々にはるかに大きな重みを与えることになる。
懸念を示す集団(一般的に宗教団体と福祉団体の混合)が主張するような規範的な議論に対する反論としてよく使われるのが、クラウン・メルボルンはビクトリア州最大の単一施設雇用者であり、クラウン・サウスバンク複合施設はメルボルンで最も訪問客の多い場所の1つ、そしてそのカジノは州有数の納税者の一つであるというものだ。そのすべてが真実であるかもしれない一方で、これらの指標はクラウンの投資と運用上の知識から生まれた同社独自の産物なのか、それともまもなくオーストラリア最大の都市になる場所で25年以上も州後援の独占営業を行ってきたベテランカジノ事業者に期待されるであろう当然の結果なのか?どのように評価するかはともかく、クラウンが州のために生み出した利益の中で、疑われているマネーロンダリング防止法違反、そして組織犯罪グル ープとの取引によって生まれた利益はどの程度を占めるのだろうか?は、州のために生み出されたリターンにどの程度貢献したのか?
公益性審査は、プライバシーや国家安全保障法などの分野、そしてオーストラリアでは長年にわたって酒類販売許可で用いられてきた。しかし、立法または司法のいずれにおいても、そのような審査に関して、指針が著しく少ないままとなっている。意図的なのか初めからそうなのか、それらはむしろ主観的なものになってきており、その言葉を定義するための実質的な努力は行われていない、またはそれを決めるための方法論的アプローチは取られていない。
フィンケルシュタイン氏が、バーギン氏が立証した以上のものを提供しないとしても、委員会は、その指針を分析法学に加えるはずであり、カジノが関わっている場合に公益性審査が何を求めるのかを我々が理解するのに役立つはずだ。