IAGは和歌山県がどう地元の「カジノ反対派」の関心事に応えているかを紹介する。
日本にIR(統合型リゾート施設)が整備されると決ま ってから、幾度となく論争を巻き起こしているのが、IRに含まれる「カジノ」の存在である。
いま日本全国でIR誘致に反対する様々な団体のほぼ全てが「カジノ反対」をメインイシューにしていることは間違いないであろう。反対派は、依存症や治安悪化に対する懸念を掲げ反対運動を展開している。
もちろん中には政治的な意図により、国策であるIR整備計画に反対をしている組織や団体も一定数存在しているであろう。しかしながら、反対派が自治体や政府に提起する質問に対し、その返答がいかなるものかを知ることは決して無意味ではなく有益である。
今回、和歌山での事例を取り上げてみる。現在、和歌山ではカナダに本社があるIR投資会社「クレアベスト・グループ」と、マカオなどでカジノ関連事業を展開する「サンシティ・グループ」の2者が事業者公募に応募している。

和歌山では5月、「ストップ!カジノ 和歌山の会」という反対派市民団体が県に対して送った公開質問状に対し県側が返答をし、同会はその質問と回答を公開した。その一部を見てみよう。
以下、質問(要約)と、県の回答。
質問:和歌山では高野山や熊野古道など歴史と自然を主体にしたものが外国人観光客の興味を引き、増加した。これと全く逆の位置にあるのがカジノ。『カジノのある街』と発信されることによるイメージダウンにならないか?
回答:IRの構成施設となる送客施設には、外国人観光客が求める豊かな自然や風景、固有の歴史、文化、伝統、食といった周辺観光の魅力や旅行者に必要な情報を、VR等の最先端技術を活用、複数の外国語で発信するなど、利用者に必要なサ ービスをワンストップで実施する機能がある。
これにより観光地への誘客にも繋がる。カジノを含むIRは誘客を阻害するものではないと考える。
質問:海外でもカジノは反社会勢力が関与し犯罪の温床となってきたが、選定する事業者が反社会勢力と関係が無いか、調査できるのか?
回答:県では、IR事業者の役員予定者や株主が暴力団員か否か県公安委員会への照会等、カジノ事業免許取得に欠格事由が無いか調査を実施。また、国においても必要に応じてあらゆる関係者( 子会社、2次・3次・それ以上の繋がりを含む)に対して、どこまでも徹底的な背面調査を行うとしている。

質問:基本構想では年間1,401億円の売上、カジノ入場者の68%は日本人。近隣の経済力が落ち込まないか?
回答:前提の売上は世界中からもたらされるもの。適切な国の監視、管理下で運営される健全なカジノ事業の収益により、公益の実現を目指す。IRは非常に大きな経済波及効果や雇用創出効果が見込まれ、これをもって和歌山、関西の持続的な成長に繋げていきたい。県の試算では、カジノ入場者の70%は日本人だが、売上の70%は外国人からと試算している。
質問:IR事業の契約期間は40年。期間終了時に県が事業者から土地を買い戻すのか?
回答:期間終了に伴う土地の取り扱いについては、今後事業者との協議により実施協定において定める。
質問:事業者の関係者が反社会勢力と関係していたり、政治家に賄賂を贈り逮捕された場合、県はどのような対応をとれるのか。また、契約破棄の場合、県が事業者に損失補填させられることはないか?
回答:そのような場合、県は事業者との契約解除を申し出ることが可能。なお、いわゆる事業者の帰責理由による契約解除について、県が事業者に損失補填させられることはない。
同会は、記者会見を開き「回答には様々な問題点がある」として「後日再質問することを検討している」と述べている。