マカオのゲーミング事業者たちが、持続可能な営業に戻るための努力の中で新型コロナウイルスによる入境制限の緩和の可能性をしきりに期待する一方で、おそらく長期投資家たちの頭には、より現実味を帯びてきた問題として、全てが2022年に期限切れを迎えるゲーミングライセンスの近い将来の再入札プロセスがあるだろう。
マカオの事業者たちは、ライセンスの取り消しまたは何か他のブラックスワン的なイベント(めったに起こらないが壊滅的な影響を与える事象)に関して心配し過ぎる必要はないかもしれないが、昨年の香港でのデモ活動、米中貿易戦争、そして現在も続く新型コロナウイルスの世界的流行によって、彼らのビジネスはすでに大きな課題と重大な価値の破壊を経験してきた。彼らが今最も望んでいないのは、すでに窮地に陥った会社へのこれ以上の必要のない課題だ。
マカオ政府の最近の発言を考えると、さらに20年間のライセンスが供与される可能性は低い一方で、シンガポールおよび日本政府が下した決定から、マカオの2022年以降の営業情勢がどのようなものになるのか、垣間見える可能性がある。
現在の複占カジノライセンスをさらに10年間延長するというシンガポール政府の最近の決定は、マリーナベイ・サンズとリゾートワールド・セントーサの両施設が合計で66億米ドル(約7,046億円)の投資を行い、主にゲーミング以外の要素で構成される施設の拡張を行うことを求めている。シンガポール政府は、既存の2社のライセンス保有者に対して今後10年間の競争を制限すると約束することで、巨額の出資を引き出すことに成功した。複占状態を維持することが交渉の中で極めて重要な要素となった。
同様に、日本政府はカジノゲーミング産業を開始するプロセスの途中段階にあり、現在統合型リゾート(IR)開発のための提案を求めているが、そのライセンス期間はシンガポールの10年よりもさらに短い。 日本の極めて短い3年間というカジノライセンス期間、そして3年ごとの更新というものはアジアの市場にとっては前例がない。政府はまた、初回10年間(その後5年更新)という認定区域整備計画の継続的な認定も求めている。
収益の大半を生み出すジノライセンスが極めて短い初回3年という期間であることと併せて、この2重のライセンス構造は一方的であり、全く資金調達できるようなものではないとして多くの批判を受けている。それでもアジアの大手事業者であるギャラクシーエンターテインメントグループ、ゲンティン・シンガポール、メルコリゾーツ&エンターテインメントそしてウィン・リゾーツといった多くの企業全社が日本で何十億ドルもの投資を行う機会を得ようと熱心に競っている。
これら企業の日本市場への関心が継続していることを考えると、2022年に至るまでの間、マカオ政府が既存のゲーミング事業者たちとの間でより有利に話を進めるのはもっともだ。しかし、彼らは良識的であり、すでにシンガポールで合意されているものからあまりにかけ離れすぎないようにするだろう。
例えば、複占構造にもかかわらず、シンガポールは大きな現地需要を持つ確立された市場だ。また海外から多くの渡航客を惹き付ける世界レベルの都市でもある。一方で、日本は多くの不明点がある、実績のない法域だ。その市場は、間違いなく海外の中国人旅行客を多く得意客に持つことが求められるだろう。これは現在の渡航制限と入国手続きを考えると疑問符がつく。
シンガポールはまた地元の銀行に対して、IR資金調達の支援に参加するよう強く要請しており、それは日本ではまだ目にしたことがない。従って、カジノ事業者たちが日本での投資に大きなコミットメントをしていたとしても、それらは全て形式的なものであり、投資家、貸し手となる銀行または規制機関によってまだ吟味されていない。
ラスベガス・サンズの最近の日本撤退は、マカオが日本の枠組みをモデルとして使用すべきではないという小さなサインだ。
もしマカオ政府が次世代のライセンスを20年以下に制限する場合、彼らは次の10年のゲーミング運営を熟考する中で、日本の発生期の枠組みよりもむしろシンガポールのライセンス構造を用いるべきだ。
シンガポールは、そのライセンス保有者から施設拡張という形で巨額の資本貢献をなおも引き出しながら、比較的短いライセンス体制を保持するという上手いバランスを取ることに成功している。マカオ政府が同様の成功を求めるなら、シンガポールモデルからのガイドラインの方を選び、関係者全員に目に言える利益を提供する商業構造を採用すべきだ。