ザ・イノベーション・グループが、アジアゲーミング業界の回復のタイミングとスピードに影響を及ぼすいくつかの主要因子を詳しく解説する。
ザ・イノベーション・グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界のゲーミング業界に与える影響を注意深く観察し、潜在的な回復パターンを調査してきた。どのような結果になるかは様々であり、新型コロナウイルスの封じ込めの程度および期間に関する疫学的見方は多数あるものの、地方市場特有の前提と、顧客心理に関する新たなデータを考慮に入れたうえで、市場回復の基本となる見通しを知ることは、正しいタイミングで正しい決断を下すのに役立つ。
米地方市場から開始し、我々は状況を追跡し、特定の場所および国際市場に向けて回復ガイダンスを提供できるまでになった。加えて、新型コロナウイルスをきっかけに、別でオンラインゲーミングのトレンドも追いかけてきた。そのツールを開発する道のりの中で、我々は戦略的な営業上の、または資本支出上の決定を下す際に重要な鍵となる需要、供給およびその他の因子を特定した。
需要に関する考慮要素
雇用と収入:人々は、仕事を持ち、消費するためのお金を持っているのか(特に裁量的支出のための)?新型コロナウイルスのような規模の先例はないものの、この因子は2008から2009年に起こった世界金融危機からの回復トレンドをベースに、ある程度数値化できる。アジアゲーミングの場合、アジアの主要供給市場のほとんどが、アメリカほどの感染の広がりは経験していないものの、世界的な景気後退の影響が今後数四半期にわたって見られる可能性が高く、可処分所得と裁量的支出に影響が出てくるだろう。
消費者心理:消費者は、たとえその財力を持っていたとしても支出に対してより慎重になるのか? この因子は、消費者信頼感の指標を通じてある程度は定量化できるものの、より主観的なものだ。
安全性に対する顧客の見方:かつてのゲーマーたちは、カジノリゾートのような公共の場所を避け続けるのか?そしてそれはどれくらいの期間?繰り返しになるが、新型コロナウイルスに匹敵するような最近の先例はない。しかし9.11後の航空機乗客数傾向をある程度参考にはできる。加えて、短い期間(アジアでは1月下旬と2月初旬、米国では3月の最初の2週間)ではあるが、業界が営業を停止する直前のゲーミング行動に関するインサイトを与えてくれる週次報告もあった。
供給の考慮要素
社会的距離確保と座席定員の制限:新型コロナウイルスの完全な封じ込め前に、カジノはゲーミングの座席数を制限する社会的距離確保および座席密度抑制措置を導入する可能性が高い。これは、収容人数の制限につながるだろう、特に大規模カジノ市場では。従って、我々はゲーミングフロアでの距離の確保と密度の管理は、デマンドレスポンスに加えて、収容人数の制限につながると考えている。
しかしながら、間隔をあけるという方針の効果がどこでも見られるわけではないと言っておく。これまで、ピーク時にスロットマシン3台ごとに1台が埋まるようなカジノでは、ピーク時に全てのマシンが埋まるカジノよりも、実質供給上限に対する感受性は低くなるだろう。
新規開発・維持の設備投資:我々は、金融市場の信用収縮の潜在的影響が、アジアのゲーミング市場の未開発地開発または施設拡張計画を抑制すると見ている。さらに、活動していない施設の維持費による影響の可能性によって、たとえ基本的なプレイレべルを減らさずとも、プレイヤーのお気に入り施設を変えてしまう可能性がある。

閉鎖の可能性:新型コロナウイルスが少数のカジノの永久閉鎖に繋がるかもしれないと認識している。これは、現在のまたは新しい所有者の下でもそもそも再開を予定していない人気のない場所での流動性の低さが原因になり得る。しかしながら、供給削減は通常、失われた売上が残りの施設で吸収される可能性がより高い市場で起こるという前提によって、これは将来的な業績を幾分中和させる効果を持つはずだ。
アジア太平洋地域特有の考慮要素
この地方で最も人口の多い国々で禁止されていることや制限が行われていることを利用しながら、アジア太平洋全域のカジノゲーミングは伝統的に大部分を海外からの顧客に依存してきた。故に、需要と供給の考慮要素に加えて、地域内での海外渡航に関する因子もまた、ゲーミングの業績に大きな影響を与え得る。
2月にアジアの一部市場で我々が見たものは、ゲーミング予算の多さ、旅行者数の少なさ、そしてより柔軟な日程の調整などの要因によって、より強力な回復はVIPセグメントによってけん引される可能性が高いということを示していた。それにもかかわらず、新たな感染流行の潜在的な可能性、特に新型ウイルスの「海外からの持ち込み」例、そして関連する予防措置および世間の不安が回復プロセスを妨げる、またはスローダウンさせる可能性がある。
(隔離義務などの)入境/入国要件:マカオでのカジノの再開は早急なカムバックとはならなかったものの、3月の最初の数週間は、高いホールドによって、VIP部門がマスよりも好調だった。しかしながら、3月後半から現在まで、海外からの新型ウイルスの持ち込みによる感染例が増加したことで、マカオの入境管理は厳しくなり、そしてお隣の広東省ではマカオから戻った旅客は強制隔離が敷かれたことが、GGRの前年比での減少を後押しする結果となってしまった。
渡航・ビザ制限:同じ方法で、外国人旅客への依存というのは、パンデミックの間のアジアゲーミングへの渡航およびビザ制限が大きな影響を持つことを意味している。マカオ(そしてその他多くのアジアゲーミング法域も同様)が、当面の間、多数の国からの渡航を禁止している一方で、業界の専門家はこの制限が今後数週間で徐々に緩和され始め、中国本土の個人訪問スキーム(IVS)プログラムが近い将来再開される可能性がある。そしてさらに良いことに、その範囲が拡大され新たな供給都市も対象になると見ていることは注目に値する。
輸送能力と物流:供給市場とゲーミング地とのパイプライン。経済が徐々に再開されるにつれて、この地域の航空便、バスルートなども次々と復活することが予想される。しかしながら、パンデミック後の時代の新たな座席密度管理の対策を考えると、輸送能力がどれくらいのスピードで回復するのかはまだ分からない。
どれ程の速さでこの苦境が緩和され、ビジネスの量がいつパンデミック前の水準まで戻るか未だに分からない中、アジア太平洋地域の事業者たちは、大きく変化した事業環境を構成するこれら主要ファクター、そしてその他の様々な状況に対応していく必要があるだろう。