新型コロナ禍の後、世界のIR事業者たちの心を確実に繋ぎとめておくために、日本が行うべき日程調整の可能性について、グローバル・マーケット・アドバイザーズのブレンダン・D・バスマンが考察する。
新型コロナウイルス感染症の大流行によって世界は急速に変化、そして進化を続けている。 新型コロナがゲーミング業界に目に見える形で打撃を与え始めたのは、マカオのカジノが営業を停止した2月に遡る。その影響は、まさにこの感染症がそうであるように、今や業界全体に広がり、カンボジアからアメリカまで、そしてフィリピンからヨーロッパまで、オンラインカジノもランドベースカジノも、ゲーミングのほぼ全ての領域を覆いつくしている。業界が、いつ、どのように再開できるかという課題に直面し続ける一方で、事業者たちは、まだ存在するかもしれない将来の開発の可能性も見ており、何よりもまずその目は日本に向けられている。
日本は、新型コロナウイルスが全国に広がる中、ここ数カ月間独自の課題に直面してきた。議論を呼んだ横浜港に停泊していたダイアモンド・プリンセス号、2021年に延期されたオリンピック、そして最近安倍首相が特定の都道府県に発出した緊急事態宣言など、ここ数カ月メディアの見出しを独占してきた様々な問題にも関わらず、日本は統合型リゾートの手続きをどう前に進めるかを問い続けている。
この記事の執筆時点で、日本政府はその計画を予定通り進め続けており、申請受付は2021年1月-7月に行われることになっている。業界が史上最大の問題に直面する中でさえも、都道府県はこの日本政府の期限に間に合わせようと前進を続けており、各地が手続きの詳細を発表している。
その手続きが徐々に明らかになるにつれて、答えが出るであろう重要な疑問の一つが、彼らが世界中で自社施設を開け続けるために資金を消費しているという事実を考えると事業者たちがどれくらい新市場に関心があるのかというものだ。現在の状況が、彼らの全体的な流動性とバランスシートに打撃を与えており、入札の可能性がある候補者それぞれのプロジェクトへのコミット力に影響を及ぼしている。日本政府への申請提出を計画している全ての都道府県は、これらの組織の財政面での適正、そして100億米ドル以上の投資になる可能性もある計画への長期的な資金捻出能力を調査することになる。
このようなこれまでに経験したことがないような不確実な時代に、一つ確実なことというのは、事業者がその事業を運転可能な状態に維持するため借り入れをし続けるということだ。コンセッシ ョン保有全社が日本への関心を示しているマカオのような一部の市場では、「人材指数」が他の市場ほど変動的でないために、運転へのコントロール度合いが低い。つまりは、アメリカなどの他市場の企業の一部が従業員を一時解雇している一方で、この大規模休業中に従業員への給与支払いを強い決意でもって続けている企業もある。
これら事業者は、市場の需要に応えるために慎重な方法で事業を再生・復活させようとする中での課題にも直面する。日本が自国市場に欲しいと思う事業者のタイプを選ぶ助けとなるインサイトをさらに与えてくれるのは、この間に行うバランスシートと事業運営の評価しかない。
日本は今なお次世代統合型リゾートの巨大なチャンスではあるが、日本がそれを築いたとして、事業者はやって来るのか?日本が市場の全潜在能力を発揮させることができるかどうかを決定づけ得る因子がいくつかあり、それらによって発行される3つのライセンスの1つに十分な数の入札業者が何十億ドルもの投資を意欲的に行うことになるだろう。
この嵐に耐えるために大手事業者の多くがバランスシートを調整し続ける一方で、長く続くこの状況によって、その同じ事業者たちが以前に持っていた関心が、彼らが今ある資産を持続可能にしようと苦戦する中で試される可能性がある。これは、日本でのライセンス獲得競争の放棄につながるかもしれない。中には20年間も活動を続けてきた企業もある。
このパンデミックの打撃を受けた他の大国同様、日本は雇用創出を促進させる経済開発計画への大規模投資を模索するだろう。そして統合型リゾートは、観光商品を多様化すると同時に、そのギャップを埋める助けとなる。しかしながら、日本はこれら大規模開発の理想的なパートナーとなる企業に気を配る必要がある。日本政府がスケジュールを6カ月から1年遅らせることは悪いことではない。これらの主要な事業者がほんの数カ月前に保持していた足場を取り戻すことを可能にする。
基本方針と統合型リゾートの枠組みを仕上げることが最優先であるべきだ。オリンピックでしたように、スケジュールを先送りにすることによって、日本のIRにとっては、長期的な実現の可能性を高めることになる。ゲーミング業界ではめったにやって来ない機会だ。きちんと適切に築いた方がいい。そうすれば適切な事業者がその市場にやってきて、IRにおける次のスタンダードを打ち立てるという日本のゴールを達成してくれるだろう。