私は32歳の誕生日を北京で迎えた。当時、北京語言大学の学生だった。誕生日のディナーパーティが半分を過ぎたころ、レストランのオーナーが、キャスター付きの台に乗ったテレビを部屋の真ん中まで移動させた。そしてその瞬間ディナーを共にしていた全員が沈黙した。ニュースは標準中国語だったが、私は、ニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワーから火があがり、煙が噴き出していることをすぐに理解した。
2001年9月11日、その日世界は変わった。我々の近代文明は2つに分かれてしまい、9・11前と9・11後となったのだ。
はっきり言って、我々がたった今生き抜いている新型コロナウイルス(COVID-19)によるこの危機は、まさにそれと同じ決定的な出来事だ。「COVID前」の世界と「COVID後」の世界ということになる。
アジアのゲーミング、ホスピタリティそして観光業界にとって、これは特にそうだと言える。世界経済のほぼ全ての領域への打撃が壊滅的である一方で、我々の業界が苦しんだ、そして今後も苦しみ続けるダメージは特に残酷なものとなっている。
フィリピン、シンガポール、そして韓国の統合型リゾートは営業停止期間の延長に苦しみ、マカオのIRも同じようになるかもしれない。土曜午後に、ギャラクシー・マカオのマスゲーミングフロアをくまなく歩いてみた。そこにいた人数はちょうど20人。テーブルに13人とスロットに7人だ。すごく悲しい光景だった。
中には、これは乗り切ることのできる単なる恐ろしい期間だと考える人がいる。最終的に「普通の状態に戻った」時、物事は前と同じ状態に戻り、この悪夢をすぐに忘れることができると。
そう考える人たちは間違っている。
最終的には普通の状態に戻るだろう。しかしそれはCOVID前の普通の状態ではない。新しい「普通」であり、COVID後の普通だ。そしてCOVID後の普通の多くの側面がCOVID前の普通と同じ、または似ている一方で、重大で重要な違いというものが出てくる。社会は変わるだろう。優先順位が変わるだろう。行動や好みが変わるだろう。
これらの変化が勝者と敗者を作り出すことになる。勝者というのは、調べ、学び、適応し、COVID後の消費者行動に対応したサービスを生み出す人たち。敗者というのは、断固として妥協せず、自分たちの惑星と衝突するコースの上を小惑星が通過するのを見つめながら、最後の最後で奇跡的に逸れるのを祈っている、時代遅れの恐竜たち。
だから、今後数週間、数カ月間、私はInside Asian Gamingで、この「COVID後」シリーズを執筆(タイピング?)し、世界の専門家たちが言う、迫りくるかもしれない変化を分析し、そういった変化が我々全員にどう影響する可能性があるかを推測していく。
読者の皆さんにとって、それが読んでいて楽しく、参考になり、思考を刺激するものであることを願う。