真実の瞬間がついに訪れる。時計の針が2019年から2020年へと移動した時、我々は、ほぼ全ての業界専門家が、今後数十年間の日本のIR業界の形を決める最も重要な年になると考えている年に足を踏み入れた。日本市場は、現在我々業界にとって全世界で最もホットな話題であり、2020年は2つの最も重要な疑問、どの事業者がどの候補地と手を組むのか、そしてどの候補地が最初の3つの日本版統合型リゾートを誘致するのか、そのおおよその答えが出ることになる。
この2部構成のシリーズでは、Inside Asian GamingのCEOであるアンドリュー・W・スコットが候補地および候補事業者を深く掘り下げていく。
第1部では、アンドリューが日本の端から端まで広がる12の候補地を考察する。これを書いている時点では、この中の8つの候補地が、積極的にIR誘致を目指すことを正式表明している。残り4つの候補地は、その意志をまだ正式発表していないものの、可能性のある候補地だと広く考えられている、または正式に関心を表明し、少なくとも今のところは撤退したかのどちらかとなる。アンドリューは、IR誘致を勝ち取る可能性が最も高い候補地から、最も低い場所までを自身の見解でランク付けし、それぞれの利点と欠点について解説する。
3月号に掲載される第2部では、日本のIRレースへの参戦を表明しているおよそ20の事業者について考察する。ここでも、自身の見解で最もライセンス獲得の可能性が高い候補者から最も低い候補者までをランク付けしていく。それぞれの強み、弱みそしてリーダーシップへの意見を述べ、そして日本でのIRプロセスにおけるこれまでの戦略を分析する。
過去20年間、日本版IRの疑問に関して行ったり来たりする様子を見ることは、単純に興味をそそられるものだった。
我々は2000年代から2010年代を通じて、何度もフライングを目にした。それをどう見るかによって、日本人は細かい点を何年にもわたって計画、検討そして議論するプロか、または見送りや先延ばしのプロかのどちらかであり、常に次の選挙かその他の言い訳を見つけて、「あともう一度だけ」決断を先延ばしにしているのだ。

しかし日本の安倍晋三首相率いる自民党は、断固として来る年も来る年もその仕事をやり続け、ついに2016年12月にIR推進法、そして2018年7月にIR実施法が成立した。ゆっくり、じっくりと仕事を進める日本の政治と官僚制は、厳然とゴールラインまでその道を進んでいる。
本当の意味での大きな決断である、IRはどこになるのか、そして誰がそれを運営するのかについてはこれ以上先送りにしたり、放置したりすることはできない。日本政府は、現在はカジノ管理委員会という形をとっている国の規制当局をついに今年の1月7日に発足させることを決めた。そして11月には、国土交通省が、2021年1月4日から7月30日までを、地方自治体がその時点でパートナーを組む民間セクターのIR事業者と協力して、国の政府にIR整備計画の申請を提出する期間として提案した。それら申請の結果によって、日本の1巡目となる統合型リゾートの3カ所の開発地、そして3者の事業者が決まる。もしそれらのリゾートが成功と見なされれば、将来何年も先のことではあるが、2巡目のIRライセンスが発行される用意がある。
そのことからも、2020年は、候補事業者と日本の開発候補地の間のこの長い恋愛ゲームが山場を迎える年になる。この恋愛ゲームの「男子」は候補事業者にあたり、そのフロアにいる女子全員と踊ろうとする者もいれば、その子が拒否しない限り、そして拒否するまではたった1人に照準を定める者もいる。もしくは女子が、全男子を拒否する場合もある。このゲームの「女子」は、候補地(都市の場合もあれば、都道府県の場合もある)にあたり、その女子が要求と条件を明かしていくにつれて、どれくらい魅力的か、または魅力的になるかによって、押したり引いたりする男子グループにそれぞれが口説かれている。

初期の関心は熱がなく
この恋愛ゲームにおける「女子」、候補地から始めよう。開始点として、候補地にはゲームに参戦するための政治的意志が必要だ。歴史的にこれは簡単にやってくるものではなかった。この理由は、日本でのギャンブルに対する一般国民の強い否定的態度だ。
主にパチンコという形で行われるキャンブルは、日本社会に広く普及しており、収益は年間何兆円にもなる。国内にはおよそ1万店のパチンコ店がある。それにも関わらず、またはそのせいで、一般的なコンセプトとしてのギャンブルは日本社会で激しく評判が悪い。真っ先に頭に浮かぶイメージというのは、怪しげで、騒がしくてタバコの煙が充満したパチンコ店で、自分の娘にはデートしてもらいたくないような男たちが集まり、在日韓国人一族、しかも通常は、北朝鮮系の子孫たちが経営しているというものだ!ゲーミング以外のサービスはほぼ皆無で、責任あるギャンブルのための対策には全く注意が払われていない。ギャンブラーたちは中毒者として見られている。あるいはもっと深刻なのは、映画の中でかなり頻繁に描かれているように、ギャンブルは地下犯罪組織とつながっている。人々は分からないものを恐れる。だから一般国民はIRを拒否する。IRが何であるかを本当の意味で理解はしていないが、ギャンブルが関係していること、そして「ギャンブルは悪い」ことは知っている。
日本の政府や地方自治体は、何千億円をかけた現代のIRが全く違うものであることを知っている。彼らは日本版IRが特に違うこと、床面積の97%がゲーミング以外の目的に使われ、厳しい中毒対策が講じられ、そして巨大な資本投資が、素晴らしい飲食、娯楽、ホテル、MICE、建築そして文化的な一連のサービスに使われることを知っている。そして、新しい時代に入る中で日本経済と日本社会を再活性化させる可能性があると共に、膨大な経済的・社会的利益があることも忘れてはならない。
日本の政府・自治体は、有権者に対してこれらのことをきちんと説明できていない。大半の日本人が、自分たちの土地に嵐を巻き起こすIR革命に関して何も知らずにのほほんとしている。全般的に人 々がIR導入に反対する中で、都市や都道府県にとって手を挙げることは政治的に不評な状態がつづいており、特に市長と、その都道府県知事に同時に手を挙げさせることは非常に難しくなっている。
大阪は日本で、何年間もオープンかつ一貫してIRの機会を受け入れてきた唯一の大都市で、昨年前半に大阪市長と大阪府知事の職を交換し、継続してタッグを組む吉村洋文氏と松井一郎氏の両氏が大阪IRを支持している。
開発地を決める最終決戦が近づく中、さらに多くの候補地が真剣かつ有望な候補としてどこからともなく現れてきている。
「女子」 の紹介 - 候補地
9月の記者会見で、日本の赤羽一嘉国交相が、「確実に」IRを検討している8つの候補地の名を挙げた。千葉市、北海道、長崎、名古屋市、大阪、東京、和歌山、そして横浜市。ここではそのリストに、北九州市(福岡県)、牧之原市(静岡県)、沖縄、そして常滑市(愛知県)を加えている。それぞれの詳細は以下の通り。この記事を書いている時点で、我々の見解で成功の可能性が高いおおよその順にクラス分けして紹介する。
ティア1:積極的に誘致を目指す大都市
1.大阪(市及び府)
- 市の人口:300万人
- 都道府県の人口:900万人
- 関西地方の人口:2,300万人
- 参入を目指す周知の事業者:ギャラクシー・エンターテインメント・グループ、ゲンティン・シンガポール、MGMリゾーツ
- 日本全土にある全候補地の中でトップを走る
すでに述べたように、大阪は日本で、オープンかつ一貫してIRの機会を受け入れてきた唯一の大都市であり、府と市の政府の間で確固とした合意と協力関係がある。当初、世論は否定的だったが、過去数年間に候補事業者、特にMGMや、比較的程度は低いがギャラクシーなどが世論に変化をもたらすのに役立つ(しかし高くつく)仕事を行なってきた。
大阪府と大阪市は、昨年、実施方針案を発表し、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の松井一郎市長が11月22日に記者会見を開いた。

横浜が誘致レースに参戦し、サンズ、ウィンそしてメルコなどの事業者が大阪から離れ、そしてシーザーズが米国でのエルドラド・リゾートとの合併によって日本のレースから完全撤退する中、気が付くと事業構想公募(Request For Concept:RFC)の段階まで残っていたのはギャラクシー、ゲンティン・シンガポール、そしてMGMのたった3社になっていた。
MGMは大阪と共に歩んだ長い歴史があり、12カ月前に「大阪フ ァースト」の方針を打ち出し、長年、広範にわたるコミュニティエンゲージメント(地域との関わり)の取り組みに何億円もの額を投資してきた。同社は当然ながら、大阪でトップを走っていると自負しているが、盤石ということはない。ギャラクシーとゲンティン・シンガポールの両社が真剣にチャレンジしており、MGMに対して大きなアドバンテージを主張できる位置にいる(この号の別の大阪の記事を参照)。

12月に始まった大阪の提案依頼(Request For Proposal:RFP)は、今年の4月まで続く予定で、最終的な事業者の決定は6月に予定されている。
府と市は、大阪で行われる2025年国際博覧会(大阪・関西万博)に間に合うようIRを開業できることを願っているが、事業者は、建設期間が短すぎること、そして万博の建設と重なることへの懸念を示している。
日本政府が2021年1月からのみIR認定申請を受け付けること、そして2021年中のその後に申請に関する決断を下すという状況下において、建設に必要だと思われる年数を考えると、IRのドアを2025年までに開けるのは厳しそうだ。
2.横浜市(神奈川県)
- 市の人口:400万人
- 大東京圏の人口:3,800万人
- 参入を目指す周知の事業者:ギャラクシー・エンターテインメント・グループ、ゲンティン・シンガポール、ラスベガス・サンズ、メルコリゾーツ&エンターテインメント、セガサミー・ホールディングス、ウィン・リゾーツ
- 大きな男子たちが欲しがっている
神奈川県は、この問題に関する何年もの沈黙を破り、横浜の林文子市長が、2019年8月22日に記者たちの前で「横浜の将来への危機感から…成長、発展を続けていくためには、IRを実現する必要があるとの結論に達した」と発言したことで、正式に誘致レースに参戦することになった。

市は、横浜IRの経済波及効果は最大で年間1兆円にのぼると主張している。IRの立地には横浜の海に面した山下ふ頭が適しているとの判断に至った。
東京がIRレースに正式参戦していない中で、世界最大手のIR事業者たちにとって、横浜は許容範囲内の単に東京に代わる場所以上の意味合いを持っている。4,000万人近い人口を持つ大東京圏の一部で、東京駅から1時間以内にアクセスできる横浜は、誘致を正式表明したことで即座に大阪のお株を奪う形となった。
事業を行うことを目指すどの国でも、最も人口の大きな中心地に照準を定めることで有名なラスベガス・サンズは「東京ー横浜」を希望の立地として大々的に宣伝し始めており、かつて大阪に持っていた関心はすでに投げ捨てた。この会社だけではなかった。ウィンは「横浜フォーカス」を発表し、メルコは「横浜ファースト」方針を打ち出し、両社がここ2カ月の間に横浜にある提案中のIR立地からおよそ2kmの場所に事務所を開いた。
横浜市は時間を無駄にすることなく、9月にはIR関連費用の補正予算を通過させ、10月にはRFC手続きを開始、そして12月には提案提出を締め切った。市の担当者は、2020年中に実施方針案をまとめ、事業者選定プロセスを開始し、2021年までに事業者を選定したいと述べている。
11月、横浜市は7者がRFCプロセスに参加登録したことを発表した。参加登録した事業者の名前は公表されていないものの、ギャラクシー、ゲンティン、メルコ、サンズ、セガサミー、ウィンが横浜を魅力的な候補地として挙げていることがすでに周知の事実となっている。

横浜の大きな問題が、IRへの根強い反対だ。この反対意見こそが、長い間林市長にどっちつかずの態度を取らせた理由である可能性が高い。市民は、カジノ周辺エリアが危なくなること、そしてキ ャンブル依存症が増加する可能性があることを懸念したままでいる。林市長はこれらの懸念に対して、「私自身も大変懸念した。最高水準の厳しい規制であれば大丈夫だと確信した。(中略)市民に対して丁寧にきちっと説明を続ければ、理解いただけるだろう」と述べた。
林市長は、藤木幸夫横浜港運協会会長の怒りも買ったようだ。「ハマのドン」として知られる同氏は、山下ふ頭の一部のエリアを管理し、強いIR反対の立場を取ってきており、「立ち退きには応じない」と明言している。
9月、林市長は、懐疑的な一般市民にIRのメリットを説き、不安を軽減させる狙いで市内の全18区に自ら出向き、説明する計画を発表した。12月4日、市長は、山下ふ頭にある提案中のIR用地をまさに有する中区で開かれた初の住民説明会に参加した。反対派のグループは会場前で声を上げて抗議し、その同日にかながわ市民オンブズマンはRFCプロセスに参加登録している事業者名を含む、市が保有する統合型リゾートに関する情報の開示請求を横浜地裁に提出した。代表幹事の大川隆司弁護士は、事業者名が塗りつぶされた状態で公開されたことは、手続きの公平性・透明性を確保するとした国会決議に反すると述べた。
ティア2:IR誘致を積極的に目指す小規模都市
3.佐世保市(長崎県)
- 市の人口:25万人
- 都道府県の人口:130万人
- 九州の人口:1,300万人
- 参入を目指す周知の事業者:カジノオーストリア、ゲット・ナイス・ホールディングス、ナガコープ、ピアモント・グローバル
- 北海道が撤退した様子であることを考えると、ほぼ間違いなく地方では最も可能性の高い候補地になる
6月、九州地方知事会が最西端の日本本島である九州で単一のIR候補地として長崎に集中する意志を正式に表明した。地方知事会は九州本島の7県全てと山口県及び沖縄県を包含する。

9月、長崎県は、IR誘致に向けた基本構想案を発表し、予想建設投資額を約3,200億円~5,500億円の間に設定した。提案されている長崎のIR用地は、長い間合意されてきた場所で、佐世保市にあるオランダの街並みを再現したハウステンボスが現在所有する31ヘクタールの土地区画となっている。
長崎は、2019年10月2日から11月22日までRFCプロセスを実施した。市は、3月までに基本案を仕上げ、次の秋までに事業者を選定、そして2024年までのIR開業を目指している。
ナガコープ、カジノオーストリア、香港上場のゲット・ナイス・ホールディングス、南アフリカのピアモント・グローバル、そして少数の日本企業が長崎への関心を表明している。ハウステンボスは、事業者としての参加を目指さないことを正式表明している。
4.和歌山(市及び県)
- 市の人口:36万人
- 都道府県の人口:94万人
- 関西地方の人口:2,300万人
- 参入を目指す周知の事業者:サンシティグループ、ブルームベリー・リゾーツ、バリエール
- 長年、仁坂知事の積極的な支持を受けている
過去13年間和歌山知事を務める仁坂吉伸氏は、日本のIR産業の可能性を心から信じている。何年も前にその意志を明らかにし、和歌山IRの提唱において確固とした決意をもっている。当初、仁坂知事は外国人専用案を推奨していたが、ずっと前にその考えは捨てている。

大阪IRについては、2都市が車でたった75分の距離にあるにもかかわらず、その可能性を問題としては捉えていない。知事は、関西国際空港への近さ、関西地方の人口ベース、そしてすでに和歌山マリーナシティという合意された候補地があることなど、和歌山の数多くの強みを挙げている。また、自身の政権、そして和歌山県政の全体的な安定も強調している。IR立地は、約25年前に作られた人工島にあり、ライセンスが付与され次第すぐに建設に着手することができる。和歌山マリーナシティには、定評のあるヨットハーバーとマリンスポーツのナショナルトレーニングセンターがある。
和歌山県はこれまでに、和歌山のIR誘致が成功した場合、20.5ヘクタールの建設予定地を約77億円で買い取る合意を土地所有者と交わすところまで進んでいる。その狙いは?そうすることで、和歌山は土地を最終的なIR事業者に同額で売却することができ、事業者のために土地価格を固定し、将来の価格変動の負担から事業者を守ることができる。
12月、和歌山県は誘致を目指しているIRについて、希望通り、国の基本方針が2020年1月に最終決定されれば、春までに事業者の公募を開始し、秋ごろに事業者を選定する方針を示した。長崎同様、和歌山も2024年までのIR開業を目指している。
これまでに、バリエール、ブルームベリー・リゾーツ、サンシティグループの3社が和歌山IRへの関心を示している。
仁坂知事は自信にあふれている。2019年5月のIAGとのインタビ ューの中で、知事は「私は主観的にしか考えられないけど、あえて客観的に考えたら和歌山のIRは絶対に確実だと私は確信している。(国の)政府もそれを評価してくれるはずだと確信をしている。これは大丈夫だと思って、一生懸命やっている」と述べていた。
ティア3:現在も誘致を検討している都市
5.常滑市(愛知県)
- 常滑市の人口:5万7000人
- 名古屋市の人口:230万人
- 都道府県の人口:760万人
- 中京圏の人口:1,000万人
- 参入を目指す事業者:不明
- IRは、日本で3番目に大きな都市圏である名古屋の利用客を対象にした中部国際空港セントレアのすぐ横に作られる予定
- 土地は今すぐにでも利用可能
常滑市は中部国際空港セントレアを有し、名古屋から南に列車で45分の位置にある。セントレア空港のターゲットは名古屋だけでなく、日本の中央に位置する中部地方への世界からの主な玄関口となっている。しかしながら、2005年の開業以来、多くの航空会社が営業不振によって同空港からサービスを撤退させてきた。2017年、セントレアは、東京と大にある合計4つの空港、そして福岡、札幌、沖縄に次いで8番目に忙しい空港だった。

愛知県は、常滑の中部国際空港セントレアが建つ空港島へのIR誘致を検討している。12月10日、愛知県の大村秀章知事は、空港のすぐ横の立地という理由から、名古屋市自体よりも常滑市への誘致を優先するという姿勢を確認した。
空港のすぐ横の土地はすぐにでも利用可能な状態で、名古屋の中心にあるIR用地には開発に時間がかかる可能性があることにも注目しなければならない。

6.名古屋市(愛知県)
- 市の人口:230万人
- 都道府県の人口:760万人
- 中京圏の人口:1,000万人
- 参入を目指す事業者:不明
- 愛知県は、2020年4月までにIR誘致を目指すかどうかを決定すると述べており、その誘致先が常滑市になるのか、名古屋市になるのかどうかは今後決定される
名古屋市の河村たかし市長は、2019年1月、名古屋はIR誘致に関して「夏まで」に決定すると述べたが、そのような決定はまだ下されていない。昨年9月、河村市長の公式な立場は、名古屋は「前向きに検討している」というままだった。

昨年12月19日、愛知県の大村秀章知事が2019年12月20日から2020年3月末までを意見公募の期間とすることを発表した。知事は、愛知県が誘致を目指すかどうかの決定は4月に下すと述べている。愛知県のIR誘致が名古屋市になるのか常滑市になるのかはまだ分からないが、上述の通り、大村知事はつい最近の12月に常滑市を優先することを表明した。
ティア4:ワイルドカード
7.東京
- 23区の人口:960万人
- 大東京圏の人口:3,800万人
- 参入を目指す事業者:世界最大手のIR事業者
- 状況は不明で、2020年8月9日の東京五輪の閉幕後まではそのままである可能性が高い
4,000万人近い人が暮らす地球上で最も人口が密集した都市的地域としての地位を考えると、東京IRの可能性によって世界トップのIR事業者のいずれもがよだれを垂らすことだろう。しかしながら、過去数年間の世間一般の通念は、東京は2020年の夏のオリンピックに集中しており、忙しすぎて、IR誘致を検討できないというものだ。しかし、そのすべてが間もなく変わる可能性がある。というのも、東京都がここ数週間で内密に潜在的な事業者たちと会合を持 っている。

小池百合子都知事は、7月5日に選挙を控えており、7月後半と8月前半にはオリンピックのもろもろの問題を処理しなければならない。しかし都知事が両方を切り抜けることを仮定すると(またはできないとしても)、東京にとって、2021年前半に一緒に国の政府へと申請を提出する意欲的なパートナー事業者を見つけるには充分な時間がある。

そして、偶然にも高い地位にいる人たちと交友のあるミスター・アデルソンという紳士が、強く求めるというシナリオには全てを賭けてもいいだろう。

8.北九州市(福岡県)
- 市の人口:96万人
- 都道府県の人口:500万人
- 参入を目指す事業者:香港の事業者と少なくともあと1者
- 九州地方知事会が九州本島の単一のIR候補地として長崎
- に集中すると同意していることを考えると、可能性は低い
11月、IAGは、長年北九州市の市長を務める北橋健治市長が、「 香港の事業者」から提案を受け、「できる範囲内でしっかりと受け止めて勉強を重ねる」意向があることを報じた。IAGは、北九州市が少なくとももう一件提案を受けていることを確認している。2箇所が提案されており、そのうち可能性が高いのがJR山陽新幹線の小倉駅北口だ。自身の前向きな発言にも関わらず、北橋市長は公式には中立姿勢を維持しており、「市民や各界に様々な意見がある。誘致にニュートラルな立場は変わらないが、にぎわい作りを提案いただいている事業者とは丁寧に話をしていく」と述べた。

別の考慮すべき点が、九州地方知事会が九州本島の単一のIR候補地として長崎に集中すると同意していることだ。地方知事会は九州本島の7県全てを包含しており、その中には北九州市がある福岡県も含まれている。
9.苫小牧市(北海道)
- 市の人口:17万5,000人
- 都道府県の人口:530万人
- 参入を目指す事業者:クレアベスト・グループ、ハードロック、メルコリゾーツ&エンターテインメント、モヒガン・サン、ラッシュ・ストリート・ゲーミング、SJMホールディングス
- 鈴木知事は11月29日、事実上の撤退を表明したが、地元住民は一斉に再考を求めている
北海道の苫小牧市は、何年間もIR候補地として憶測が集中する土地になっており、IRドリームを北海道の経済的苦悩への万能薬だと考える地元の経済団体からの強い支持を受けてきた。この希望されているIR候補地の市議会が、たった1カ月前にIR誘致を進める決議を通過させたにも関わらず、北海道の鈴木直道知事は、11月29日、少なくとも近い将来における北海道IRのあらゆるチャンスを殺すような衝撃的な発表を行なった。

北海道議会への演説の中で、鈴木知事は「熟慮の結果、IR誘致に挑戦したいとの思いに至ったが、候補地は希少な動植物が生息する可能性が高く、限られた期間で環境への適切な配慮は不可能」と説明した。

鈴木知事の発表以降、再考を求める声が一斉に上がり、特に苫小牧市の岩倉博文市長は、「ただただ残念としか言いようがない。知事の判断については率直に『どうしてなのか』という思いがある」と述べた。
一斉に上がった声の中にはまた、議会メンバーや道内の経済界なども含まれている。少なくとも候補事業者の1者、ハードロック・ジ ャパンは、継続して北海道IRを目指していくと明言している。
他の候補地が、鈴木知事がその決定の理由に挙げた「環境への適切な配慮」に悩まされていないように見えること、そして北海道独自の規制が環境アセスメントのより素早い完了を可能にさせる可能性があることを考慮すると、潜在的な候補地としての北海道の終わりを聞いたわけではないのかもしれない。続報をお見逃しなく。
ティア5:検討し、却下した
10.千葉市(千葉県)
- 市の人口:100万人
- 都道府県の人口:630万人
- 大東京圏の人口:3,800万人
- 参入を目指す事業者:現時点では明らかになっておらず、横浜の候補者と類似している可能性が高い8者。
- 1月に入って撤退の決定を発表
横浜同様、千葉市も大東京圏の一部。提案されているIR立地は、東京駅から列車でたった45分の場所。12月、千葉市の熊谷俊人市長が、10月に実施した情報提供依頼(RFI)プロセスへの回答として8事業者からIR計画の提案を受け取っていることを明かした。8者すべてが、候補地に幕張新都心を挙げた。
熊谷市長は「幕張新都心エリアでのIRが十分に成立し得ることを示唆する内容」と述べた。

結局、1月初旬に熊谷市長が「これまで国の動きを見据えながら調査検討を行なってきたが、昨年の(台風)災害の影響もあり、今回のスケジュール案では、県など関係者との調整や法に定める手続きに十分な時間を取ることができないと判断した」と述べたことで、近い将来の千葉でのIRは実現しないことが分かった。
千葉市は以前、建設投資額は5,000億~7,000億円で、訪問者数は年間2千万~4千万人と予想していた。見込まれていたカジノ事業での市への納付金は年間で500億円程度だった。
11.沖繩
- 人口150万人
- 近い将来のIRへのあらゆる希望が、2018年9月の玉城氏の知事選勝利によって打ち砕かれた
何年間も沖縄でのIRの可能性に関する調査が行われたが、翁長雄志氏が2014年12月に知事に就任した後に中止された。翁長氏の在職中の早すぎる逝去の後、2018年9月に行われた知事選は、IR推進派の佐喜眞淳氏とIR反対派の玉城デニー氏の一騎打ちとなった。そして2018年9月の玉城氏の知事選勝利によって、近い将来のIRへのあらゆる希望が打ち砕かれた。

12.牧之原市(静岡県)
- 人口4万6,000人
- 都道府県の人口:360万人
- もうIR誘致を目指していない
一部の地元経済団体のサポートを受け、2019年1月にIR誘致を目指す意志を発表した後、牧之原市は8月、地元の支持の合意を達成できないと判断し、これ以上IR誘致を目指さないことを発表した。
3月号に掲載する「2020年:日本版IR決断の時」シリーズ第2部をお見逃しなく。アンドリューが日本のIRレースへの参加を表明しているおよそ20者の事業者について考察する。ここでも、自身の見解で最もライセンス獲得の可能性が高い候補者から最も低い候補者までをランク付けしていく。それぞれの強み、弱みそしてリーダーシップへの意見を述べ、そして日本でのIRプロセスにおけるこれまでの戦略を分析する。