フィリピンにとって極めて重要な新しい経済の中心地として政府に選ばれたクラークは、台頭するビジネスや観光の目的地であるだけでなく、アジアの次の主要カジノ拠点として、急速に態勢を整えている。
月曜午前11時、ルソン中心部にあるクラーク・フリーポートゾーンのまさに中心にあるクラーク国際空港の外の道路はスムーズに流れている。通りには木々が立ち並び、ちょっとしたオープンスペースが設置されているこの場所は、交通渋滞の軽さよりもむしろ、フィリピンでここよりも有名なマニラという経済中心地との大きな違いで注目を集めている。ここはマニラからは車で南に2時間の場所にある。
これら全ては偶然の産物ではない。
「ここには非常に素晴らしい環境がある。水はまだきれいで、空気も新鮮なまま。その状態を維持していきたいと思っている」こう説明するのは、パンパンガ地方の投資・観光コンサルタントのオリバー・ブタリッド氏。2018年2月に公表されたこの地域の「メガロポリス」基本計画の立役者である。
「メトロ・マニラと同じ方向へと向かうことを避けたい」パンパンガ・メガロポリス計画は、この地方が現在享受している急成長を生かしながら、「富の拡散」を確保することを狙いにした包括的かつ戦略的な計画で、結局のところ、パンパンガにある22の特定の街の一部および他で開発中の街の人口密集に関していわゆる「Do-Nothing(何もしない)シナリオ」を回避している。
「パンパンガ:メトロ・マニラのカウンターマグネット(吸引力抑制)地域」というスローガンの下、計画の実施は、主要観光地、軽工業団地、高価値製造、高価値農業そしてスマートシティテクノロジーという5つの主要な優先投資先を中心に展開し、それぞれの場所は各街が提供できる競争力の高い独自の強みによって決定される。
ブタリッド氏は、「どの街も遅れを取らせないという発想」と語る。
フィリピン中原の7つの異なる地方を管轄する行政地域であるルソン中央部は、2018年に9.5%というGDP成長率を記録した。これは国内平均の6.2%を大きく上回っているものの、ブタリッド氏は一部の地方は他よりも良い結果を出していると指摘する。

「それに関する集計データはないが、パンパンガが大変なことをやり遂げたと確信している」と付け加える。
パンパンガ州北西の州境沿いにあり、お隣のタルラック州へと縦に切り込んでいるのが、フィリピン政府が国内の次の主要経済中心地として強調するクラークである。
てが2010年以前にオープン)、クラークがフリーポートゾーンに分類されていることによる有利な税優遇制度に後押しされた。
フリーポート内で拠点を構える資格を持つ企業は、国および地方への全ての納税の代わりに、稼ぎ出した総収入から控除額を引いた額のたった5%を税として収め、固定資産税の支払いは求められない。CDCはより広範のクラーク地域への絶対的支配権を有しているために、これら企業に対しては、他の地域でありがちな多くの行政上の手続きがはるかに簡素化されている。
マナンキル氏は、「海外投資家にとってクラークを非常に魅力的にさせる特徴の1つが、政府の窓口がたった1つだというところ。全ての建設許可、建築許可、掘削許可を我々が出している。それら全てを発行するのはCDCだけである。複雑さが軽減されるし、企業対応という点での我々のガバナンスは非常に好まれている」。
そうは言っても、過去3年間にクラーク内で開発が突然急増した原因を作ったのは、ドゥテルテ政権による「Build, Build, Build(建てまくれ)」という国家を挙げてのインフラ計画がもたらしたアクセス大幅改善の約束だった。

2020年にはクラーク国際空港で計画されている4つの新旅客タ ーミナルの1つが完成する予定で、年間旅客定員数を現在の420万人という水準から1,220万人へと3倍に増加させる。4つ目がオープンする2025年には、年間定員数は1億1,000万人という大きな数に達する。
最近の傾向から考えると、大きければ大きいほど良いということになっており、2018年にフィリピンへの入国者数は12カ月前の151万人から261万人へと73%増加した。
空路によるアクセスを補完するのが、道路と鉄道のインフラ改善。最も注目すべきはクラーク-マニラ間を結ぶ150億米ドル(約1兆6,364億円)をかけた南北通勤鉄道で、そこにはクラーク国際空港への接続も含まれており、2021年から段階的に開通する。クラ ークとスービックを結ぶ2つ目の路線の建設は来年開始予定。
これを念頭に置いて、クラークではゲーミングおよびレジャー産業が独自で爆発的な成長を始めている。2019年が終わりに近づく中、クラークは6つのカジノのホームとなっている。どちらも大規模拡張の真っ只中のロイスとウィダス、今年に入ってオープンした D’ハイツ、6月に2年の時を経て再オープンしたフォーチュンゲート (元カサブランカ)、そしてミドリ クラーク ホテル アンド カジノとカジノフィリピーノミモザ。
他に2つの施設、1つはフィルインベスト・ディベロップメントによるもの、もう一つはPHリゾーツ・グループ、がすでに工事に入っており、一方で中国人違法労働者を雇用したことで2016年に当局に閉鎖されるまでクラークで最も繁栄していたカジノ、フォンタナもまた、新しい所有者の下で再開されるかもしれないという話がある。

収益の軌道はまさに右肩上がりだ。2018年、クラークのカジノのGGRは86億2,000万比ペソへと22.4%増加し、2019年には118億1,000万比ペソへとさらに37%の増加に向けて順調に進んでいる。ザ・イノベーション・グループのマイケル・ジュー氏は、クラークのカジノは2020年には130億7,000万比ペソを、2021年には146億4,000万比ペソを稼ぎ出すと言う。これは5年という短期間で100%以上増加することを意味している。
ロイス ホテルアンドカジノのカジノ総支配人、ウィリアム L. アヴ ェンダノ氏によると、そのすべてが韓国のおかげであり、クラークのナンバー1旅行客市場はこのエリアへの全訪問客のおよそ20% 、GGRに至っては70%に貢献しているという。アヴェンダノ氏はこう説明する。「フォンタナがまだ開いていた時、毎年、電話(プロキシ ー)ベッティングから平均60億から90億比ペソを生み出すことができていた。フォンタナの閉店以来、電話によるベッティングで同様の数字を得ることはないが、今は合計で同様のゲーミング粗収益を生み出しており、その大半が韓国人によるもの」11月にPAGCORが発表した数字によると、クラークは19年第3四半期に過去最高となる33億1,000万比ペソの四半期収益を記録し、前年比では55.8%のプラスとなった。クラークの至る所に韓国焼き肉店があるのも納得だ。
ウィダス・ホテル&カジノの経営企画・コンプライアンス部部長補佐のネキ・リワナグ氏は「そこがマーケット」と同意する。「クラークは、ゴルフ、カジノ、夜の娯楽といった韓国人が好むサービスの独自に組み合わせて提供している」 。
確かに、クラークのカジノ事業者たちはこのエリアに韓国人を呼び込む際にゴルフが重要な役割を果たすことを認識しており、11の世界レベルのコースがすでに営業中または開発中だ。その中にはミモザにある18ホールのコース2つ、サンバレーのコース2つ、そして閉店したフォンタナのカジノの横にある18ホールのコ ースが含まれている。
最近ウィダスが発表したニュークラークシティ近郊の450ヘクタ ールの開発には、さらに4つのゴルフコースが含まれており、他に3つのコースが45分離れたスービックに用意されている。
マナンキル氏は「韓国人にとっては、韓国に滞在してゴルフを1ラウンド予約するよりも、クラークに飛んで、1日ゴルフを楽しんで、韓国に戻る方が安いということに尽きる。フィリピンに来る方が安く、もちろん彼らが自国では入れないカジノという追加ボーナスがある」と話す。
マナンキル氏は、このことを念頭に置いて、世界レベルのビジネス及び会議施設から、高級カジノ、5つ星ホテル、豊富なゴルフコースそして大規模家族向けテーマパークを通じた本当に優れたレジ ャー及びエンターテイメントまで、クラークをこれら全てを提供する、フィリピンが誇る世界レベルのMCE中心地にするというビジョンを発展させてきた。
同様に、クラークのカジノ事業者たちはすぐ近くにマニラのエンターテインメント・シティがあると認めることを恐れていない。
D’ハイツを所有するドングァン・クラーク・コーポレーションの取締役、エドウィン D. メンドーザ氏は、「エンターテインメント・シティにはなくて、クラークにはあるものが何か分かるだろうか?」と問いかける。
「それはクイックアクセス。独自の空港を持つという点では共通しているが、あちらは空港からカジノまで20分から30分、こちらは10分以内。クラークはまるでマニラのようではあるが、渋滞がない。エンターテインメント・シティにある全ての施設はここにもある。しかし我々にないのが渋滞。
クラーク周辺を運転していると、多くの開発、つまり道路拡張工事が進んでいることにも気が付く。そこでこういう疑問が出てくるかもしれない。『渋滞がないのになぜ道を広げているのか?』
それが将来計画というもの。先見性。クラークでは、問題が生じる前にすでにソリューションを用意している。そこが違う」。