ラスベガス・サンズ(LVS)のトップ、シェルドン・アデルソン氏とクラウン・リゾーツの筆頭株主、ジェームス・パッカー氏が、大晦日にフレンチ・カリブで隣り合ってスーパーヨットを停泊したという報道が今週、世界のゲーミングゴシップネットワークを過熱させている。
クラウンがニュースサウルウェールズ州カジノライセンスを保持する適性がある見なされるかどうかに関するパトリシア・バーギン委員長の待望の報告まで1カ月を切る中で、一部のオブザーバーが行き着いた結論というのは、アデルソン氏とパッカー氏が、問題を抱えるオーストラリアの同事業者の株をサンズが購入、または取得する可能性さえもある取引について多分協議してきているだろうというものだ。
そのような興味深い取引が最終的に行われるかどうかはまだわからないが、純粋にビジネスの視点から見ると、最高の組み合わせとなる可能性がある。
確実に、双方に、そのような取引を目指すモチベーションがあるようだ。クラウンが気付けば、アデルソン氏の昔からのラスベガスのライバル、ウィン・リゾーツと、当時でおよそ100億豪ドル(約8,000億円)に相当する買収の可能性について協議していた頃から2年も経っていないことを思い出してほしい。ウィンは、話がメディアにリークされたことでその交渉を中断した。しかしクラウンのマカオの元パートナーであるメルコリゾーツ&エンターテインメントは、その機会をここぞと手に入れ、17億6,000万豪ドル(約1400億円)でパッカー氏から直接豪カジノ大手である同社の19.99%の株式を購入する取引を成立させた。
ご存じのように、注視されてからしばらく経つそのメルコの取引が、NSW、ビクトリアそして西オーストラリアでのクラウンのライセンスを危機的な状況にさせているNSW独立酒類・ゲーミング局の調査の主要な焦点の1つだった。
バーギン委員長の報告まであと数週間以上ある一方で、可能性の1つとして、一部か全てかは別にして、パッカー氏がクラウンの持株を売却するという条件が出される可能性があり、その場合、アデルソン氏のようなカジノ界の大物仲間がホワイトナイトであると可能性がある。
アデルソン氏も、業績報告中にアナリストに対してLVSが積極的にアジアでの吸収・合併の機会を注視していると話していた時、昨年4月にこのまさにうってつけの機会を、狙わずとも予想していたのかもしれない。
同氏は当時、「しかしもちろん、価格は適正であるべきだ」と話していた。アデルソン氏がその思いを最終的に叶えることはあり得るのか?
約5億7,500万米ドルでパッカー氏から第1弾としてクラウンの9.99%の株式を直接取得してから10カ月足らずの昨年4月、メルコリゾーツはその持株を米多国籍プライベートエクイティ・ヘッジファンド大手のブラックストーン・グループへとたった3億6,000万米ドルで売却した。それは当初の購入価格からは40%近い割引価格を意味している。バーギン委員長がパッカー氏に売却を急がせた場合、同様の類の取引は、アデルソン氏にとってはあまりに拒むのが惜しいだろう。
LVSの視点からは、クラウン・リゾートを気に入る理由が多々ある。オーストラリアで有名かつ、過去25年間の大部分は大変評判が良いこの会社は、LVSがマカオやシンガポールに持つ広範囲の資産と似たタイムゾーンのアジア太平洋市場において、同社がまた一つ優位に立てるようなものを提供してくれるだろう。
アジアトップのゲーミングおよびホスピタリティ幹部の多くが、オーストラリア出身であることはプラスであり、クラウン・リゾーツの元ストラテジストで、現在はLVSのコーポレートSVP兼最高カジノ責任者としてシンガポールを拠点にするアンドリュー・マクドナルド氏などがまさにそうだ。
クラウンもまた、(まさに今それを痛感している通り)非常に厳しく規制された市場にあり、LVSが日本のような厳しく管理された機会への関心を後に復活させた場合には、それはただプラスとなる。
それがブラックストーン・グループの話につながってくる。一方では、MGMリゾーツから2020年1月にMGMグランドやベラージオの不動産を購入するなど、近年カジノ投資ポートフォリオを積極的に拡大しているブラックストーンがLVSに対して先手を打とうとしているのかもしれない。しかし、また一方では、Packer & Coが建物を出ていった場合にカジノ運営役を務めるというだけでなく、故郷の米規制機関を安心させるために、オーストラリアでの完璧なパートナーとしてLVSを見ている可能性がある。
現時点では、パッカー&アデルソン物語は、単なる偶然の出会いの1つに過ぎない。 しかし、十分に大きな網を張っておいたほうがいい。遅かれ早かれ大きな獲物を捕まえることになる。