Inside Asian Gamingは日本の初規制機関であるカジノ管理委員会をより細かく見てみる。
現在日本ではIR誘致を目指す自治体が、それぞれで選定されたIR整備・運営事業 予定者とともに国へ区域整備計画を申請する準備に追われている。国への申請期限は2022年4月28日。
IRに欠かせないのが、カジノ事業だ。カジノ事業は免許制であり、その免許はカジノ管理委員会が発行する。
カジノ管理委員会は、特定複合観光施設区域整備法(以下 「IR整備法」)に基づき、内閣府の外局として置かれる行政委員会として、令和2年1月7日に設立された。同委員会は、委員長及び委員4名をもって構成される合議体である。
同委員会は、IR整備法の目的に定める「適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ事業」を実現するため、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図ることを任務としている。そのため、カジノ管理委員会には、カジノ事業者等の廉潔性やカジノ規制の遵守状況を厳格に監督し、問題が生じた場合には、事業者等の排除も含め、行政処分により問題を改善することが求められる。
このような職務を担うカジノ管理委員会は、カジノに関する規制を行う機関として、既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切との考え方に基づき、いわゆる 「三条委員会」として設立された。
三条委員会とは一般に行政委員会とよばれ、府省の大臣などからの指揮や監督を受けず、独立して権限を行使することができる合議制の機関のことである。国の行政機関の名称や機構などを定めた国家行政組織法第3条に規定されているため、一般的に三条委員会とよばれる。第3条では、府と省を内閣の行政事務を行う組織とし、その外局として、委員会と庁を置くことを規定している。
三条委員会は庁と同格の行政機関であり、高い独立性を保つために予算や人事を自ら決定し、独自に規則や告示を制定することができ、それを命令、公表する権限が与えられている。三条委員会には、公正取引委員会、国家公安委員会などがある。カジノ管理委員会はその組織理念に「IRを支えるカジノへの厳格な規制により、その健全な運営を確保し、国民の信頼に応える」と掲げており、「職務の遂行にあたっては、公正性・独立性を確保しながら、法律に基づく厳格な審査・監督を行うことにより、健全なカジノ事業の実現に努めていく」としている。
同委員会の具体的な業務としては、カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図るための行政機関として上図の5項目を司っている。
カジノ管理委員会は、委員長1名及び委員4名(内2名は非常勤)をもって構成されている。委員長は北村道夫(きたむら みちお)(69)。委員は、氏兼裕之(うじがね ひろゆき)、渡 路子(わたり みちこ)、遠藤紀子(えんどう のりこ)、樋?口建史(ひぐち たてし)の4名。(敬称略)北村氏は、仙台福岡高等検察庁検事長、福岡高検検事長などを歴任した後、2015年から2018年まで防衛監察本部監察監を務めた、法のプロフェッショナル。2020年にカジノ管理委員会の初代委員長に就任した。
氏兼氏は、名古屋や広島国税局長を経て、国立印刷局長を務めた。国立印刷局は紙幣や旅券、証券類などを印刷する独立行政法人。ちなみに、新一万円札の肖像となっている渋沢栄一氏は、1872年に現在の国立印刷局局長にあたる大蔵省紙幣寮の初代紙幣頭として、日本の近代的貨幣制度整備に尽力した人物である。
氏兼氏と同じく常任委員である渡氏は、日本精神科病院協会(DPAT)の事務局の顧問。ギャンブル依存症などに係る問題で医学的な知見が求められている。
非常勤委員である遠藤氏は、京都大学大学院卒で、専門はエネルギー政策、セキュリティ・リスクガバナンス。現在は、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の特任教授。
同じく非常勤委員の樋口氏は、元警視総監(2011~2013年)であり、その後、在ミャンマー全権大使(2014~2018年)を務めた。
このように見ると、カジノ管理委員会は、法律、金融、医学、セキュリティ・リスク管理、公安など、同委員会に必要な分野のプロフェッショナルを揃えていることがわかる。同委員会は、カジノ事業の免許や、事業者に対する監督、依存防止の対策など、政府の掲げる「世界最高水準のIR」整備に必要不可欠な機関であるだけに、今後、その機能を十二分に果たしてくれることが期待される。