こうなっていたかもしれない・・・横浜で新たに選出された市長がIR誘致撤回を表明したことを受けて、メルコリゾーツ&エンターテイメントがInside Asian Gamingに対して横浜で計画していた統合型リゾートへのビジョンを詳しく語った。
IR反対派の山中竹春氏が横浜市長選に勝利した後の9月13日、メルコリゾーツ&エンターテイメントは横浜での統合型リゾートライセンス獲得の取り組みを正式に中止し、横浜オフィスを閉鎖することを発表した。
しかしながら、日本での将来的なIRの機会を模索していくことを誓い、都内オフィスと箱根にあるスキーリゾートを通じてその関心を維持するメルコは、ただちに横浜が失う機会がどうい ったものかを公表した。
横浜が誘致撤回する前、ゲンティン・シンガポールと共に、市のRFP(事業者公募)に参加した2社のうちの1社であるメルコは、マカオとマニラで運営するシティー オブ ドリームス、コタイのスタジオシティ、そしてキプロスで開発中のシティー オブ ドリ ームス メディテラニアンで世界的に広く知られている。同社は市長選後、世界的に有名な建築事務所、ザハ・ハディッド・アーキテクツが作成した壮大なIR構想のフライスルー動画を公開した。ザハ・ハディッドはシティー オブ ドリームス マカオを象徴するモーフィアスホテルも設計した事務所だ。
メルコの副社長で、クリエイティブ・ブランド最高責任者を務めるフレデリック・ウィンクラー氏によると、その狙いは、日本への新たなゲートウェイを提供しつつ、横浜にあるものを再活性化する象徴的なウォーターフロントランドマークを作り出すというものだった。
ウィンクラー氏は、独占インタビューの中でこのように語った。
「横浜のウォーターフロントは一般の人向けにできていないために、私たちが設計において初めにしたかったことというのは、ウォーターフロントを一般の人に返して、人々が探索を楽しむスペースや雰囲気を作り出すことでした。
それは地元の文化を尊重しながら、ランドマークにもなるような方法で行われました。IR内に設計した全てのアトラクション、ショーや博物館、アーティストが作ったウォーターパーク、その全てがそこにいる人を引き付けるためのランドマークであり、プレミアムなゲストホスピタリティというメルコのやり方でデザインされました。全てのホテルがフォーブスで星付きとなる予定で、横浜にミシュラン星付きのレストランを再び持ってくることになっていました。
現在この街にはないレベルのホスピタリティを提供していたでしょう」
地元の日本の建築事務所と、シティー オブ ドリームス マカオのモーフィアスやスタジオシティで現在進む第2フェーズ開発も担当する世界的な専門知識を持つザハ・ハディッドのスキルを合わせて活用したメルコの横浜IRの設計「CITY OF THE FU-TURE」には、水と自然への敬意が込められている。
最も高い中央のタワーは横浜の花々から着想を得ており、それを囲むのが波を表す丸みを帯びたビルの数々。その周辺には水の波形を表すいくつかの小さな構造物が並ぶ。
地上では、隣接する山下公園から伸びる緑のエリアがふ頭の全長をカバーしており、公共のスペースが大幅に拡大され、市と直接一体化している。開放感を維持するために、IRの中心を通って斜めに伸びる大通りが計画されており、片側には横浜ベイブリッジ、その反対には横浜マリンタワーという既存の2つのランドマークが直接望めるようになるはずだった。
メルコIRの主要な特徴の1つが、ウェルカムハブだ。IRの入り口に位置し、観光客にとっては日本への新たなゲートウェイとして構想されていた。
「IRライセンス獲得の取り組みの中で非常に重視されたのが、日本への観光の中心地になるというものでした。
(日本が挙げたIRのゴールにある)チェックボックスを見てみると、そこには日本の魅力(日本へ人々を向かわせるようなしかけ)が含まれており、IRに入ることは、日本の魅力を発見するために人々を全国に送り出すようなものでなければなりませんでした。
ウェルカムハブは多くの乗り物やアクティビティ、食事を用意し、日本及び地方に関する情報発信をする場所になる予定でした。人々に何をすればいいか、どこに行けばいいかを伝え、旅行会社がそこに常駐してそれを実現させる予定でした」とウィンクラー氏は説明した。
日本が目指すIRのもう一つの重要要素である大規模MICE施設は、世界が期待するものに見合うよう設計されていた。ウィンクラー氏が言うところの「日本には存在しないレベルのMICE」である。季節によってコンサート会場にも変えることができる。
この施設はまた、環境も重視しており、屋根には太陽光パネル、全側面は緑で覆われ、全長500メートル、高さ40メートルという世界最大の縦型畑を持つ。この畑の利用は、地元農家に任されることになっており、そこで育ったハーブや野菜はIR内のレストランで使用される予定だった。
国際的な高級ブランドがすでに出店に同意していた小売スペースに関してウィンクラー氏は、「第二の銀座を作るのに似ています。横浜にはないもの。人々を横浜へと呼び込み、彼らが市内である程度の時間を過ごし、その後続いて国内を見て回るのにつながるレベルのホスピタリティと観光をもたらすことを目指していました」と説明する。
メルコのエヴァン・ウィンクラー社長は以下のようにコメントした。
「メルコは、常に横浜がこの都市のライフスタイル、文化そして特徴を世界が目にするための世界レベルの最上級IRの提案から利益を得ると信じてきました。デザインの卓越性、質および技への我々のひたむきな姿勢、そしてアート、デザインおよび建築を、当社の統合型リゾート案へと組み込むことに全力を尽くすという思いは、日本の豊かな歴史遺産、人間性そして美学を反映した当社の統合型リゾート案に反映されています。
将来を見すえて、このプロジェクトは新たな横浜を作り出していたことでしょう。エンターテイメント、レジャー、スポーツ、そしてMICEイベントという点で、今後長年にわたって世界屈指の目的地として見られるような街、横浜を」
事実、メルコのIRデザインでは、横浜の長期成長にむけた貢献の主要分野としてスポーツが重要な位置を占めていた。IRが実現されていれば行われていた主な取り組みの1つが、同社のブランドアンバサダーでテニス界のスーパースターである大坂なおみ選手からの意見を元にしたスポーツセンターを複合施設内に建てることだった。
大坂選手は、人々に様々なスポーツの選択肢を提供することが重要だと提案してくれました。というのも、彼女自身が子供時代、そして現在トレーニングする時も、テニスだけでなく色々なスポーツをするのが好きなのだそうです。
スポーツセンターにはサッカー場ができる予定で、その場所はあまりふさわしい練習施設を持たない地元テニスチームの練習場にもなる予定でした。日本の主要テニス団体もそのセンタ ーを練習場として使用する予定でした。
これはメルコによる横浜地域社会への貢献の1つにすぎない。ウィンクラー氏は、2019年9月に初めて「横浜ファースト」戦略を発表して以来、地元の人々とつながるために一生懸命取り組んできたと述べた。
同社の地域貢献活動には、元町に人を集めることで地元の観光および経済成長を支援することを目的とした「元町スマートサマー 」と呼ばれるイベントなどがある。
同様に、メルコはJリーグチーム、横浜F・マリノスのスポンサ ーにもなっており、今年に入って、地元商店街を応援するためのパートナーシップ契約に署名していた。「Stay Strong Together ホームタウンの商店街を応援しよう!」プロジェクトでは、審査の結果選ばれた5つの商店街を横浜F・マリノスのホームゲームに招待し、メルコが作成した商店街応援ビデオをスタジアムの大型スクリーンで放映することで、参加商店街を紹介した。このプロジェクトは、販促用の無料観戦チケットやサイン入りグッズの提供とSNSでの告知などによって、新型コロナの打撃を受けたエリアの認知向上、集客などを通じて参加商店街の活性化を図ることを目的としていた。
IR自体の中においても、メルコは「Bamboo Village」と呼ばれる地元飲食店が開業できる専用の飲食店スペースを作る計画をしており、地元小売店についても同様の構想を用意していた。
マカオの上級管理者は「外国人が入ってきて物事を支配するということにはしたくありませんでした」と付け加えた。
最後に、メルコのウィンクラー社長はIAGに対してこのように語った。「常に私たちを際立たせたものの1つが、我々全員が共有する世界に対する自社のインパクトに配慮する度合いの高さでした。我々は現地の物事の進め方を尊重し、それに対して敏感であります。
政府や地元団体とのコラボレーションやパートナーシップがこれのコア原則であり、私たちは参加するそれぞれの地域社会に合わせたオリジナルの取り組みによってこれら関係性を強化することに投資します。
10年前、メルコが日本での旅路をスタートして以来ずっと、我々は素晴らしいパートナーであること、そして地域をより良くするための推進力であることに強い決意を持って取り組んできました。10年の間に、我々は政府、地元企業、慈善団体、教育機関、地域団体と協力し、地域特有の具体的な問題やニーズに対処するユニークなプログラムを作りました。
地元サプライヤーや中小企業の経済的繁栄の強化から、横浜F.マリノスやブランドアンバサダーの大坂なおみ選手とともに行ってきたスポーツおよび健康的生活の促進、日本文化や歴史遺産の宣伝まで、我々は横浜および日本の地元コミュニティパートナーと築き上げてきた友情に心から感謝しています」