横浜市は誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の事業者公募(RFP)に対し、2グループの事業者が参加資格審査を通過したと発表した。31日、市のホームページで明らかにし、日本経済新聞やNHKも報じている。横浜市は6月1~11日に両グループから提案書類を受け付け、夏ごろに事業者を選定する。11日の時点でグループの了承を得られれば、名称を発表するという。
関係者の話を総合すると、応募した2グループは▽シンガポールに拠点を置く「ゲンティン・シンガポール」と、ゲームやパチンコの大手メーカーの「セガサミーホールディングス」、それに「鹿島建設」の3社からなるグループと▽中国のマカオを中心に事業を展開している「メルコリゾーツ&エンターテインメント」と「大成建設」の共同体とみられる。横浜市に本社を置く「SHOTOKU」も応募していたが、要件を満たさなかったという。
横浜市が今年1月に示した実施方針によると、IR施設は横浜市の山下ふ頭(約43ヘクタール)を候補地とし、世界最高水準の施設をめざすことなどを掲げている。市は19年8月にIR誘致を正式に表明し、19年12月までに実施方針の参考とするコンセプト提案(RFC)を募ると、大手7事業者が参加していた。
ただ、新型コロナ感染拡大の影響で世界的にIR事業の採算が悪化し、20年5月には本命候補と目され、シンガポールのマリーナベイ・サンズなどを運営する米最大手「ラスベガス・サンズ」が日本進出の見送りを明らかにした。続いて「ウィン・リゾーツ」も横浜の事務所を閉鎖し、撤退。20年12月の追加のRFCでは5事業者となり、今年5月には優良企業として香港に本社を置く「ギャラクシー・エンターテインメント・グループ」までもが入札を見送っていた。それだけに横浜市の担当者は「実施方針で高い水準を求めていた中で、2グループからの応募があったことはありがたい」と話した。
横浜市は今後、IRの実施方針に沿って6月11日までに通過した2つのグループから事業内容に関する提案書類を受け付け、有識者による委員会での議論を経て「ゲンティン・グループ」か「メルコ・グループ」のどちらかを今夏をめどに選定する。その後は事業者と市が共同で策定した「区域整備計画」を22年4月までに国へ提出。国は全国から最大3カ所の計画を認定する方針を掲げており、誘致活動を進めている大阪府・市、和歌山県、長崎県と争う。
しかし、横浜IRを巡っては一筋縄では収まりそうにない。誘致に反対する市民グループが署名活動を展開し、候補地の山下ふ頭の関係者もIR反対を掲げ、今年8月実施の横浜市長選でIRに反対を掲げる候補擁立を目指すなどアゲインストの風も吹く。一方、経済界などは基本的に推進の立場をとっており、予定地のある中区の経済団体は「横浜を次世代につなぐ収益の基盤として重要となる。感情的にならず、地元として応援していきたい」と話している。
開業目標は2020年代後半。横浜市はIR誘致を雇用の促進や新型コロナで疲弊した地域の観光業などの再興の起爆剤としたい考えだ。実際、首都圏の潤沢な後背人口を抱え、いまだに国内IR誘致の中心にいることは間違いないが、舵取りを間違えれば、命取りになりかねない。