MdME Lawyersのカルロス・コエーリョ氏によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、マカオではオンラインゲーミングに真剣に取り組む必要性に拍車がかかっているとのこと だ。
私はInside Asian Gamingの2020年3月号では、マカオでオンラインゲーミングの許可を検討するよう、当局に訴えた。以来、同様の訴えの声が数多く挙がっている。その理由は明らかだ。マカオの2020年のゲーミング粗収益は、前年比79.3%減、観光客数は3,300万人減の590万人、そして失業率は過去最高の2.9%(初めての求職者に至っては約6.27%)となっているからである。現実世界のゲーミングに依存しすぎている経済として、他にどのような結果が期待できるだろうか?
他にも、オンラインゲーミングを推進したいとの衝動に駆られる明白な理由は二つ。一つは、マカオのゲーミングコンセッションの期限切れが近づいていることと、マカオのゲーミング体制の全体的な見直しが予想されていること。もう一つは、オンラインゲーミングが2001年よりマカオ賭博法で予見されていることである。
オンラインゲーミングの実施の可能性については、ぜひとも議論を深めるべきであり、今こそがその時なのだと言いたい。現実世界のゲーミング市場が新規プレイヤーに開かれてから、約20年が経過した。現職のスポーツくじのコンセッション保有者は15年以上にわたり、プレイヤーのベットをオンラインで受け入れられるようになった。そして、ここ10年に至っては、世界中のオンラインゲーミング事業の成長を目の当たりにしており、アジア諸国も真剣に検討している。
政府は、ゲーミングの法的枠組みの改正を公聴会にかける意向を明らかにした。学者、法律裁定者、業界関係者は現在、マカオの経済的原動力の再考に焦点を当てている。そのため、この件を実現させるのは彼ら次第なのだ。興味深いことに、行政長官もDICJも、この可能性への道を閉ざしていない。2020年6月のマカオビジネスのレポートにあるように、「マカオのカジノがオンラインゲ ーミングを行えるようにする可能性について、行政長官の賀一誠氏に尋ねたところ、その答えは『研究中』だった」。
つまり、今こそその時なのだ!
触れにくい相手
進むべき道を提案する前に、触れにくいもの、つまりは中国本土のことを議論しなければならない。中国当局はここ数年、国内からの不正な資本流出を防ぐための手段として、自国民を対象としたオンラインゲーミング事業(特にアジア全域)に対し、寛容さを徹底的に見せていない。
これは、マカオ当局が取り組まねばならない問題である。そのアプローチは明確だ。それは、中国本土のプレイヤーを、マカオのオンラインゲーミングのプラットフォームでプレイできないようにするというもの。マカオは、中国本土のプレイヤーを対象としない事業を技術的に開発すべきで、これがこのルールをすり抜けられないように保証するのである(ジオブロッキング、ジオフェンシングソリューシ ョン、ジオロケーションツール)。賭博が法的に許されていない場所にプレイヤーがいるかどうかを正確に特定することは、技術的に可能である。この方法なら、マカオ政府の肩の荷は下り、オンライン事業の実施に関する偏りのないSWOT分析が可能になるだろう。
一つ目のケースでは、中国国民に対してオンラインゲーミングを全面的に禁止し、二つ目のケースでは、より広い市場への開放を(3 〜5年以内に)検討するという、実施期間を別々に設けた二層構造のアプローチも考えられる。これにより、市場が成長および成熟し、国家的な反汚職対策の遵守と、違法手段を介した資金流出を防ぐ政策の保証に必要となる、正しい牽制機能を有することを示すための時間が中国政府に与えられることになる。
同時に、(現在のように)アジア全域の事業者の懐に入るのではなく、国内のオンラインプレイから管理可能な規制環境へ資金が流れるのを「許可」する方が望ましいと、本土当局に納得させられる可能性もある。
その価値とはいかに?中国本土のプレイヤーを含まないオンライン事業など、実施する価値はあるのだろうか?それは、正しい質問(少なくとも正しい言い方)ではないと思う。むしろ認められるべきは、それ以外に道がないということだ。そして、アジアは人口が47億人とその数字単体だけで見ても、オンラインゲーミングがすでに大成功を収めているヨーロッパのそれよりはるかに多く、巨大な可能性を秘めている。
オフショアのゲーミングプラットフォームでのプレイを自国民に許可していない国があるなどの制限に関わらず、アジアにおけるオンラインゲーミングが成長する機会は、相当なものであることに疑いの余地はない。ほんの一例だが、私の計算が正しければ、オンラインゲーミングの収益がマカオの2019年のゲーミング粗収益の9%に達すれば、その額はマカオの公務員全員の給与をまかなうに足りるだろう(マカオ2020年予算に基づく)。
フィリピンの場合
この議論は、地元民のプレイの可能性について一言触れずには語れない。そうしてはいけない理由が見つからないのだ。
地元民は、一部の例外を除き、マカオの現実世界のカジノで24時間年中無休でプレイすることができる。そして、例外なく、オフシ ョアのサイトでもプレイできる。実際、マカオは、管轄外で提供および運営されているゲーミングサイトや賭博サイトへのアクセスを禁止したり、制限したりしていない(考慮すべき点あり)。
しかも、現地のインターネットサービスプロバイダーにブロックの義務を課してもいない。当局に地元ゲーミングの検討を妨げ得る根本的な懸念、特に過剰で規制されていないギャンブルやその依存の防止は、(技術的な観点から)オンラインスペクトラムで簡単に対処できる。未成年者および弱者の保護は、顔認証を含むプレイヤーの明確な識別、およびプレイヤーのアカウントで設定可能な賭け金の上限によって保証されるべきである。プレイが十分に監視されていたことを確認するべく、厳格なマネーロンダリング防止(AML)と顧客周知(KYC)の要件があることは間違いないだろう。
逆に、地元民が規制された環境でプレイできるようにすることで、地元消費者を守ることになる。これがフィリピンの新しいPIGOモデルに反映されないはずについての議論は、またの機会に述べることにしよう。
収束 対 新風
議論の余地があるのは、事業候補者の特定であり、現在のゲーミングコンセッション保有者が申し出る可能性は高い。実際、彼らが参加を許可されていなかったら、市場の共食いが起き、コンセッション保有者全員がこれまでマカオに示してきた真剣な取り組みを無視することになりかねない。
アメリカでは、実店舗でのカジノ運営とオンラインゲーミングの融合という、興味深い現象が起きている。現在のマカオの法的枠組みでは、ゲーミングコンセッション保有者によるオンラインゲーミングの運営は許可されていないが、簡単な法律の変更でこのような制限を元に戻すことができる。
一方で、若い人材に目を向けるのは、マカオにとって有益なことかもしれない。マカオとGBAの起業家たちは、おそらく世界各地の一流オンラインプレイヤーとジョイントベンチャーの提携を結ぶ中で、アジアの消費者に合わせて市場に刺激を与え、新たなアプロ ーチを生む可能性がある。新規参入企業が、厳しい規制環境下での運営実績を持つ適切な事業者であれば、その可能性を排除する理由はないように思える。
コンセッション 対 ライセンス
法律に明記されているのは、コンセッション制度である。オンラインゲーミングの商業営業は、マカオ政府とのコンセッション契約締結を通じて、その趣旨のコンセッションを付与されている民間所有の事業体のみが行うことができる。公開入札に基づいて、政府と直接交渉するという歴史的なコンセッション制度がまだ意味を持つのか、それともライセンス制度に焦点を移す方が良いのかを検討する時が来ているのだ。
オンラインプラットフォームを運営するためには、事業者は正規のライセンスを取得しなければならない。一言で言えば、公開入札の手続きを飛ばし(その結果、新規の市場参入はマカオ当局が事実上開始した入札に依存しない)、適用する要件を実際に満たしていることを証明した事業者にライセンス(容易には入手不可)が付与されるということだ。
そのような要件は、客観的な「個人的」要件や、ライセンスの帰属に基づいてチェックされる専門的および技術的要件など、ゲーミングコンセッション保有者に必要な要件と大きく変わらないだろう。事業者はそれなりの立場でなければならず、技術的、経済的、財務的な適性が求められる。事業/プラットフォームの構築計画を提出する必要があり、事業範囲の独占性や最低資本金などの企業要件が必要となる。また、その賭博技術システムの承認、認証、公認が最も重要である。
規制の観点からは、オンラインゲーミングの運営やライセンス要件に関する新たな法的枠組みの導入、およびオンラインゲーミングの技術システムの技術要件の定義や実施に関するガイドラインや規制の必要性を伴うだろう。広告ルールの行動規範といった他の懸念事項にも対処できる。
WHO(世界保健機関)のマイケル・ジョセフ・ライアン事務局長は最近、「この感染拡大は必ずしも大きなものではない…我々は将来的に、さらに深刻になるかもしれない何らかの状況に備えておく必要がある」と述べた。
このメッセージは、当局への警鐘となるはずだ。これを当然のことだと思わないように。観光客数の前年比85%減がその影響を物語っている。何も手を打たないで、もう20年が過ぎようとしているのである。今こそ気を引き締め、可能な限りの支援(利害関係者、法律制定者、専門サービス部門)を得て、このアイデアを実現する時なのだ。
ゲーミング内の多様化は未だに広がりつつあり、オンラインゲ ーミングで発生した税収は未だに現実世界のゲーミング粗収益と同じ公共財源に入っている。さあ、今すぐ行動しよう!