Inside Asian Gamingは、ブロードウェイ・マカオで地元中小企業のオーナーらと対談、ギャラクシーエンターテインメントグループとの提携により、彼らが目もくらむような高みに到達した経緯を紹介する。
中国には、こういう諺がある。「ある人に魚を一匹与えれば、その日を食い凌げる。その人に釣りを教えれば、一生の間、食い凌げる」。
マカオを代表する企業の一つであり、責任のある企業市民であるギャラクシーエンターテインメントグループ(GEG)は、長年にわたって地域社会への還元に尽力しており、マカオ経済の多角化を促進させるための様々な取り組みを通じて、地元の中小企業 (SME) を支援し続けている。
「大企業が中小企業を導く」というビジネスモデルに基づく形で、GEGのブロードウェイ・フードストリートは、 大規模の統合型リゾートと地元中小企業との協力を示した典型的な事例だ。
GEGは2015年より、地元の伝統的な食品・飲料ブランドの近代化と企業化の支援を積極的に行い、小売・飲食部門の地元中小企業をマカオのブロードウェイにあるブロードウェイ・フードストリートに誘致し、出店させてきた。
「このプロジェクトを始めた当初は、観光客に焦点を当てることが目的だった」と、ブロードウェイ・ホスピタリティ・オペレーション&シアター副社長のハリソン・ラン氏は説明する。
「観光客が街や路地に行かなくて済み、マカオの様々な本格料理を一箇所で楽しめるように、フードストリートの建設を計画していた。
人気店でなくとも味に定評のある、本格的で特別な地元の店を探していた。地元の伝統的な店を入念に調査し、一軒ずつ訪ね、このプロジェクトに加わっていただきたいと誠意を持って招待したのだ」。
その仕事は大変で、懐疑的な地元中小企業もあったと、ラン氏は当時を思い出す。
しかし、ギャラクシーとの提携は、ジョー・レイ氏にとっては簡単な決断であった。レイ氏は、伝統的な広東料理レストラン「レイ・カ・チョイ」(英名では「レイズ・クイジーン」)の3代目オーナーで、その機会にすかさず飛びついた。
「マカオにある他の当社グループ店では、顧客のおそらく8割が地元住民だが、ここ(ブロードウェイ・フードストリート)は観光客が集中している」と、レイ氏はInside Asian Gamingに語った。
「ここは評判を確立できる場所で、当社は今後、中国本土でさらなる発展を目指していく。ブロードウェイのこの店舗は、当社最有力のお店。一晩で顧客が4、5回転することが多く、これはマカオでは奇跡に近い」。
広東の伝統的なデザート店、ハング・ホンウンのオーナーのイウ・ラム・リム氏は、レイ氏の意見に同意する。
「マカオでは54年以上、伝統的なデザート店を運営してきており、それまでの運営方法は非常に伝統的なものだった」と、イウ氏は話す。「ブロードウェイを選んだ理由の一つは、観光客の数がより多く、若年層のニーズが高いため。そこで、他店では提供されていないマンゴーパンケーキなど、若年層に好まれるデザートを提供し始めた。この場は、そんな機会を与えてくれる」。
イウ氏はさらに、GEGが提供する細かな気配りも利点だと付け加えた。
「出店してから、ブロードウェイは週二回の衛生検査を始めた」という。「これまでの代は衛生面にそこまで配慮していなかったため、この衛生検査で伝統的なデザートの作り方が大幅に改善された。ブロードウェイの衛生管理のおかげで、食品の保存、食料衛生、製造期間に基準が設けられた」。
厳格な衛生基準の導入は、IAGが話を聞いたブロードウェイの店舗オーナーらほぼ全員が「大きな利点である」と答えたものの一つ。
GEGは、地元企業やブランドの調達過程の優先に加えて、研修や技術面のアドバイスも提供している。これには中小企業に向けた食品安全ワークショップへの招待が含まれる。なお、このワークショップでは飲食サプライヤーに対し、GEG内部の食品安全プロトコルと実践が共有された。また、対象となるGEGのサプライヤーには、食品トレーサビリティ研修およびCIEH食品安全認定中級(レベル3)研修コースに参加するための全額支援が提供された。
「これらの基準に詳しくなり、クリアするようになると、当社のデザートはマカオ以外にも出荷されるようになった。ブロードウェイから広がっていく形で、現在は香港に4軒の支店を出店している」と、イウ氏は誇らしげに語った。
レストラン、チャク・イン・ケイのオーナーであるアイバン・チョン氏も、同じことを感じている。同店の創立は1944年。マカオの伝統的な露店菓子、エッグワッフルの専門店だ。当時28歳のチョン氏が祖父からこの事業を引き継いだとき、同氏はすでにブランドをイメ ージチェンジしようと心に決めていた。
「ブロードウェイは宣伝やイベントの面で大変有利なので、すぐに有名になることができた」と、チョン氏は言う。「これまでにマカオに7店舗を出店し、現在は大阪府や広州の大型ショッピングモールから出店の打診を受けている。
ここへ移転してから、この急展開の流れに進んだ。ブロードウェイのおかげで、他の場所でも支店を開けるかもしれない。
この協力は、私にとってチャンスである。若手起業家らは、必ずしも豊かで混雑した場所で店舗を借りているわけではない。ここでの成功は、健全な環境の創出も含まれる。ここは駐車でき、食後あるいは映画や演劇を見に行く前に、皆でエッグワッフルを買うことができる。今回のように、適切なタイミングで適切な場所に出店できる機会はほぼない」。
マカオの中小企業のほとんどが、新型コロナウイルス感染症で大打撃を受けた。その予防などで地域社会を支援するべく、GEGは2020年2月から6月までの間、全テナントの固定賃料を無料にするなど、実践的な取り組みを展開してきた。賃料が日々の経費の大部分を占めていることから、レイ氏とイウ氏は、この件に深く感謝しているという。
レイ氏曰く、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のピークでは、ターンオーバーが80%〜90%低下し、2020年最後の数カ月間でさえも50%〜60%低下した。
「賃料の軽減措置のおかげで、当店の負担は大幅に減った」と、レイ氏は言う。
「我々も同じ」と、イウ氏。「この軽減措置は救済であり、生き残ることができた」。
GEGが中小企業に対して追加支援を提供したのは、わずか3年で2回目であり、1回目は台風ハトの壊滅的な被害を受けた2017年である。
この支援はGEG基金を通して提供され、被災した企業のオーナ ーはマカオ政府からの補助金や無利子融資を申請することができたものの、ブロードウェイ・マカオのGEG提携企業は、GEGの台風救済基金によって、台風からの復興に向けた資金援助を受けることができた。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大中にGEGが開始したその他の措置として、同感染症の影響を軽減するべく、中国銀行(BOC)マカオが中小企業に向けて発行した社会債1億香港ドルを申し込んだほか、「健康で楽しいカーニバル」を開催、70のブースを提供し、100社以上の地元中小企業がカーニバルに無料で参加できるようにした。
GEGのラン氏によると、ブロードウェイは通常、マーケティング計画を行う際には、プロモーション費用を一切請求せずに中小企業と協力しているという。また、セキュリティや衛生面でのサポートや、レストランおよびその従業員の日常的な管理も行なっている。感染拡大時、GEGは各加盟店に消毒液を定期的に配布し、同社の日々の清掃手順に従うことを義務付けた。また、従業員がGEGの社員食堂で食事を摂れるようにもしている。
「全体を管理することで、各店舗の基準がバラバラになりすぎないようにすることができる」と、ラン氏は説明する。
「どんなイベントを開催する際も、財務および衛生部門に細心の注意を払っている。当社は同じ標準に従い、私たちのモデルを仲間の店主たちが自身のビジネスに導入するように、私たちの考え方や営業形式と条件を次第に理解していくことを望んでいる。これは「大企業が中小企業を導く」という良いビジネスモデルであるはずだ。
当社には投資の成功例が数多くある。例えばロードハウス・マカオはその投資で利益を上げ、今ではブロードウェイの他のプロジェクトに投資している。これらは、テナントが当社のプラットフォームを利用して行えることだ。
チャク・イン・ケイのオーナーであるアイバン・チョン氏に関して言えば、現在のエッグワッフルの露店に加え、ゲームブースやタイ料理レストランもブロードウェイで経営している。
彼らが利益を上げるだけでなく、それに伴って進歩し、成長していく姿を見ることができてとても嬉しく思う」。