大きな1歩となるか。IR誘致を目指す北海道苫小牧市が新千歳空港に近い「植苗地区」の約100ヘクタールを候補地に特定し、誘致活動を進める方針を固めたことが26日、明らかになった。
申請に向けた障害のひとつとなっていた環境アセスメントについて北海道から「一定の理解」を得られたため。iagの取材に対し、市の担当者は「IR誘致をする場合の特定地として北海道と考え方が一致し、承認を得た。あらためて植苗地区を候補地に整理した。誘致へ向け、前進したと捉えている」と話した。
道との協議内容は12月10日、定例市議会の総合開発特別委員会で報告される予定だ。
国への立地区域選定の申請権を持つ道は、昨年11月に申請を見送ることを表明。その際の理由のひとつが自然環境への配慮だった。しかし、鈴木知事はIR誘致への再挑戦も明言していた。
市と道はIR誘致へ向けた様々な課題を協議。地元紙によると、市が独自に行った環境影響調査や、その後の土地所有者による追加調査などを踏まえて道側も「動植物に対する影響の回避、低減の可能性がある」と判断し、了承した。事業者選定の要件に環境対策を求める規定を盛り込む考えだ。
またインフラ整備についてはウトナイ湖への影響を最大限考慮し、地下水は使わず、市の負担で公共上下水道を敷設する方針。空港や苫小牧市街地までを結ぶ各道路も原則、市の負担で整備する。
市の試算では整備費用は上下水道で約78億円、周辺道路が約100億円。これに電気、ガスも整備する。市の担当者は「いざ、開発がスタートとなったときは市が負担して、その後は道や事業者に任せる形になるのでは」と話している。
政府から発表された基本方針案はコロナ禍などの影響で国への申請期間が9カ月延期。21年1~7月から21年10月~22年4月となった。さらに、今回、環境アセスメントの課題がクリアされたことで「北海道IR」は再挑戦への土壌ができつつある。苫小牧市の担当者は「一度は申請が見送られたが、スケジュールが後ろ倒しになったことで、チャンスが出て来た。間に合うかもしれない」と意気込んでいた。
IR誘致を巡っては国内3カ所の設置が認められ、現在は横浜市、大阪府市、和歌山県、長崎県が国への認定申請を出している。北海道が「第5の男」となるのか。先行きは不透明だが、一筋の光明が差し込んだのは確かだろう。