日本型IR　申請期間9カ月の延期で各自治体に”明暗”

9日、観光庁はカジノを含む統合型リゾート施設の整備について来年1～7月の予定だった自治体からの申請期間を「9カ月延期する」案を公表。新型コロナウイルス感染症の影響による準備不足を配慮し、来年10月1日に受け付けを始め、期限は2022年4月28日とする。ある程度予想されていたとはいえ、これにより、2020年代半ばを目指してきた開業が遅れる可能性が出てきた。

政府は当初、今年1月に整備区域の選定に関する「基本方針」を決め、来年1月4日から7月30日まで申請を受け付ける予定だった。しかし、年末にIR汚職が発覚し基本方針の決定がずれ込み、さらに年明け以降の新型コロナ禍で海外事業者の業績が悪化。自治体の公募手続きなどにも影響が出ていた。

政府は来月7日までパブリックコメントを求めた上で基本方針を正式に決めるとしているが、新たな評価基準として感染症対策を盛り込み、利用者の健康や衛生を確保する取り組みを求める。また汚職事件を受け、収賄などの不正行為を防止し、公正性や透明性を確保するため、国や自治体の職員などがIRの事業者と面談する際は複数の職員で対応するほか、面談記録を作成し、一定期間、保存するといったルールも盛り込む。あわせてギャンブル依存症対策へ取り組みも評価基準に加えた。

政府への整備計画の提出期限が延期されたことで各自治体の”明暗”が分かれた。現時点で正式に誘致を表明しているのは大阪府・市と横浜市、和歌山県、長崎県。なかでも暗雲が立ち込めたのが和歌山だ。

というのも和歌山県は”先行逃げ切り”を狙い、当初のスケジュールに照らして愚直なまでに準備。大阪府・市が断念した「万博前開業」による優位性を強調していたが、その戦略が水泡に帰すことになったからだ。和歌山県の仁坂吉伸知事が「大変不満で遺憾だ」と悔しさをにじませたのも当然か。

IR反対派が一定の勢力を保っている横浜市にとっても延期は悩ましいところだ。林市長は「これまでにコンセプトの提案があった事業者に対する追加のヒアリングなどを行い、しっかりと検討。市民の理解を得て、IRを実現できるよう取り組みを進めていく」と話しているが、申請開始直前となる来年8月29日に運命の市長選があることから予断を許さない状況と言っていい。

残る2つの自治体は今回の延期を冷静に受け止めた。大阪市の松井一郎市長は「ありがたい」と歓迎。大阪府の吉村洋文知事は「妥当な判断」と話した。興味は11月1日投票の「大阪都構想」にあるようだ。

また、長崎県の中村法道知事は「現在、IR事業者の公募・選定に向けた準備を進めているところ。今回の変更内容も踏まえ、あらめて事業者の意見も伺いながら、区域認定申請に向けた準備を着実に進めて参ります」とコメントしている。