苦境に立つクルーズ船事業者のゲンティン香港が、ドイツ政府からドイツにある造船所のMVヴェルフテンでの事業を継続するための給付金1億9,300万ユーロ(約989億円)を受け取る予定となっている。
ゲンティン香港が同国の安定化基金から求めていた5億7,000万ユーロのおよそ3分の1にあたる今回の給付金は、新型コロナウイルスが世界的に流行する間、ドイツ人労働者を現役雇用状態にしておくための政府の取り組みの一つ。
しかし、アジアの同事業者にとっては良いタイミングでもあった。同社は8月、増大する新型コロナウイルスの圧力の中で流動性を保持するために、利息や用船料を含むグループの金融債権者への全ての支払いを一時的に停止することを発表していた。同社の負債額は総額34億ドルにのぼる。
日経アジアンレビューによると、アジア企業にそのような巨額の給付金を与えるという決定は、ドイツでは様々な反応で受け止められている。
野党のオット・フリック議員は、「国家援助の決定は、外国の親会社が関わっている時には特に難しい。というのも、外国の親企業の現金管理に介入してその資金が外国に流出しないようにすることは容易ではないからだ。
しかし、その多数の高い技術を持つドイツ人労働者および巨大な現地技術サプライチェーンをこの危機から救う必要性を我々が認めていることを考えると、ゲンティンは間違いなく非常に大きな影響力を持っている」。
ゲンティン香港が、ドリームクルーズの取得後、2015年に購入したMVヴェルフテンは約3,100人を雇用している。
ゲンティン香港は、ドリームクルーズ、クリスタルクルーズそしてスタークルーズの3つのクルーズラインを運航しており、フィリピンの統合型リゾート、リゾートワールド・マニラの合弁パートナーにもなっている。
同社は先月、2020年上半期の7億4,260万米ドルの連結純損失を報告した。