シンガポール国際商業裁判所は、オーストラリアのスター・エンターテインメント・グループがギャンブルによる借金の返済を拒否したシンガポール人実業家から4,320万ドル(約33億円)の回収を求めていた裁判で同社に下した2019年の判決は、シンガポールの権益を守る事を目的とした公の秩序によるものだったと明かした。
シンガポールの裁判所に提起された最大の借金訴訟と言われるこの事件は、同カジノ事業者が、ウォン・ユー・チョイ氏(55歳)に対して2018年にザ スター ゴールドコーストのVIPテーブルで負けた金額を支払うよう求めていたものだった。
ウォン氏は、カジノ幹部がバカラディーラーによるミスによって、同氏が2018年7月29日までの負けの責任を負うことはない、またミスが続いた場合には今後の負けの責任も負うことはないと約束したと主張した8月1日に再度ミスがあった時点で即座にプレイを中断したと、ウォン氏は主張していた。
また争点となっているのは、スター・ゴールドコーストのウォン氏への貸付の性質。スター・エンターテインメント・グループによると、ウォン氏は4,000万豪ドル（約29億7,166万円）の小切手現金化の融通を要求し、それが認められ、その後さらに1,000万豪ドルが追加された。ウォン氏はその様な要求はしておらず、代わりに4,000万豪ドルの貸付を直接提案されたと述べた。
ウォン氏はオーストラリア到着時、スター・エンターテイメント・グループに空欄の小切手を手渡し、その後同社が金額が書き入れたが、シンガポールに戻った時点でその小切手をキャンセルしていた。
先週発表された判決理由の中で、シンガポール国際商業裁判所のジェレミー・クック裁判官は、ウォン氏への同情はほとんど示さなかったものの、シンガポールの民事法は明確に、海外の法域におけるギャンブルによる未払債務の強制執行を認めていないと説明した。
クック裁判官は、「いかにそれが喉に引っかかるようなもので、裕福な男が『信用借り』と言われているものを、民事法第5条第2項の理由のみで回避することがいかに道から外れているようだとしても、(中略)シンガポールにある規制されたカジノで賭けを行う場合には掛けられない額を、海外では規制されたカジノで罰を受けずに賭けを行うことができるシンガポール国民にとって、これは（中略)シンガポールの権益を保護する公の秩序に付随する必要な問題として認識されている。
その公共政策は、自国民およびそのような活動への彼らの露出に関して温情主義的な管理手法を維持しながら、国の経済的利益、そして統合型リゾートの一部であるかないかに関わらずここにある認可カジノで外国人にその収入を消費することを奨励することの望ましさを鑑みて、民事法第5条2項の効力を制限してきた。
クック裁判官は、ウォン氏自身がオンラインギャンブル事業に株を持っていたことで相当の利益を得たことを指摘し、「同被告は、搾取から、彼自身そして自身の嗜好からの保護が必要な脆弱な人物ではない。しかし、私の判決の中で、民事法第5条第2項はその効果において明らかであり、その条項に対して本件に適用できる免除はない」と付け加えた。
スター・エンターテインメント・グループは、2019年10月の最初の判決当時、控訴する計画であると述べていた。
