フィリピンでの新型コロナによる営業停止は、ゲーミング規制機関であるPAGCORに、オフショアゲーミング事業者の規制を再検討する貴重な機会を与えている。グロ-バル・マーケット・アドバイザーズのブレンダン・D・バスマンがその機会について分析する。
現実世界のゲーミング業界が新型コロナウイルスへの対応で沈黙する中、パンデミック中、多くのオンラインゲーミングが営業を続けてきた。しかしながら、フィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)とロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、新型ウイルス流行への対応として3月中旬にフィリピン・オンライン・ゲーミング・オペレーターズ(POGO)も休業させた。POGOは、財政的にフィリピンに対してかなり大きな影響を与えてきており、収益は2018年から2019年にかけて13%以上も増加した。
4月下旬、政府はこれらの営業を再開させること、そしてパンデミックへの対応で歳入不足に陥り、大きな打撃を受けてきた政府への財政支援手段として、POGOを生活に必要なビジネスと見なすことについての対話を持ち始めた。6週間の休みの後、POGOは、強化されたコミュニティ隔離(ECQ)の下で政府が打ち出した厳格なガイドラインに従って営業再開することを許可された。その制限には、人員数調整(3割)による営業規模の縮小、従業員への送迎サービス、体温チェック、従業員の社会的距離の確保とマスク着用などがあった。
POGOの営業停止は、PAGCORに最大で月間6億ペソ(約12億円)の収益を失わせたことが明かされた。PAGCOR自体は、内国歳入省(BIR)と関税局のすぐ後に続く、フィリピン政府にとって3番目に大きな収益を生み出す機関だ。
POGOは2016年から営業しており、事業者および規制当局双方にとって確かな収益創出元であることが分かっている。しかしながら、POGOの営業、そしてその副次的影響の一部がフィリピンの特定のエリアで膨れ上がってきたために、POGOはこれまでも、そしてこれからも徹底的な調査を受ける状態に置かれる。これには入国管理を初め、住居および商業用不動産市場への多大な影響、そして労働雇用省(DOLE)、中央銀行そしてBIRといった他の政府機関への影響などが含まれている。
5月半ば、PAGCORはPOGOの規制構造に関して一般市民に教育を行うキャンペーンを開始した。これには、どの人にPOGOをプレイすることが認められているかを具体的に説明するなどの一部の基本内容とともに、その営業、そして事業者自身を支えるのに役立つサービスプロバイダーの重要な側面の一部などが含まれていた。また、これらオンライン事業者を取り囲んできた課題、特にマネー・ロンダリング、売春組織、人身売買、犯罪行為、そしてスパイネットワークの隠れ蓑の役目を果たしているかどうかなども話し合われる。しかしながら、このキャンペーンは、外国人、主に中国人労働者が流入してきているにもかかわらず、雇用が生まれていることや政府の歳入が増加していることなどにも光を当てている。
POGOの改革は最も最近では5月に入っても続いており、NO-GO(無登録オフショア・ゲーミング・オペレーターズ)の取り締まりが行われた。政府省庁で構成された特別委員会が目指すゴールは、国内で違法に施設を運営するそのような集団を廃絶し、違法オンラインゲーミングを終わらせることだ。
最近のラス・ピニャス市での中国人265人の逮捕、そしてマカテ ィ市などで行われている捜査は、業界を浄化し、競争が行われる場所に合法に営業する事業者を連れてくるためのプロセスの始まりである可能性が高い。
POGOがその規制構造への独自の課題を示す一方で、その事業はまだ急速な成長段階にあり、そしてその進歩についていくことのできないシステムに支配されている。オンラインゲーミングは持続可能な収益源を与えることができる。ただし、業界が繁栄するにためには正しい規制構造とそれを実施する手順が必要になる。今回のパンデミックは、PAGCORに、規制構造を実行に移す機会だけでなく、市場にいる違法事業者(NOGO)とより効果的に戦うための取り組みを開始し、フィリピン国内で合法に営業したいと願う事業者に対して、より良い構造を提供する機会を与えている。
より強固な収益検証システムが実施されるまでは収益がまだテーブルに置かれたままになっている一方で、PAG-CORが業界のために構造を固めようとする努力において前進する中で、POGOは世界中のオンラインゲーミング営業のモデルになることができる。
特にこの新型ウイルスが大流行する世界において、オンラインゲーミングの機会というのは否定しようがない。多くのプレイヤーがこれまでに慣れ親しむようになったライブゲーミングのスリルをオンラインゲーミングが置き換えることはないものの、実在店舗での営業をスケールダウンしながら、実行可能かつ便利な代替策というものは提供してくれる。
また一方で、管轄区域がオンラインゲーミングを検討する時、彼らは厳しい規制、本人確認手続き、そして責任あるゲーミングのための対策を準備し、実行可能かつ競争が行われるオンライン市場を保証しなければならない。