新型コロナウイルスの感染拡大によるカジノ業界や経済活動への悪影響を少しでも和らげるにはどうしたらいいのか。「サーモカメラシステム」もそのひとつで、最大16人の顔認証と体温検知を瞬時にできるサービス。コンサート会場やスタジアムの入り口などに設置し、水際対策が期待できる。
見えない敵」は人々の日常を奪い、経済活動の大きな妨げとなっている。コロナ感染症対策を徹底すればするほど、経済が停滞するというジレンマ。
有効な治療薬やワクチンといった切り札がない現状では仕方ない面もあるが、経済的ダメージを抑えるためにはまず人々の流れを円滑にする必要がある。
この「サーモカメラシステム」はそんな期待に応えてくれる体温検知器だ。この3月にザインエレクトロニクスのグループ会社キャセイ・トライテックから販売され、すでに都内の高層オフィスビルや大手ゼネコンの工事現場などで活用されている。
もともとは中国のAIスタートアップYITU(イートゥテクノロジー)が開発したもので、YITUは顔認証技術に関しては常に世界のトップ5に入る技術集団。マカオのカジノ施設でも導入されており、例えばVIP客が来場した際に事前登録している顔画像から識別し、抜かりなくもてなすことができる。
今回はコロナ対策として、顔認証に体温検知を組み合わせることで、発熱している人をすばやく割り出す。顔認識用のフルハイビジ ョンカメラと体温を測るためのサーモグラフィカメラを備えており、おでこに焦点を合わせ、検温する。仮に対象者がマスクを装着していても一定程度の顔認識精度を確認済みという。
何よりのセールスポイントは最大16人の体温を同時に測定できること。しかも、所要時間は0.03~0.1秒という速さだから従業員や観戦者ら通行の流れを止めることもない。また赤外線を放つ温度計の参照物を使い、体温の測定後差を±0.3度以下に抑えてもいる。
同社の担当者は「コロナ感染者は発熱の症状が必ず出るので、人が集まりやすい場所では発熱した人を早く発見し、分離させることが重要になってくる。このシステムなら顔認識できるので発熱した人を特定し、追跡することもできる」と話す。
都内の高層オフィスビルを例に挙げると、政府の専門家会議が基準としている体温37度5分以上に設定。それに該当する人が通過した場合にはアラームが作動し、入場を制限する。
担当者は「ホテルや病院、駅、空港の他に野球やサッカーなどの大型競技施設からも問い合わせがきており、実際導入が決まっているところもある」と話した。
IRにおいて顔認証システムは依存症対策の面などからも”関所”としてのニーズが高い。コロナ禍はいずれ終息を迎えるだろうが、安心、安全志向は一段と高まるのは間違いなく、当然サプライヤー同士のアイデア競争も激しさを増しそうだ。