Inside Asian GamingのCEO、アンドリュー・W・スコットが、ブルームベリー・リゾーツ会長兼CEOのエンリケ・K・ラソン・ジュニア氏と対談を行い、同社の成長への意欲、そしてフィリピンゲーミング市場の コロナウィルス前の 現状について話を聞いた。
アンドリュー・W・スコット(AWS):エンターテインメント・シティで今まさに成長しているソレアから始めましょう。2019年はどう評価しますか?
エンリケ・K・ラソン(EKR):まずまずの年でした。よかったと言えるでしょう。VIP、マスゲーミング、スロット、そしてマステーブルの全カテゴリーでマーケットシェアトップの座を維持しました。それらすべてのカテゴリーで市場をリードし、そして市場がかなり好調な成長となりました。
AWS:改善の余地がある分野はどこになるでしょうか?
EKR:ご存じの通り、当社が現在主に取り組んでいる拡張計画はケソン市のリゾート施設で、そこで今は動いています。しかし、ここソレアにも拡張のための広いエリアがありますので、ケソン市が終われば、恐らくここでまた始めると思います。
AWS:開発が始まろうとしているクルーズ船用の港の他に、ソレアでは他にどんな計画をしていますか?
EKR:そうですね、第2フェーズ開発では小売エリアをかなり広げる予定です。恐らく面積にして3倍くらいに。最高級顧客層で小売りがかなり人気になってきました。また、はるかに広いゲーミングエリア、そして少なくとも1,500室ほどの客室も追加する予定です。
AWS:ソレアがフィリピンの全市場セグメントでリードし続けることに言及されました。VIP対マスという点に関して、VIPはどれくらい重要ですか?そしてアジアの大手ジャンケットとの関係はどのようなものですか?
EKR:彼らとつながりはありますが、我々はどちらかというとマスに力を入れています。それらのつながりを維持している一方で、VIPは単に一事業セグメントにすぎません。我々は、海外であろうと地元であろうと、マス市場をターゲットにしています。
AWS:プレミアムマスはいかがですか?
EKR:はい、それも含まれています。プレミアムマスとマスが、我々が重視している層です。
AWS:マカオは過去12カ月間、VIPで紛れもない不振を経験してきました。ソレアでもそれは感じられていますか?これはアジア全体のことでしょうか?
EKR:マカオが直接的な影響を持っているわけではありませんが、VIPの伸びはここでもかなり鈍化しています。過去数年間、プラス成長はしていましたが、ここでは一桁台でした。でも、先ほども言 ったように、我々が重視しているのはその分野ではありません。マスとプレミアムマスです。
AWS:マニラが観光地としてさらに爆発的に成長するには具体的に何をする必要があると思いますか?
EKR:2つあります。空港と地下鉄。政府は、クラーク空港の建設に力を注いでおり、ブラカン州、そしてここカヴィテでの空港建設を承認しました。ですので、ロンドンのように3つか4つの空港が集まるという事になるかもしれません。ここマニラの問題は、滑走路の容量です。空港には滑走路が一本しかありません。以前の香港の啓徳空港に似ています。あちらは新しい空港を建設し、今は全てが上手くいっています。それが、ここでしなければならないことです。
AWS:つまり、ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)を整備するよりも、新空港の建設を希望しているということですか?
EKR:空港とターミナルの整備が行われていますが、NAIAは最終的に羽田空港のようになるでしょう。新空港の建設が必要です。そうすれば、ロンドンや東京のような状況になります。つまり、誰も成田には行きたがりません。単に遠すぎるのです。でもブラカンやカヴ ィテは、市街地までの距離で言うとおそらく香港空港よりも近いです。
AWS:目的地がマニラである場合、国際便はクラークまで飛ぶのが実際には理にかなっていると思いますか?
EKR:より近くなるでしょう。インフラが改善すれば、より近くなり、人 々はより多くの選択肢を持つことができます。今は、クラークにいれば、クラークにだけにいる。ここにいれば、ここだけにいるという状況です。しかし、インフラを改善することで、人々がより循環し、みんなが得をすると思います。適切な道路と鉄道があれば、クラークは全く遠くありません。他の都市を見てみてください。適切な高速道路があるヒースローがいい例です。つまり、飛行機はマニラで着陸できるように、ロンドン市街地であるナイツブリッジには降りられません。街に近いのではなく、実際に街の中にあるのです。
AWS:IAGチームは最近、クラークで1週間過ごし、カジノ拡張に関してどれくらいの開発が行われているか、直に見てきました。クラ ークはエンターテインメント・シティにとっての脅威ですか?
EKR:そうは思いません。人口が密集しているのはマニラ首都圏です。
AWS:つまり、クラークまでつながる高速道路を建設し、かなり簡単にそこにアクセスできるようになれば、それが数字に悪影響を与えるようなことは予想していないということですか?
EKR:シティー オブ ドリームスがオープンした時、当社の業績に影響を与えるだろうと言われていましたが、その施設が市場を拡大させました。オカダがオープンした時、当社の業績に影響を与えるだろうと言われていましたが、その施設が市場を拡大させました。新しい施設がオープンするたびに、毎年売上は伸びてきました。新しい施設が市場を拡大させるのです。それがこのビジネスの在り方のようです。
AWS:つまり、例えばマカオやラスベガスのような クラスター効果を信じているということですね?
EKR: 少なくとも今はそう信じています。
AWS:クラークに施設を持つことを考えたことは?
EKR:ここでの資本的支出が全て終われば、あり得ます。ケソン市が全て済めば、恐らく何か他のことを考える時間が持てると思います。
AWS:で、それがクラークになる?
EKR:そうではない可能性もあります。そこが伸びている場所だと感じるならどちらでも何も除外はしていません。
AWS:ブルームベリーはインフラに関して積極的に政府に関与していますか?
EKR:もちろんです。空港などのインフラを強く要求し続けています。それに関しては非常に積極的に動いています。単にこういったことは実際長い時間がかかりますし、政府はあまりに長い間放置しすぎていたために、やらなければならないことがたくさんあります。
AWS:全体として積極的にエンターテインメント・シティの振興を図るための全施設で構成される団体などはありますか?
EKR:協会がありますが、安全、交通、美化、そして規制当局とのやり取りにより意識が向いています。当初からそういった形です。
AWS:ソレア・ノースは現在どういった状況ですか?我々は何を期待できますか?そしてケソン市である理由は?
EKR:マニラ首都圏で人口が一番多いエリアで、ここは交通などを考えると北から東南の方へ行くのがかなり困難です。ですので、向こうには巨大なマーケットがあると考えています。ブラカンやクラ ークまで、その地域全てをカバーするので、非常にアクセスしやすいでしょう。
AWS:ケソン市の市長が昨年、入場税を導入したい考えを発表しました。それについてはどう思われますか?
EKR:それはほぼ過去のことだと考えています。そしてケソン市の住民のためにそうしたかったのだと。それは規制当局との問題だと思います。我々の問題ではありません。
AWS:グローバルな展開についてお聞きします。日本への関心を示されていますね。
EKR: はい。でもジョークっぽくなってきていますが。
AWS: それはどのように?
EKR:プロセスがまだかなりごちゃごちゃしていて、誰も何が起こっているのかを知りません。そして聞こえてくる投資額がただただ大きすぎます。日本ではパチンコが非常に人気があるのは知っていますが、彼らは実際バカラはするのでしょうか?フィリピンには日本人がたくさんいるにもかかわらず、ここではそれがあまり見られません。実際他のどの場所でもあまり見られません。ですので、まだ疑問が残ります。ものすごく広いパチンコフロアを持つ統合型リゾ ートになるのでしょうか?最終的にはそうなるということですか?まだ答えの出ていない疑問がたくさんあります。
AWS:日本では状況がほぼ毎日変化していることは間違いありません。事業者としてそれをどのように乗り切っていますか?
EKR:大変です。都道府県は、IR誘致を目指すと言ったと思えば、突然撤退したりします。一部は非常に真剣ですが、理解しがたい都道府県も多くあります。
AWS:ブルームベリーは現在和歌山と関係がある3社のうちの1社になっています。なぜ和歌山を選んだのですか?他の場所を検討する予定は?
EKR:別の候補地も間違いなく検討するつもりです。他の候補地にはある種煮え切らない態度を取っているところがある中、和歌山はIR開発に強い決意を持っているように見えます。東京は欲しがっていない、横浜は欲しいかもしれないし、欲しくないかもしれない。千葉は、欲しいと言っていたのに、今は欲しくないと言っている。いずれにせよこのやり取りは何なのか?はっきりしていることはないのか?100億米ドルもの投資なのに。もし自分が100億米ドル持っていたなら、そのカジノを作るかどうかわかりません。では実際、誰になら分かるのでしょうか?
AWS:日本政府にメッセージを送るとすれば?
EKR:非常に明瞭なプロセスを提示してもらいたい。どのように候補事業者と候補地を絞り込むのか?最終的に日本には20のIRができるのか、または4つか5つだけなのか?市場は何を吸収できるのか?これらが不明な点です。世界で最高のものになる可能性があるんですよね?誰も知らないんです。
AWS:ブルームベリーがもし和歌山で勝ったなら、御社のIRから我 々が期待できることは?
EKR:30億から40億米ドルの範囲のものになります。日本には実際、多くの中国人観光客が訪れており、ほぼ確実に中国からのプレイヤーのいくらかが来ることが保証されますが、もしどこかの時点で、領土問題を抱える島の1つで紛争が起きたりすれば、お分かりのように、それは一夜にして消えてしまうでしょう。ですので、考慮しなければならない要素がたくさんあります。
AWS:外観はソレアのような感じになるのでしょか?それともソレアとは異なる感じになりますか?
EKR:日本風になるでしょう。
AWS:日本でのチャンスはどれくらいあると思いますか?
EKR:まだ色々とはっきりしていませんので、それは読めません。
AWS:会長にとって優先順位は高いですか?
EKR:非常に魅力的な市場ですので、確実に優先順位は高くなります。しかし、まだルールが明らかになるのを待っている状態です。でも、もちろん、非常に高い関心を持っています。
AWS:推測するのは非常に楽しいですよね。日本版IRの実際のゲ ーミングフロアはどのようなものになるでしょうか?
EKR:まだ分かりません。ギャンブル文化はあります。競艇、競馬、パチンコがありますから、日本人の利用の可能性はあります。ただ、日本人が何をプレイしたいかが具体的に分からないということです。
AWS:御社の韓国の施設、済州サンホテル&カジノの話に移りまし ょう。現在その施設についてどう感じていますか?賢い投資だったのか、そしてその将来の計画は?
EKR:今のところ外国人専用ですので、賢い投資ではありませんでした。現地住民が遊べなければ、本物の施設、本物のリゾートを作ることはできません。ずっと、小規模の、ある種ニッチプレイヤーのような施設のままで、そこから成長するにはおそらく難しさがあるでしょう。
AWS:それについてはどのような計画をしていますか?
EKR:当面は現状維持するだけです。
AWS:済州島にはたくさんの施設があります。
EKR:どこかの時点で、もう増えなくなるでしょう。もし中国人が以前のように、済州島に何百万人という単位で戻ってくることがあればいくらか可能性はあります。でも今のところは、ただただ受け入れなければならないことです。施設は改装しましたので、今非常に良い状態です。ホテル客室、ホテル全体、カジノを改装しましたので、全てがいい感じです。ですので、そこを成長させられるのかどうかというところです。
AWS:日本では今後、そして韓国にはすでにあります。世界の他の地域へのさらなる進出はありますか?
EKR:ゲーミングがどこで合法化されているかによります。多くの国では合法化されていませんが、もし他のアジア諸国がゲーミングを合法化すれば、非常に面白いでしょう。
AWS:世界中に港をお持ちです。そしてその一部はかなり変わった興味深い場所にあります。
EKR:そうですね。港で進出する方が簡単です。そして港というのは世界中のどの国、どの場所でも合法です。ギャンブルは違います。 AWS:でもそれがグローバル展開で予備知識を与えてくれる。 EKR:はい、それについては非常に安心しています。おそらく発展度合いの高い国々を除いては世界中のどこでも。
AWS:どういう意味ですか?
EKR:それらの国々の労働環境は非常に難しく、規制がかなり厳しいのです。一部の国は実際、ゲーミング業界にとって良い市場ではありません。例えば、西ヨーロッパ、または東ヨーロッパでさえも大規模なIRを開発するのは難しいでしょう。ですので、本当に地域によるのです。ブラジルは素晴らしい市場でしょう。タイ、ベトナム、カンボジア、こういった場所です。
AWS:フィリピンでは、過去数年の間にGGRの爆発的増加を目にしました。この市場は成長し続けています。2020年に期待することは?
EKR:多分そこまでの爆発的成長ではないものの、安定した成長が続くと思います。その段階は通り過ぎたと考えています。フィリピンはさらに多くの観光客を集めており、我々がインフラを改善させれば、良いプラットフォームを提供することになるでしょう。ですので、将来は明るいようです、特にインフラの面において。
AWS:今後5年間の年間成長率はどう予想しますか?
EKR:非常に難しいですね。空港は建設されるのか、道路は完成するのかによります。もしそれが現実となれば、非常に、非常に高い成長を期待できるでしょう。
AWS:エンターテインメント・シティの未来はどうでしょうか?ここにさらに多くのIRが入る余地はありますか?
EKR:ここでは土地が極度に高騰しています。ですので、充分な広さの土地を買えるかが問題です。そもそもそんな場所があるでしょうか?おそらく、建設自体よりも高くつきます。我々がここで開業してから土地価格は15倍以上高騰しました。
AWS:それでも長期的に見ると、相応しい土地は確実に利益を生み出すでしょうか?
EKR:問題は、売り手、そして相応のIRをするのに充分な広さのある土地を見つけることです。政府は、確か2年か3年前から5年間ここでのライセンス発行を凍結しています。なぜなら、彼らは規律正しいやり方での成長を実現しようとしているからです。しかし、新規ライセンスが発行される時は来ます。
AWS:これが、5つ、6つ、7つ、8つの施設が集まるコタイやラスベガスのようになる可能性はありますか?
EKR:時間と共に、何でもあり得ます。
AWS:フィリピンは何年間も、危険でインフラが不足しているという評判に苦しんで来ました。そしてこれは香港などの場所では常に聞こえてきます…
EKR:香港は自分のことは棚に上げているようですね! AWS:国内で最も著名なフィリピン人の一人として、正直に、心の底から、まだ本当にフィリピンはそういう状況だと感じますか?それとも以前よりはましになったと思いますか?EKR:確実にかなりましになりました。あの経済成長を見てください。インフラ不足はもっともであり、政府は現在、遅れを取り戻すために様々な計画をしており、着手し始めています。
AWS:それらの計画についてどう感じていますか?上手くいっていると思いますか?
EKR:はい、時間はかかっていますが、少なくとも進んではいます。その多くがスタートする予定で、心から待ちわびていたことです。これら全てが完了する間、いくらかの痛みや混乱はあるでしょうが、少なくともトンネルの先には光が見えていま
す。