この新たな超巨大産業にビジネスチャンスを求め、様々な企業が参入の機会を伺い奮闘している。
最近、大阪ではギャラクシーエンターテインメントグループとゲンティン・シンガポールが手を引き、MGMリゾーツとオリックスのコンソーシアムの1者のみがRFPに参加申請したことが明らかにされた。そして、大阪を離れた運営事業者(オペレーター)全社は、いまは横浜に焦点を当てている。もちろん誰もが知るように、 IRの中核となるオペレーター間の競争は激しい。最大国内3カ所に整備されるIRのオペレーターに選出される為に各社はしのぎを削っている。
だが、しのぎを削っているのはオペレーターだけではない。
1月29日〜30日にパシフィコ横浜にて開催された「第1回[横浜]統合型リゾート産業展」では、この一年、日本のIR展示会でよく見られた光景と同様に、オペレーター、設計・建設関連、映像機器、IT関連、最新型ロボット、セキュリティーサービス、エンターテイメント、メディアなど、45もの出展があり、約1万人の来場者や関係者の注目を集める様子がうかがえた。

横浜の場合を例にして考えると、IRへの訪問者数は2,000 〜4,000万人/年、IR区域内での消費額は4,500〜7,400億円/年、経済波及効果(間接効果を含む)は建設時で7,500億円〜1兆2,000億円、運営時で6,300億〜1兆円/年、と想定されている(横浜市発表) 。これだけの巨額が動くマーケットに参入しない手は無いと、各社が必死になるのもうなずける。
建設業界は東京五輪関連の需要もあり、2019年4〜9月期で、大手建設業者のうち3社が純利益で過去最高(中間決算の公開開始以来)となり他社もそれに続いたが、五輪需要の後に控える大阪万博やIR需要も期待されている。
設計・建設関連業界からは大手建設業者の出展が目立ち、最新技術やスマートシティー構想などを展示した。
IT、セキュリティー関連からは、富士通、東芝、パナソニック、アルソックなどが出展。顔認証や生体認証などを組み合わせた本人確認サービスを展示した。
富士通は顔と手のひら静脈のマルチ生体認証により、100万人規模の認証を実現。ちなみに今ではどこでも見かける「手のひら静脈認証」は富士通が開発・実用化した世界初の方式。
東芝はICカード内に事前に指紋情報を登録しておくことで、2要素認証が1枚で可能になるシステムを展示した。
パナソニックは「シースルー翻訳カウンター」などを展示。登録してある顔認証で言語が自動設定され、透明なモニター越しに翻訳結果を表示し、お互いに顔を見ながら話せる画期的なサービスだ。ホテルのフロントやインフォメーションなどでの使用が想定される。
顔認証等のセキュリティーシステムは、従業員の出入場の簡素化かつセキュリティー強化などの他に、IRにつくられるカジノの中で、事前に登録したギャンブル依存症患者を見つけ出したり、法で定められた滞在可能時間が迫っている客の判別など、 様々な用途で用いられる必須のテクノロジーだ。技術大国日本も負けてはいられない分野だが、近年、中国をはじめとする諸外国のIT技術の成長が著しく、競争はかなり激しい。
出展の中で、数多く見られたものにデジタルサイネージがある。簡単に言えば電子看板だが、最先端技術を用いた、想像を遥かに超えたクオリティーのものが多い。キューブ型のデジタルサイネージを自在に組み合わせ多彩な映像演出を可能にするもの、足元に配置し圧力センサーで映像が変化するものなど多岐に渡る。
その中でも非常に目を引いたのは三菱電機の「大型空中表示サイネージ」だ。LEDディスプレイを光源とし、反射材を介し、何もない空間に空中映像を映し出す最先端技術。まるで近未来SF映画の中にいるような錯覚に陥る。出展されていた40インチという大型サイズは同社だけだそうだ。何もない空中に案内表示を出したり、アミューズメント向け大型空中映像の実現に向け、21年度の製品化を目指しているという。

人材派遣会社などの出展も見受けられた。多彩な外国人人材を提供する人材派遣会社「株式会社アウトソーシング」の担当者は、「IR周辺のホテルやMICEへの派遣を考えている。このような産業展への出展は初めてだったが、予想以上の問い合わせがあった」と喜ぶ。
日本に間もなく誕生するIRという新しい巨大産業。最新技術を使った近未来的な日本版IRを想像するに、そのオープンが非常に待ち遠しく感じる。