グローバル・マーケット・アドバイザーズのブレンダン・D・バスマンがシンガポ ールのIR業界を方向づけてきた責任あるギャンブルへの取り組みを考察する。
シンガポールがIR開発の模範的役割を果たし続けるのと同じように、同国はまたその2つの統合型リゾートのための責任あるゲーミング対策やカジノ入場制限の推進に取り組む最新モデルの1つにもなっている。
始まった当初、これら最先端の取り組みは別の方法での個人のカジノ入場制限を考慮し、施設の床面積を制限し、責任あるゲーミングの取り組みを振興する公共団体を設立し、そして責任あるゲーミング環境を作る中で事業者が政府と連携するパートナーシップを築いた。また、1日もしくは年間から選択できる住民向けのカジノ入場税も導入した。
この市場で営業する事業者2社、ラスベガス・サンズ(マリーナベイ・サンズ)とゲンティン・シンガポール(リゾートワールド・セントーサ)は当初、社内で責任あるゲーミングに関する教育およびトレーニングプログラムを開発しなければならなかった。これらの取り組みは、さらに多くの研究結果が発表され、市場が成熟していくにつれて、時間の経過とともに進化を続けてきた。プログラムには、初期および年に一度のトレーニングが含まれており、従業員は問題のあるギャンブルの兆候を見つける能力、そしてそのようなゲストへの対応方法や支援方法を身につけることができる。また、責任あるゲーミング対策や、追加支援が必要となる可能性のあるゲストへの最善の対応策に関して、より高いレベルの知識を提供してくれるハイレベルの専門家によるトレーニングも含まれている。
シンガポールでは、ギャンブル依存症対策審議会(National Council on Problem Gambling)が発足して以来、国全体で意識を高めるための努力が続けられている。昨年審議会が報告した情報を基にすると、10人中9人のシンガポール人がギャンブル依存症の潜在的な害を認識している。加えて、10人中6人のシンガポール人が問題のあるギャンブルに関する悩み相談ホットラインを知っている。シンガポールでの問題のあるギャンブルの数は低いままで推移しており、問題を抱える人は人口の1%以下に留まっている。
シンガポールは、カジノ客が確実に充分な情報を得たうえで決定を行うための積極的な取り組みを続けている。シンガポール市場の柱の1本が、カジノからの自己排除、家族や第三者による排除、そして政府が過去に犯罪歴があることを特定している人物の排除という、異なるレベルの入場制限だ。このプロセスではまた、外国人や永住者にも適用することができる。
カジノ入場税は今後も、参加する人に「入場コスト」を加えることで地元住民のギャンブルを防ぐ抑止力として実施されたより進歩的な問題の1つであり続ける。当初の1日当たり100シンガポールドル、年間2,000シンガポールドルという入場税は、150シンガポ ールドル、3,000シンガポールへとどちらも5割引き上げられた。
政府によるこの動きは、「問題のあるギャンブルをコントロールできている状態に維持」しておくために計画された。 しかしながら、多くの地元住民が、ゲーミングという娯楽活動に課された追加の税に不満を漏らしている。昨年の入場税の改定時点で、シンガポールは2010年以降に、13億シンガポールドルの税収を得ていた。この入場税が、問題を抱えているかもしれない人の問題ギャンブルを防止するのか、または、代わりに彼らはそれを目標として考え、まだ勝負を始めてさえいないのに150シンガポールドルを取り戻す必要があると感じるのかどうかはまだ分からない。
シンガポールで、事業者や政府がマーケットを見続ける中で分かってきたように、調査・研究こそが全ての法域で鍵となる責任あるゲーミングへの取り組みだ。責任をもってプレイする人々に及ぶ可能性のある、あらゆる影響を最小にしながら、まさに問題を抱える人にはより上手く対応するために、規制当局、事業者そして地域パートナーとの間でパートナーシップを継続して作り上げていくことは可能だ。
あらゆる強固なプログラムの基礎は、エビデンスと科学をベースにした研究であり、それがいずれの法域においても確かな方針や実施につながる。シンガポールが成熟し続けると同時に、これらのパートナーシップや取り組みによって責任あるゲーミングへの努力も成熟していく。その間ずっと、シンガポールは世界中の他の法域が真似ることのできるロードマップを提供していく。