提示されている日本IRの3つのライセンスのうちの1つを獲得した場合の「賞品」が充実している一方で、手が届かなかった企業のことも考えなければならないとグレン・マッカートニー教授は語る。
Tシャツにこのようなスローガンが書かれているのを見たことがある。「誰が2位だったかなんて誰も覚えていない」(プロゴルファー、ウォルター・ヘーゲン発言)。同じように、日本でカジノライセンス獲得を目指す世界のエンターテイメント企業やカジノ事業者のうち、数社は、最終的に日本政府が付与する3つのライセンスの1つを獲得できないということは必然である。その時までに各社が結成する様々な企業との連携を考えると、そのような失敗は最終的に大規模な連鎖反応につながる可能性がある。

2000年初め、私はすでにマカオにいて市場調査を実施し、カジノ開発問題へのアドバイスを行なっていた。マカオ政府が発行する最初の3つのゲーミングコンセッション(後にサブコンセッションを通じて6つに増加)に入札を行なった21社(一部は資格が得られず)のこと、そして彼らが行なっていた様々なロビー活動の努力をよく覚えており、各ゲーミング会社がプレゼン資料、IRの建設モデル、そして完成予想図をマカオ政府に発表していた。
私は今年のG2Eアジアでのマカオカジノライセンス再入札に関する自分の発表の中で、最近これらの資料に言及し、また入札条件やスコアシステムを決定し、ライセンス獲得企業にアドバイスを行う目的でマカオ政府が発足させる暫定委員会についても取り上げた。多くの日本の都市が投資意向調査を実施し始め、より具体的な情報と条件が明らかになるにつれて、カジノ事業者は日本の関係当局が求める具体的な特長に併せて自分たちの提案を調整し、より強くアピールすることができるようになるだろう。
日本ではこれまで多くのIRセミナーが開催されており、私はその一部で話をし、トレーニングを提供してきた。カジノ観光の導入または拡大を検討している地域が話題に挙げた、または懸念している問題が多々あることは当然のことで、それはギャンブル依存症対策の問題からIR開発を観光と経済発展を最大化するための媒体として確立することまで広範囲にわたる。それでも共通していたのは、IRを開発する権利を都市に与えてから、IR事業者の選定、その後の最終的な開業までに予想される時間枠に関する憶測だ。
当然、開業日に影響を及ぼす要因の中には建設、運営、人員確保そして現地立法などの問題があるだろう。日本の各都市はまた、複数のカジノ事業者から業者を選定することができる。しかしながら(そして当然)、これまでのところ、ライセンスの獲得に失敗した企業がその後どうなるかについてはほとんど言及されていない。

イベント運営のために観光業界内で入札を行なったり、大規模イベントへの入札を行うそれらの都市や国々を見てみると、研究や分析ではほとんど入札に失敗した企業への影響は調査されていない。IR誘致権の獲得に失敗した都市への反省的質問は、入札費用や地域コミュニティモラルなどのエリアでのマイナス要素を考慮したとき、その都市は入札を推し進めるべきだったのかということだろう。企業世界では、そのような入札の損失は従業員や投資家心理にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。
潜在的な利益のために、自治体は地方の競合相手との厳しい競争がある中で、なぜIRを誘致しなければならないのかを明確に示すことに多くのリソースを投入するだろう。確実に全てのボックスに何度もチェックマークを入れて、勝てる提案であることを確かにし、競合相手にはないであろうユニークな特徴を強調することが極めて重要だ。
しかしながら、全ての都市に成功を証明するためのリソース、魅力そして土地があるわけではない。同様に、少数しかない日本のカジノライセンスの1つの獲得に向けてアピールしている企業の大半が素晴らしく説得力のあるポートフォリオを持っているが、表彰台に立てるのは3社だけだ。勝者と敗者の両方にとってどれだけ賭け金が高くつくかを考えると、確実に各事業者によるキャンペーン戦争は激しいものになる。

私は日本の関係者から幅広く話を聞いて来た。一部の同僚と議論し、ライセンスを獲得できる可能性のある数社の企業も予想してきた。しかし、日本のIR権付与プロセスはまだ旅の途中であり、またその予想を書き直すことになることは間違いない。
勝利に向けて優位に立つことが今の全社の焦点だろう。そしてそのTシャツスローガンを心に留めておくことが、表彰台に立つ1社としてレースを終えるために必要な追加のエネルギーを候補者に与えてくれるはずだ。