IRに関する政府の基本方針の発表が先送りにされ、多くの重要な質問への回答がない中で、日本初のIRへの道のりは当初期待されていたほど平坦ではなくなってきている。
5月22日、日本政府は、統合型リゾート設立に関する基本方針の発表を夏の参議院選挙後まで先送りにすることを発表した。
このニュースは、全く予期されていないものではなかった。そのような信憑性のある遅延の噂はちょうど数週間前に東京で開催されたジャパン・ゲーミング・コングレス(JgC)で一通り流れていた。しかし、多くの人が恐れていたことが現実となった。日本初のIR開発への道のりにはまだ穴があちこちに空いている。
他に遅れているのが、日本のカジノ規制機関であるカジノ管理委員会の設立だ。これは当初2019年7月1日に予定されていたが、9月から12月まで続く秋の臨時国会まで待たなければならなくなった。
その全てが、日本は最初のIRを2025年までに開業させるだろうという長年の総意を、重大な疑念へと変えている。大阪府市の幹部が声高に叫んでいたやや野心的とも言える2024年の開業日については言うまでもない。
日本MGMリゾーツのエド・バウアーCEOがその後数週間、前向きな展望を崩しておらず、地元住民に対して、遅れは「たった数カ月間」になる、そして大きな影響がある可能性は低いと予想していると伝えた一方で、そうは言い切れないという人も多い。
基本方針の最終的な発表が2020年2月にまでずれ込む可能性があるという噂が広がる中、モルガン・スタンレーの株式アナリスト、プラビーン・チャードハリ氏は大阪について「2025年より前にオープンさせるのは不可能だ」と話す。
同氏は、「その理由は大阪ができる限りの努力をしていないということではなく、スタート前でさえも署名が必要な規制上の手続きがいくつかあるからだ。従って時間的に非常に不利な状況だ」と説明する。
国土交通省が問題の基本方針を発表するまでIR開発が保留されるという事実にも関わらず、日本のIRに命を吹き込むためのプロセスはすでに非常に疲れさせるものになっている。それが発表されてや っと地方自治体は仕事に取り掛かることができる。日本政府の承認を得てはじめて、独自のガイドラインの発表、RFP(事業提案公募)プロセスの開始、事業者パートナーの選定、そしてIR地区開発計画の提出を含む重要な仕事の全てが実行可能になる。
大阪としては、4月に事業構想公募を開始することで、すでに他の候補地よりも早いスタートを切ろうとしており、それによってチャードハリ氏は、この都市が事実、他のどの候補地よりも先にIRライセンスを付与されるかもしれない、まだIR入札を正式発表していない東京や横浜などの都市はその1年か2年後に続くことになるだろうと予想している。
タイミングだけが事業者にとっての懸念ではなく、膨れ上がる費用の話題が飛び交っている。、メルコリゾーツのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高財務責任者(CFO)のジェフリー・デイビス氏は、100億米ドルを「優に超える」金額を大々的にアピールしており、資金調達を巡る疑問の引き金となっている。
ここでの問題は2つの要素から成る。収益性の視点から見ると、日本のIRが世界で最も規制の厳しい、そして最も税率の高いゲーミング地域の1つになるというのは今では周知の事実だ。税率はゲーミング粗収益の30%という一律課税となる。これは、マカオの事業者が直面した非常に高い39%という税率には届かない数字ではあるが、近隣国、いくつか名前を上げるとシンガポール(マス18%、VIP8%) 、フィリピン(マス25%、VIP15%)、韓国(20%)よりも大幅に高い数字となっている。
収益性は、ゲーミングエリアの最大面積をIRの総床面積の3%にするという上限の設定、現地住民への6,000円の入場料、そして検討されているジャンケット営業の禁止などによっても制限されるだろう。
デルタ・ステート・ホールディングスのデビッド・ボネット氏によると、そのような制限的な方針は、予想される巨額の開発費用にそぐわないという。その結果、「日本政府が法案に盛り込む予定をしている内容と、日本のメガバンクがプロジェクト資金融資を引き受けるのに必要とする条件の内容には大きな隔たりがあるために、現地の貸主から従来型の統合型リゾート抵当ローンによる資金を調達するのは難しいだろう」
ボネット氏は、この状況は事実、世界的な投資銀行にとっては大きな機会を生み出す可能性がある一方で、「構造は、我々が現在議論しているものとは異なるものである必要がある」と付け加えている。
資金調達に関する2つ目の問題は、政府が提案する5年間のライセンス期間に関連している。マカオの事業者に付与される20年ライセンスと比べた際の安心感の欠如を恐れる事業者たちは、必要なリタ ーンを達成するにあたり、困難がまた一つ増えるために、日本の銀行の大半が敬遠するだろう。
グローバル・マーケット・アドバイザーズ(GMA)のマネージングパートナー、スティーブ・ギャラウェイ氏は、「これによって、借入れは7年以上のリターンではなく、5年のリターンをベースにする必要があり、事業者が融資を確保するのが難しくなるだろう。
加えて、その5年間がカウントされ始めるのがライセンスを与えられた時点からなのか、開業した時点からなのかに関しての曖昧さもある。 これら多くの施設にとって、ライセンスを付与されてから開業までに5年以上の年数がかかる場合がある」と述べている。
まさにこの議題について話し合うJgCのパネルセッション中に、MGMのバウアー氏は、5年間という期間はすでに銀行から指摘を受けた問題であることを明かし、特に「その5年の部分を完全に収益化するのにどれだけのキャッシュフローがあるのか。また、それをどのようにして実現するかを真剣に考えなければならない。株式を増やす必要があるのか、それとも投資の縮小なのか、そしてライセンスを勝ち取るために入札をするという観点からそれが何を意味しているのか?この問題が資金調達の柔軟性を大幅に失わせている」と説明した。
モヒガン・ゲーミング&エンターテインメントのマリオ・コントメルコスCEOは、「さらに複雑さが増しており、実際みんなそれを予期していなかっただろう。我々が話しているプロジェクトの規模を考えて…5年間のライセンス期限というこのアイデアを重ねた時、それが意味しているのは、銀行はあるにはあるが、他のトランシェが求められる可能性が高いということだ。
そのリスクを快く取ってくれる投資家を見つける必要があり、日本の銀行がそれをしてくれるかどうかは定かではない」と話す。
GMAのギャラウェイ氏は、近い将来の日本のIR規制では、ライセンス期間の長さそしてカジノフロアスペースを測る方法、そして土地自体のリースについても明らかにされなければならない。
政府が今年、あらゆる事業者に対して期待するホテルの最小床面積は10万平米、MICEは6万平米と規定したことによって、日本で事業を行うための費用は日に日に大きくなっていくだけだ。