1991年にラスベガス初の女性市長となり新しい道を切り開いてきたジ ャン・ジョーンズ・ブラックハースト氏は、シーザーズ・エンターテインメント・グループの公共政策および企業責任部門の副社長として今もなお時代の最先端を歩み続けている。IAGは日本で最近行われたWOMAN EXPO TOKYO 2019でブラックハースト氏に近況を伺い、ゲーミング業界における性別多様性の重要性について話を聞いた。
ベン・ブラシュク: なぜ多様性がそれほど重要なのでしょうか?
ジャン・ジョーンズ・ブラックハースト: 業績が改善します。データでは、経営チームが多様性に富んでいるほど、より高い業績を達成できるということはっきりと示されています。収益、EBITDA、売上高の全てが増加します。予測ではありません。これは世界最大のビジネスデ ータ分析グループのいくつかによってまとめられたデータであり、組織の一番上の部分で多様性の利益を認識できなければ、事業の成功を制限することになるのです。
BB: ゲーミング会社で現在その地位を向上させ、リーダーの役職に就く女性の割合について数字は何を示していますか?
JJB: 数字は誤解を招くものです。ゲーミング業界はこう言うでしょう。
「労働者の50%が女性だ」ええ、そうでしょう。でも彼女たちは上級幹部ではありません。50%以上に増やしていないのであれば、50%が女性だからと高々と勝利を叫ぶのは少し行き過ぎです。人口の50%が女性ですから、50%いるのは当然です。
我々が本当の意味で2025年までに半々を達成すると決意した際に独自の調査から分かったのは、そう、役員及び部長レベルで42%が女性でした。しかしそれより上ではかなり低くなります。そういう変更を引き起こすには実施するプログラムに関して強い確信を持つ必要があります。なぜならそれは文化の問題だからです。それはどのように採用を行うのか、どのように昇進を支援するのか、どのように人事評価を行うのか、どのように才能ある女性を受け入れ、前に進ませるのかということです。男性がこのように言うのを耳にします。「彼女たちが私の職を奪う」。しかし、それはあなたの職ではありません。そしてその職には最も才能のある人物が就くべきなのです。
BB: どのようにして企業に深く根付いた文化を変化させるのですか?
JJB: 私たちが取った方法は非常に科学的なものでした。マッキンゼ ー社を雇いました。それには理由があります。彼らは全国にある全取締役会の中にいて、社内の言葉や文化を熟知しています。ですので言葉を正しくする必要があります。2つ目にCEOからの同意が必要で、それはマーク・フリッソーラCEOから取り付けました。彼が取り組みを支援してくれたことで組織全体へとメッセージが送られました。
その後均等委員会を立ち上げました。本社に一つ、西部管轄部門、南部、中西部、そして東部に一つずつ作りました。なぜなら問題は本社にいるか、または運営施設にいるのかによって変わってくるからです。
そして私たちは外に出て、2,000人の従業員への聞き取り、フォーカスグループを行いました。
委員会を作ってデータを収集した時点で、「これから3つの実験を行います、そしてその実験の中で構図が変化するかどうかを見るために異なるツールを使用します」と言いました。
そのツールの1つが求人でした。全員にどこが最も多様性に富んでいるかが分かるヒートマップを渡し、異なる昇進支援の取り組みを与え、職務記述書を手直しし始めていました。なぜなら、職務記述書を少しだけ女性寄りにすることで、突然その仕事がこれまでよりも興味深く見えることに気が付いたからです。
私たちはまた、まず上位300人のバイスプレジデントに対して無意識の偏見に関するトレーニングを実施しました。人は誰もが無意識の偏見を持っていますが、それを認識する必要があるからです。その後、そのトレーニングを組織全体で実施し始めました。
来年には、使用されたこれらの異なるツールがどのような影響を与えたかを確認する予定です。
コーポレート・ファイナンスは我々が行った別の実験の1つで、ラスベガスの2つの大規模施設、中西部のニューオーリンズ、そしてバルチモアの施設を使用して、より多様性に富んだ経営チームを取り上げて、彼らの業績を最も多様性の低い場所と比較しました。つまり、計測するだけではなく、皆に気づきを与えること、そして少し競争してもらうこと両方をし始めたのです。
BB: これまでにどのような影響がみられましたか?
JJB: まだ十分な期間実施していませんが、会話の流れでお話しすると、4%の違いが生まれました。
現在は、学士号や経営学修士号を持つ女性、弁護士資格を持つ女性が増えています。ですので、人材プールがないと言うことはできません。私たちに足りないのは、彼女たちが白人男性の同僚と同じスピ ード、同じ頻度で昇進することを許す文化なのです。そのような集団の話に踏み込むと状況はさらに悪化します。女性だけの問題ではありません。
女性を選んだ理由は、全集団を通じての多様性の重要度が低いと言うことではなく、動かしたり計測したりしやすい集団だからであり、もし女性のための昇進支援、雇用、指導を変化させているのであれば、多様性も同様に広がっていきます。
BB: 他の業界と比較してゲーミング業界はどのあたりに位置していますか?
JJB: 他よりも状況は悪いと思います。女性の割合は50%かもしれませんが、経営陣を見てください。全員が白人男性で、それをに気が付いてさえいません。
この問題に関してスピーチを行い、ある大手ゲーミング会社の上級幹部陣の写真を紹介しました。はっきりと、「この会社を非難しているわけではありません」と言いました。名前は出していませんので。ただし、「これはどのゲーミング会社の経営陣でもあり得る」と言いました。
聴衆の中にいた記者がそのCEOを知っていて、私が彼らを非難したとツイートしました。彼らからは停止通告書が届きましたので、私は面識のあったCEOに電話して「どうかしましたか?」と言いました。
彼は「記者が憤慨していて、全員が巻き込まれている」と言いました。
私はこう答えました。「あの写真は御社のウェブサイトにあるものです。非難されるのが嫌なら、載せないでください」
彼らには分からないのです。そしてどのゲーミング会社に行って幹部たちを見たとしても、確実にこれよりましなんてことはなく、おそらく少しひどいくらいかもしれません。
BB: 過去18カ月間、ウィン・リゾーツの状況を非常に近くで見てこられました。いかがでしたか?
JJB: 何というか、すごい…「完全に新しい取締役会」になりました。 取締役会の中でいくつかの変化が見られ、一部の州や国が女性の割合増加を求めています。しかし問題は、経営陣または取締役会のどちらかで少なくとも30%が必要なのです。取締役会や会話の中で男女の割合が少しでも均等に近い感じる女性が多くいない限り、彼女たちの口数は減る傾向にあります。でも30%か40%いると分かれば、自由に発言する傾向にあります。
BB: 日本に関してこの問題を見た時、どのような状況でしょうか?
JJB: 大きな機会があります。ゴールドマンサックスが出した安倍晋三首相のウーマノミクスに関するレポートを読みました。日本は女性の71%が働いていると言います。それは事実です。しかしアメリカや世界の他の場所と同じ問題がここにも存在します。彼女たちのほとんどが低層にいるのです。上の層へ行くほど、彼女たちの姿はほとんど見当たりません。
でも、労働者数が減少する中で、日本が前進するために最も活用できる人材プールは女性です。ですので、IRは労働環境で実際に女性を雇用して昇進させるための大きな機会だと思います。
レポートは、均等に近い割合に達することができれば、日本のGDPに10%の増加を作り出すとしています。それを勤務時間のOECD平均に換算すると15%になるでしょう。
非常に大きな数字です。アメリカで給料を均等にするだけで、GDPにさらに12兆ドルを貢献することになります。世界で見ると38兆ドルになります。この問題を直ちに解決する方法を探さないのは、あまりにビジネス下手で、古い考え方です。鈍いと言う以外に言い訳が見つかりません。
BB: 多様な企業文化を作ると言う点では確立されたものを変化させるよりも新しい会社や産業を開発する方が簡単ですか?
JJB: もちろん。一から築き上げているので、人材を探す方法、その人材のバランスをどうするのか、どのように小さなビジネスに仕事を提供するのか、そのうちのいくつが女性が所有するビジネスなのかに関して非常に科学的になることができます。一から築き上げていくのと、6万人もの人の文化を変えようとするのは全く異なります。
BB: 1991年にラスベガス初の女性市長になって、1999年まで8年間その役職を務められました。ガラスの天井を壊すことで女性にと って違いを生み出したと感じますか?
JJB: 生み出したことが分かっています。ある女性から6カ月ほど前に手紙を受け取り、そこにはこう書かれていました。「娘が3年生の頃、教室にいらっしゃって、子供たちに何になりたいかと尋ねられました。娘は医者になりたいと言い、全員がそれを笑いました。あなたはこうおっしゃいました。『彼らに耳を貸さないで。もしあなたが医者になりたいのなら、情熱を見つけて、外に出てそれをつかみ取 って』娘がつい最近医学部を卒業したことをお伝えするためにこの手紙を書いています」
その時には気づかずに影響を与えている人というのがたくさんいるのです。今なお「あなたはこれからもずっと私たちの市長です」と言ってくれる人がいます。なぜなら街が成長する中で非常に重要な時期だったからです。全員がラスベガスを歓楽都市として見ていたのに、突然この巨大観光地になりました。
現在ラスベガスの行政では非常に多くの女性が活躍しています。なぜなら彼女たちはそれを率いることができた人物を見たことがあるからです。
