仁坂知事は大阪IRとの相乗効果に期待しており、Inside Asian Gamingに、和歌山にはすぐに着工できる海辺の土地があると説明する
2006年に和歌山県知事に選ばれる前には、仁坂吉伸氏は約30年間日本の経済産業省とその前身である通商産業省で務めていた。90年代初頭に経済が停滞し始めて以来日本に訪れた最高の成長機会の中で、経済発展セクターでキャリアの全てを過ごした仁坂氏が、統合型リゾートを先頭に立って推進することは少しも不思議ではない。
また、1950年に和歌山市で生まれた仁坂氏が、自分の故郷にIRを誘致したいと考えるのも至極当然のことだ。和歌山県は、地方と呼ばれる他の地域同様、ビジネスや住民、特に若い人材の大都市への流出を長年経験してきた。日本で3番目に大きな都市であり、2,200万人以上の人口を抱える関西地方の中心である大阪は、和歌山からたった1時間ほどの距離にある。
仁坂氏は3年間駐ブルネイ大使も務めたが、外交官としてしての経歴が知事の率直な物言いに影響することはない。2017年、仁坂氏はInside Asian Gamingに対して和歌山のカジノを外国人専用にすべきだと宣言したことでニュースに取り上げられた。しかし今はもうその考えは持っていない。11月に4選を果たした仁坂知事は、IAGの総合編集長、ムハンマド・コーエンによる最新のインタビューで、通訳者を通じて自身の考えを包み隠さず語ってくれた。
ムハンマド・コーエン(MC): 地域型IRにとって和歌山が正しい選択となる理由は何ですか?
仁坂吉伸知事(GYN): 私というよりも、世界中でIRをやっている業者さんが4つのポイントをあげています。和歌山は関空に大変近く、大阪市よりも近いですからね。その点において大変よろしいというのが1つあります。
2つ目はですね、和歌山も、京阪神地方の人口が多い地域の一部だというところです。(関西の人口は)首都圏に次いで多いですから。
3つ目に、我々がIRの候補地と考えている和歌山マリーナシティですけれども、もう完成していて、インフラもちゃんと整っています。埋立地ですけども、25年たってる。そういう地域ですから、今すぐにでも建設が始められます。他の候補地はまだこれからインフラを整えなければいけない、埋め立てしなければいけないとなっているけど、和歌山県はもうすでにできあがっています。
4つ目にですね、この和歌山マリーナシティというのは、実は西日本有数のヨットハーバーなんです。しかも、ここはマリンスポーツのナショナルトレーニングセンターでもあります。オリンピック選手の強化地域であるとともに、ハイスクールの全国大会は全部ここで行われるというくらいマリンスポーツが盛んなんですね。レジャー型とかマリンスポーツとからめてとか、そういう意味では非常に便利だと思います。
その他ですね、和歌山県はずっと準備をしてきました。政治行政は安定していますから、支障は全くありません。
MC: 和歌山のIRは大阪のIRと共存できますか?
GYN: 多くのIR業者さんに初めてお会いするときに、いつもあえて私から質問をしていました。大阪にIRができたら、あなたは和歌山へはもう来ませんか?と。その答えはいつも同じでした。大阪にIRができることは喜ばしいことだと。IRが近いところに2つ以上あると、相乗効果でお互いそれぞれのIRが流行ると言うのが、業者さんの意見でした。
ヨーロッパなんかは、あっちこっちの街にたくさんカジノがあります。我々がモデルにしているようなシンガポールにおいては、ものすごく近いところに2つ巨大なIRがあって、両方とも栄えています。
また、大阪と和歌山は、やはり若干の違いがあると思います。和歌山はレジャー型のIRになると思うし、大阪はシティー型のIRになると思います。それはまさに、シンガポールのマリーナベイサンズとセントーサリゾートとそっくりですね。
それから、ありとあらゆる(日本の)権威のある情報で、近いところに2つ作ってはいけません、というのはありません。法律にはそんなことは書いていませんし、国会の中でもそんな議論はありません。政府のトップの発言でも別に近くても良いですよというようなことばかりが発見できるわけで、ネガティブな話はひとつもありません。
MC: 政府が実際に地方にライセンスを発行することについてはどれくらいの確信を持っていますか?
GYN: ご存知の通り、確実に現在IRを熱心に推進しているところは、そんなに多くありません。
まず大きさから言うと、和歌山はたぶん2番目に大きいものができると思います。
それはなぜかというと、関空という非常に大きな空港が近くにあるということ、それから大人口密集地があるからです。他のところは、どことは申しませんがこんなに恵まれているところはありません。だから、小さいものしかできない。
それと、確実性という点では和歌山は断トツトップだと思います。それはなぜかというと、土地は完全に出来上がっていて、今すぐにでも建物を建てられますから。こういうところは日本中に和歌山しかありません。
特に、政府の選択においては、今のスケールと確実性が大変重視されると思いますので、そういう意味では和歌山は有望だと私は思います。
MC: 和歌山IRが経済的に成功するという自信はありますか?
GYN: 我々は、昨年2回にわたって、IR開発の基本構想とその改訂版を出しました。その中で、有名なコンサルタント会社のデロイトトーマツに色々な見通しを立ててもらいました。それによると、和歌山にIRができたときは、投資額が2,800億円くらいで、年間の経済波及効果が年間3,000億円くらいでしょうという風に言われました。
和歌山は大きな県ではありませんので、もともとの現在の年間総所得が3兆5,000億円なんですね。そういう意味では1割弱、県民所得があがるということになります。
和歌山の経済発展のために大事なことだということです。だからこそ和歌山県でのIR開発を一生懸命推進しているわけです。
MC: 日本企業でIRへの関心を表明している会社は他にありますか?それらの会社はどういった役割を持っていると思いますか?
GYN: 大変多くの日本企業が和歌山と関西地方でのIR開発に関心を持 ってくれていると思います。
その中にはオールジャパンのあるいは関西の代表的な大きな企業、力のある大きな企業もあると思うし、そして和歌山のローカルの企業もあると思う。
我々はやっぱりオペレーターを選んで、資金繰りがきちんとできるかどうかを確かめなければなりません。
オペレーター1社でも、ちゃんとファイナンスができてないと危なくてやれないということになります。あと、これはダメっていうのは、日本の企業あるいはローカルの企業が、「お金をたくさん出してくれたら、私はオペレーターとして事業をしてもいい」という場合ですね。 こういうのは対象になりません。
我々は政府のレギュレーションの詳細が発表されたら、それに従ってデュープロセスで一番ふさわしい企業を1社選びます。
MC: それは今年ということでしょうか?
GYN: 我々はいつ決めてもいいんですが、政府の詳細レギュレーションが完成するまで手続きをスタートするわけにはいきません。
今の感じだと、政府がどの地域にライセンスを与えるかを決定するまでには最短で2年半くらいかかると思います。
MC: 和歌山がIRライセンスを勝ち取れるかどうかについての自信のほどは?
GYN: 客観的に考えて和歌山のIRは絶対に確実だと私は確信しています。政府もそれを評価してくれるはずだと確信しています。これは大丈夫だと思って、一生懸命やっているわけです。