ネパール当局は、カジノおよびIR業界を含むアジアでの投資ブームにうまく乗るために自国の状況改善に努めている
2018年、約120万人の観光客がネパールを訪れた。これは前年から25%の増加を示している。その中の20万人が、カジノでのギャンブルが制限されているインド(ゴアがインドのカジノ全体の約95%を占めている)から、そして15万人が合法カジノのない中国大陸からの訪問客だった。
中国に対する越境カジノ戦略によって、マカオは今日のようにギャンブルで成功することができた。1994年当時、マカオを訪れる中国大陸からの観光客数は、現在のネパールと同程度であった。その年のマカオのゲーミング粗収益は19億米ドルであったが、2001年のカジノ業界の自由化後には、すぐにラスベガスに追い付き、追い越すことになった。
では、さらなるカジノおよび統合型リゾート開発に関するネパールの将来性はどうだろうか? もちろん、この土地の簡単な環境/SWOT分析によって、過去数年間の政情不安や最近の自然災害に伴う混乱が引き起こした、インフラ、そしてカジノおよび観光公共政策両方の主な不足点を特定することができるだろう。しかしネパールはマカオとの間に重要な共通の特徴を持っている。
まず初めに、ネパールは、インドと中国に広く陸で国境を接している。この2国は、世界最大かつ最速で成長する経済大国であり、国民が持つ富と可処分所得は莫大かつ今も増加し続けている。マカオとシンガポールのカジノ業界は、中国とインドにおけるカジノギャンブルの機会の不足によって大きな利益を得てきた。間もなくネパールに順番が回ってくるかもしれない。
そのように言う根拠は?私はネパール政府からの招待を受けて、3月にネパール投資サミット2019で講演を行った。サミットでは他に、ネパールのK.P.シャルマ・オリ首相、副首相、そして複数の大臣がスピーチを行 った。空港、高速鉄道、道路・トンネルの建設などのインフラや外国投資の素晴らしい計画を見せてもらった。政府は、プライベートセクターからの投資による複数の観光および統合型プロジェクトも展示していた。
IR中心地から独立型のIR開発までの全てが議題に上がっていた。現在政情は安定しており、政府は海外投資や合弁事業に開かれているという当局からのメッセージは明らかだった。銀行の頭取が一人ずつ、投資家に対して利得の可能性や投資回収の保証を伝えていた。
講演者兼パネリストの一人に、インド国境近くにあるネパール初のIR、タイガー パレス リゾート バイラワを所有・運営するシルバー・ヘリテージ・グループのマイク・ボルソーバーCEOがいた。タイガー・パレスは最近、豪華なプレミアムマスエリアとVIPエリアをオープンさせた。
主要インフラの整備の他に私は、ネパールに最も適した堅実な観光基本計画とカジノ政策の重要性を強調した。同時に、マカオ、シンガポール、マレーシア、そして日本はそれを発展、適応させてきており、確実に自らのカジノ規制の枠組みから現在も学んでいることを説明した。ネパールは、自国のIR開発に対する投資家の信用向上に努めることの重要性を理解しながら、継続して未熟なカジノ法制を変化させていく。
また、ネパール全土には小規模で限定的な娯楽設備をもつカジノ施設が複数ある。ネパールの2013年版カジノ規制の曖昧さが引き合いに出され、ネパール政府は今後まとめられる2018年版の新カジノ法を強力に押し進めている。 2013年7月に「カジノ規定2070(Casino Rules 2070)」が議会を通過し、官報で発表された。その中で、年間30万米ドル(現在は40万米ドルに引き上げ)の「カジノロイヤリティ(実施料)」、10万米ドルの初期カジノライセンス料、そして10万ドルの年間更新料の支払いが義務付けられており、現在、開業には60万米ドルの費用がかかることになる。
ネパールの課税年度は7月17日から始まる。以前あったカジノ税とロイヤリティの徴収の曖昧さによって最高裁での法廷闘争を引き起こす結果となったが、新法を通過させることへの断固とした姿勢は将来的なIR開発の可能性をさらに高めている。
ネパールには、2020年までに訪問客を200万人にするというビジョンがあり、中国とインドは2大主要マーケットとなっている。IRは今やアジアでは一般的であり、ネパールが持つ経済と観光の大きな可能性の証である。
ネパールでの投資と法規制の状況は現在変化しつつあり、そしてもしネパールが現在の経済情勢で前進し続け、様々なインフラ計画を本格的に展開できるなら、さらなるIRの拡大のための魅力的な環境を提供することができる。
*ネパール訪問中、同国のカジノ規制、政府構造についてご教示くださり、カジノおよびIRのインサイトを提供してくださったマイク・ボルソーバー氏とマドゥカル・タパ氏に感謝致します。