お金や家といった本質的な価値を持つ物の所有権の話になると、当事者間の信頼というのは高くつく。だからこそ、会計士や弁護士のような専門家にお金を支払って、台帳を作成してもらうのだ。 何かの所有権を決めたいまたは所有権の移動を完了させる必要があるとき、こういった専門家に相談し、自分たちのために記録を書き換えてもらう。 これは高い費用を伴い、時間のかかる手続きだ。
インターネット時代には、信頼性が高く、変更不可能な方法で所有権を記録するより単純な方法が存在する。この方法が「ブロックチェーン」と呼ばれるものだ。
コンセプトは非常に単純で、所有権は、インターネットまたはイントラネット上でデータの塊(故に「ブロック」)の中に記録される。このデータの塊は、暗号化原理を使用しながらお互いが結合している(故に「チェーン」)ために、変更できないものになっている。 データが全員の同意を得ていることをより確実なものにするために、そのネットワークにいる全員が同じブロック群を同時に記録する。 ハッカーが一度にかつ同時にネットワーク上の全てのコンピューターをハッキングしない限りは、データは守られており、権限のない人物は書き換えることができない。
ビットコインはブロックチェーン技術に支えられた最も有名な製品だ。ビットコインについては、単にインターネット上にあるデジタルの「 ビット」と考えることができる。 その全てが完全に同じもので、各「ビット」は、コードに書きこまれたルールに従って、「早いもの勝ち」で定期的に所有者へと割り当てられる。その所有者が、よく耳にする「マイナ ー(採掘者)」であり、自分の時間を費やしてこれらのビットを検証可能なものにするための数式を解いた人物となる。「ビット」の所有者は、自分が所有する「ビット」をいつ、どこに送るかを決定することができる。ち ょうど、銀行口座を使ってお金を出し入れするのと同じように。
現在あるいわゆる暗号通貨の大半は、台帳がネットワーク・コンピ ューターの異なるグループによって管理されていること以外は、ほぼ同じ方法で機能している。 これが第1世代のブロックチェーン技術だ。
2017年12月、カナダのテクノロジー企業、アクシオム・ゼン(Axiom Zen)が、「CryptoKitties」という製品の立ち上げに成功し、ブロックチェ ーン技術を新時代へと突入させた。「CryptoKitties」はインターネット上に住むデジタルペットで、所有権を取引することができる。 これは、ブロックチェーンが単なる「ビット」以上のもの記録するために使用されてきた初めてのケースとなる。事実、これは「ビット」以上のものを含んだフルデジタル画像である(テクノロジーに精通した読者の中には私の表現に納得できない人もいるだろう)。
6カ月前、ソニー・ミュージック・エンターテインメントとソニー・グロ ーバル・エデュケーションも、自社のデジタルコンテンツのデータ認証、共有、権利管理で同様のコンセプトの開発を発表した。 この技術が成熟すれば、近い将来、ブロックチェーン上に「住む」ゲーミングアバターやデジタルミュージックなどのデジタルコンテンツがさらに増えると予測することができる。
ブロックチェーンの中核をなす価値というのは、当事者間の信頼の自動化だ。この技術では、検証を行う誰かが間に入ることなく、参加者同士が直接やり取りすることができるために、所有権および身元の確認に求められる業務上の摩擦を大幅に削減することができる。
最も重要なのは、この技術がインターネット上に新しい資産クラスを作り出すことができるということで、これらの資産は高速かつ自由な移動によく適合している。ビットコインはブロックチェーンに支えられた最も有名な製品だ。
テクノロジーの進化と共に、この製品は、ビットコイン(単純な通貨)だけでなく、音楽作品、本、デジタルアート作品、さらにはフルサイズHD動画までもをはるかに超えるものになる可能性を秘めている。これら新たに使用可能となった資産は、金融や商品の流通管理から、インタ ーネットシェアリングエコノミーまで、インターネット上でビジネスがどう行われるかに影響を与えることになるだろう。