ギャラクシー・エンターテインメント・グループの副会長、フランシス・ルイ氏が珠江デルタ、再入札、ボラカイ、横琴、その他様々な内容について率直な意見を聞かせてくれた。
「私は非常に情熱的な人間です…自分のことを完璧主義者だと思います」ギャラクシー・エンターテインメント・グループ副会長のフランシス・ルイ氏は自らをそう語る。「やること全てにおいて、最高を目指したい。これが私の情熱、エネルギーレベル、それが精神に活力を与え、その結果としてここにいるチームメンバーが共鳴してくれることを願っています」
父である89歳の会長、呂志和(ルイ・チーウー)氏の下でギャラクシ ーを率いるルイ氏が珍しく、IAGの総合編集長、ムハンマド・コーエンのインタビューに答えてくれた。
ムハンマド・コーエン:珠江デルタのさらなる統合が今後マカオにどのような利益をもたらすとお考えですか?
フランシス・ルイ:広東省は過去20年から30年の間中国で最も豊かな地域でした。インフラとアクセシビリティの向上によって、人々はマカオをより近く感じるようになり、楽しむことが出来るでしょう。同時に「一国二制度」の中にあるマカオはゲーミングが許可された唯一の都市です。マカオには、この地域の世界的な観光とレジャーの中心地であるという点において常にこのアドバンテージがあると感じていました。その気持ちが、マカオが観光とレジャーの世界的なハブであるべきだと位置づけた政府の考えとこれまで一致してきたのです。
中央政府がマカオにどうなってほしいと考えているかを理解することによって、我々はインフラの改善で遅かれ早かれそれを実現できるチ ャンスがあると考えています。
MC:より広い範囲の統合における潜在的なマイナス面はありますか?
FL:いくつかの懸念が考えられるでしょう。マカオに来て事業をしたいという才能、人間、資本が増えます。
全てのチャンスが成功すると考えている一方で、同時に当社の従業員、当社の若い人材が競争環境が迫ってくることを確実に理解している必要があります。彼らは、よりオープンな経済で競い合えるよう、より深い知識、より確固たる決意、より大きな情熱を備えておかなければならないでしょう。
MC:ギャラクシーが成長を続けるために、マカオの外へと拡大する必要はありますか?
FL:マカオは常に統合型リゾート界の中心地であり続けると思います。
「一国二制度」、そしてマカオがゲーミングを唯一許可された都市であり、中国の人口が13億、そしてそれが増え続けているという状況の下で、我々は将来的に成功するための非常に独特な位置につけています。長期的にマカオが大成功するということに関しては自信があります。
その挑戦は、マカオをより良くし、政府や人々が求めるものと歩調を合わせていくために、事業者として我々に何ができるかにかかっています。いつも言っていることですが、今後は単なるゲーミングハブではなく、ゲーミングだけに依存しない多様化した統合型リゾートハブとして売り込んでいく必要があります。成長していくためには、エンターテイメント、飲食店、小売店舗、会議施設のような極めて重要かつ多様な他のビジネスに頼っていかなければなりません。
ギャラクシーを含む我々全員が、自分たちの役割を果たしていると感じていますし、過去19年間でマカオを以前とは非常に異なる場所に作り上げた成果が見られます。そのコミットメントがあれば、マカオは素晴らしい場所であり続けるでしょう。同時に、他の国々もまた、マカオで見た成功によって、ゲーミング産業を使って観光業を引っ張ることが出来ると認識してきています。
シンガポールに始まり、その他の東南アジア諸国も同じ方法論を使 って、ゲーミングによりさらなる観光を推進しています。そして今、日本がその扉を開こうとしています。世界第3位の経済大国で、1億3千万人の洗練されたハイエンドの客を持つ日本ですから、この産業が大きな成功を収めることは、考えなくても分かることだと思っていました。
同時に、中国人客が今後はるかに洗練された顧客集団へと進化していくとも感じています。日本人はこちらを訪れたい、そして反対に中国人はあちらを訪れたいという交流が確実に起こるでしょう。この地域で自分たちの存在感を維持したければ、地域型開発での役目を果たし続けることができるよう、マカオの外にも拡大していく必要があると感じています。
我々は、マカオ外への拡大に強い決意を持っています。しかし同時にマカオは常に我々の生誕の地であり、今後も成長を続け、より良くなっていく場所でもあります。
MC:SBMとのパートナーシップの背景にはギャラクシーにどのような意図があるのでしょうか?
FL:これはウィン – ウィンの関係だと考えています。なぜならモンテカルロSBMは自分たちのブランドを再活性化したいと考えていたからです。
モンテカルロは150年前にできた初の統合型リゾートですが、どういうわけかそれ以来その魅力はラスベガス、マカオ、シンガポールなどに奪われてきました。ですので、殿下(モナコのアルベール2世大公)はモナコのブランドを活性化するために何か行動を起こす時期だと感じておられ、アジアマーケットを詳しく観察されていたのだと思います。
同時に、我々は日本マーケットを観察していました。日本を理解すればするほど、日本とヨーロッパの文化が非常に似ていると感じるようになりました。洗練されたものを好み、質の高いもの、非常にエレガントなものが愛されています。それこそ、ヨーロッパでパートナーを見つけることができれば、日本での貴重なライセンス獲得のチャンスが増えると感じていた理由です。
MC:ウィン・リゾーツの株式の4.9%保有するというもう一つのパートナ ーシップについてはいかがですか?
FL:あれは日和見主義的なものでした。彼らの株式の一部が売りに出されていた時、大きな成功を収めているゲーミング企業の株を買うという機会を逃しはしませんでした。受動的投資として購入しました。現時点では、(非常に)初期の段階ですので、会社のことをよく知り、彼らが何をしているのかを理解することが重要です。
MC:ギャラクシーはアメリカでのプレゼンスを必要としていますか?
FL:いいえ。時価総額で言うと、我々はすでに世界で2番目に大きな(ゲ ーミング)企業であり、それを15年間という短期間で築き上げました。すでにとても安定した能力の高い経営陣を有していると感じており、今ある実行能力、そして財政的なものも含めて、その力をもってすれば、いかなるチャンスにも挑戦していけると、非常に自信を持っています。
MC:ギャラクシーをアメリカの株式市場に上場させるというのは?
FL:それは現時点では考えていません。
MC:日本にとってギャラクシーをベストチョイスにさせるものは?
FL:アジア最高峰、そしてヨーロッパ最高峰を日本に持ち込むことだと考えています。もし力のある日本のパートナー企業を見つけることもできれば、我々がその3つの世界の最高峰を同時に披露できるということを日本政府や日本の皆様に納得いただけると思います。それについては自信を持っています。加えて、当社はマカオ最大です。日本は2030年までに6000万人の訪問客を呼び込むビジョンを持っていて、多くのアジアからの客を招致したいと思っている中で、我々はその役割を果たすこともできます。
MC:コンセッションの再入札後、マカオはどのようになるでしょうか?
FL:確実にさらに多様化した方向へと進んでいくでしょう。マカオを真の多様化した都市にするという政府のビジョンを我々がサポートできると政府に納得してもらうことについては我々次第です。地域の人々が何を求めているかも(サポートしたい)です。ですので、例えばマカオと中小企業とのパートナーシップは重要なのです。ギャラクシーは、実際に中小企業にアプローチしてパートナーを組んだ初のゲーミング事業者です。
2013年にブロードウェイマカオを買収した時、すでにブロードウェイをよりマカオ的なものにしていきたいというビジョンを持っていました。現地のブランドと提携して出店してもらえるようなフードストリートを作り、その結果として彼らも事業を拡大することができるというものです。当時、マカオにある大半の飲食店ブランドは小規模のファミリーブランドでした。彼らに働き掛けて、彼らが参加しやすくなるよう、レクチ ャーし、より良い条件を提示し、財政的に支援するなど、できることをしなければなりませんでした。
多くの人が懐疑心を持っていたために、当初これは容易な作業ではありませんでした。彼らに言われたのは、「こんなにも大きな会社が来て、自分たちを食い尽くす気なんだろう」というものでした。「違う」と答えました。「違います、あなた方と提携することでお金を儲けようとはしていません。そうではなくて、あなたたちが本物で、マカオとは何なのかというのを本当に象徴する存在なのです」と伝えました。最終的に我々は成功し、それが本当に全ての始まりとなり、政府も後押ししてくれました。我々は中小企業と提携し、今や多くの人たちが同じことをしています。しかし我々が最初だったのです。
将来的にはコミュニティとの提携、そして彼らのケアをさらにしていく必要があると感じています。例えばより多くのCSR活動を行うといったような。繰り返しになりますが、我々は早い段階でコミュニティのために活動を行うボランティアグループを作った企業のうちの1社だったのです。当社は、地元の人々、特に若い人たちが事業を起こしたり、彼らが継続的に教育を受けるのを支援するために13億香港ドルの基金を設立しました。 私たちは、この社会の一員としてさらに認められたいと考え、そして確実に社会にコミットしているのです。
MC:再入札にあたって増税や規制強化はあると思いますか?
FL:おそらく政府は、入札プロセスで自分たちの要求をもう少し定量化、かつ明確化したいのだと思います。それは想定内です。
MC:マカオにとって最大の脅威とは何だとお考えですか?
FL:何よりもまず、地域間の競争です。非常に多くの国々が、我々の例に倣ってビジネス、経済、観光業を改善するための媒体としてゲーミングを使っており、確実に競争力を維持するために自社のサービスを強化し洗練させていく必要があります。私にとっては、それは単なる成長というものではなく、洗練させていかなければならないのです。時別なサ ービスでなければなりません。
他国が何をしているかを見てみるといいでしょう。日本のゲーミング業界が姿を現す中で、我々よりも北京や上海に近い非常に強力な競争相手となるのは確実です。我々が、規模を大きくし、より強く、多様化していきたいと思う一方で、私が感じているここでのもう一つの課題は人材です。原動力となる人材というのが、政府やコミュニティーとの間で合意に至る必要がある点です。それをどうやって一緒に行うのか?
政府やコニュニティーは特定の産業が守られているということを確実にしたいと考えています。我々はそれを理解し、サポートします。しかし同時に、自分たちに向けて問わなければならないのです。それを確実にしながら、同時に競争力を失わないようにするにはどうすればいいのか?我々は多くのトレーニングを提供しています。そして実際に地元の人々に昇進の機会を優先的に与えるプログラムも持っています。
それら全てを行いながらも、同時に、それでも現実的になる必要があり、今後はマカオが我々6社の中だけで戦っているのではないと言わなければならないのです。この地域以外の競争相手とも戦っており、それこそが我々がコミュニティの理解と共感を得たいと考えている点です。今後も政府や地元の人々との話し合いを続け、我々が成功するためには彼らの支援が必要だということを理解してもらいたいと思います。我々はここでは最大の納税者であり、これがマカオにある最大の産業なのです。この業界が好調であり続け、より強く成長していくことを確実にしていかなければなりません。
MC:多くの人が、ギャラクシーは、ここの政府、そして中国政府がマカオに期待しているものに最も適合しているようだと言っています。
FL:我々はコンセッション保有者であることをうれしく思っています。結局のところ、政府や人々が我々に期待していることをする必要があり、だからこそコンセッション保有者であり続けるのです。
MC:政府が求めていることがどうして分かるのですか?
FL:コミュニケーションが大きな役割を果たしています。パーティーやイベントなどで政府関係者と席を共にする機会が常にあります。また、新聞を読み、会議に出たり、等々。ですので政府や人々が求めていることを知る機会はいくらでもあるのです。今何が起こっているかについて常にアンテナを立て、確実に歩調を合わせ続けていかなければなりません。
MC:ボラカイでのギャラクシーのプロジェクトについてはどうですか?
FL:我々が挑戦してみたい新しいコンセプトです。顧客は十分に洗練されていて太陽や海を愛することができると感じました。彼らは代わりとなる目的地を求めており、ボラカイは完璧な場所だと思います。ギャラクシーをボラカイに持っていくことは考えていません。そうではなく、我 々は、密度の低い環境にやさしいリゾート、ビーチリゾートをボラカイに持っていくつもりです。これには大きな違いがあります。
MC:プロジェクトについてはもっと明確になっているのですか?
FL:それはまだです。まだパートナーを通じてコミュニケーションを取っているところです。まだ、現地の人々に誤解があることを理解してもらいたいと思っている段階です。真実が伝わり、我々のプロジェクトがどういったコンセプトで、彼らが想像しているような大きなプロジェクトにならないかという事を理解してもらえれば、これがボラカイがかつて持っていたブランド力を活性化させるのに必要な種類のプロジェクトだと分かってもらえると確信しています。ボラカイは常に世界トップ5に入るビーチリゾートの一つであり、我々は本当にその一部になりたい、そして我々はそこを確実に以前のような地位に押し戻していきたいと思っています。
MC:リゾートに十分な数の観光客を空輸する手段については心配していませんか?
FL:現時点で、我々の計画はたった100ほどのヴィラです。ロジスティックスについてはそこまで心配することではないと思っています。密度の低い、100のヴィラを持つビーチリゾートになります。
MC:もう一つのリゾートのお話を聞かせてください。プロジェクトは横琴ですか?
FL:はい、横琴です。長期的に非常に楽観視はしていますが、(成立させるべき)特定の政策がいくつかあります。大珠江デルタについて話し合 っています。本当に、横琴とマカオは両岸が相互交流を推進すべき場所です。今の移民政策は、我々の顧客がマカオから横琴に行くと、ビザがないために戻ってこれないようになっています。
これは、横琴が今後さらにマカオと統合していく前に実施されるべき国家政策です。これに関してはこれからも政府との話し合いを続けていきたいと思います。実現するとは思いますので、あとはタイミングの問題です。横琴に建設を予定しているものが、現在われわれがマカオに持っているものを確実に補完できるよう、計画を進めていきたいと思います。その間、政策が導入されるのを待ちたいと思います。
MC:ギャラクシーがリゾートを始めるために、横琴とマカオの間の容易な移動が承認される必要がありますか?
FL:当然それは関連しています。なぜなら客が往来できる政策無しでは、すぐにプロジェクトを始めることは困難だからです。