最終評価の前に長崎IR事業者選定からの辞退を迫られたという2者の事業者の発表を受けて、長崎県は、県が行った統合型リゾート誘致に向けてのRFP(事業者選定)プロセスは「世界最高基準」に基づいて行っていることを改めて強調した。
先週8月19日(木)にIAGが伝えた通り、NIKI Chyau Fwu (Parkview) Group(以下NIKI)とOshidori International Development 合同会社(以下オシドリ)の両者は、長崎県から「廉潔性調査(背面調査)の結果に問題がある」とされ、またカジノオーストリアが優先交渉権者と発表された8月10日以前に辞退を迫られたと主張している。
IAGは先週、選ばれなかった2者が懸念事項として発表した内容に関して、長崎県に9つの質問を送っていた。長崎県の回答は以下の通りであり、一切編集は入れずに掲載する。(*質問及び回答は一部を除き英語が原文。日本語訳はIAGによるもの)
IAG: オシドリの「大村湾の帆」をコンセプトにした提案は、選ばれた事業者のものよりも大きく優れているように見える。また選ばれなかった2者が提案したものには他にも重要な点があるように見える。なぜオシドリやNIKIではなくカジノオーストリアが選ばれたのか?
長崎県:8月10日の記者会見でも発表した通り、カジノオーストリアインターナショナルジャパンは、5大項目の総合評価に基づいて選定された。具体的には、1)コンセプト、2)設備整備方針[IAG:各事業者が提案した内容の実現性に関連するものと考える]、3)財務・運営実績、4)懸念事項対策[IAG:ギャンブル依存症、セキュリティと安全性、統合型リゾート内での犯罪行為排除などと考える]、5)地域還元である。
審査委員会の審査と廉潔性調査は独立しているため、審査委員には採点に当たり廉潔性調査結果は開示せず、客観的で公平・公正な審査を確保するという観点に鑑み、純粋に提案内容の良し悪し等について審議頂いた。
評価結果については、選定事業者は、現在、世界で事業展開をしている経験に基づく事業実現の蓋然性、実現可能性が評価された。
[IAG:ここで言われている選定事業者とはカジノオーストリアを指す]
CAIJ(カジノオーストリア)は採点結果に示されているとおり、懸念事項への取組みの評価が高かった。残りの2社についても、それぞれのノウハウや特徴に基づく提案がなされている。
IAG:IR事業者選定においてカジノオーストリアが優先交渉権者に選ばれた件をプレスリリースで発表したもの及び提案内容の画像を削除したのは長崎県から指示があったのか?
長崎県:県から公募参加者へプレスリリースの削除を指示したことはない。
[IAG:これが事実であれば、カジノオーストリア自身がウェブサイト上で見ることができた提案の完成予想図の削除を決めたこととなる。プレスリリースは様々なメディアによって広く世界中に発信された]
IAG:なぜ長崎県はカジノオーストリアとNIKIのコンセプト完成予想図を公表しないのか?公表することによって長崎県の皆さんが見て、意見することが可能になるのではないか?
長崎県:IR事業者選定はまだ完了していないため、県からそのような情報について開示することはできない。

IAG:なぜ長崎県はカジノオーストリアとNIKIに対して、完成予想図を公表しないように指示したのか?
長崎県:個々の公募参加者とのやり取りが開示される予定はない。しかしながら、全ての公募参加者は事業者募集要項の規定に基づいた行動をとる必要がある。
IAG:なぜ長崎県はオシドリとNIKIに対してプレゼンテーション直前に審査委員の前で辞退することを迫ったのか?なぜ長崎県は審査委員に1者だけのプレゼンテーションを見せたかったのか?
長崎県:県はどの公募参加者に対してもRFPからの辞退を求めたことはない。プレゼンテーションの意図を説明すると、プレゼンテーションは、事前に提出された最終提案に基づいて行われた評価全体の一部である。
IAG:2者の廉潔性調査において問題があるとなったことが事実である場合、長崎県は情報をオシドリとNIKIに開示し、彼らが自身を擁護する機会を与えるか?
長崎県:廉潔性調査については、結果の詳細や結果に関する一切のやり取りについて開示する予定はない。情報は機微にかかわるものであり、開示されるべきものではない。
長崎県のIR事業者募集要項は、国が「クリーンなカジノを実現するため、世界最高水準のカジノ規制を導入する(2017年4月4日安部総理大臣(当時)」としており、県もそれに対応して募集要項をさだめている。すべての公募参加者は同じ条件、基準、書類で調査されている。
県は募集要項に従って廉潔性調査を完了した上で、優先交渉権者を選定している。今後、議会、国に対しては、優先交渉権者の廉潔性について、必要な説明を行っていく。
廉潔性にかかる世界的な調査が可能な、実績と信頼のある調査会社に委託しており、業界の標準的な調査手法に則って調査を実施している。契約上、調査会社の名称や選定の経緯の詳細に係る説明をすることはできない。
廉潔性調査の結果は、調査対象となった個人や企業の機微にかかわる情報を含むものであり、また、調査会社との契約において厳格な開示制限があるため、どの応募者に関しても、当該結果関する一般的な公表を行うことは予定していない。ただし、すべての公募参加者は同じ基準で調査されており、IR整備法の基づき評価基準も国際市場における最高レベルの標準に合わしている。
[IAG: 要約すると、長崎県は廉潔性調査を「廉潔性にかかる世界的な調査が可能(中略)業界の標準的な調査手法に則って調査を実施している」とは言っているが、機密保持事項により県が調査会社の名前、選定方法、調査結果に関連する情報については開示することができない。]
IAG:現在、長崎県のプロセスに関して様々な疑問が取り沙汰されている状況で、どのようにして日本政府は長崎県が選んだ「優先交渉権者」が長崎県の人々にとって最善の選択であったと確信することが出来るのか?
長崎県:県は、国の定める厳しい規制とライセンス要件に従い、最適なパートナーと公正かつ準拠した形で進めていく。
IAG:長崎県はオシドリまたはNIKIのどちらか、または両者が法的措置をとること可能性について考えてはいるか?
回答なし。
IAG:オシドリのプレスリリースの中で「長崎県が課すIRにおける開発・運営上のルールを改善」及び、RFPプロセスを「倫理的かつ公平公正」に実施すべきと示唆されている。長崎県はRFPプロセスの再実施は検討するのか?
回答なし。
IAGは、長崎県の回答を受け、オシドリとNIKIに対して改めて今後の対応を尋ねる。