IAGは、オークラホテルズ&リゾーツのプロジェクト開発部門の最高顧問である門脇五郎氏と、アジアを代表する統合型リゾートオペレーターであるギ ャラクシー・エンターテインメント・グループとのパートナーシップや、どのようにその関係性を10年以上にわたり進展させてきたかについて対談した。
Inside Asian Gaming:ギャラクシー・マカオとオークラの関係はどのように生まれたのですか?
門脇五郎氏:2007年に私どもが取引をしている日本の大手金融機関によりギャラクシー・エンターテインメント・グループ(GEG)が建設を進めていた統合型リゾートについての紹介を受けました。その大手金融機関はGEGを高く評価しており、内容も大変に興味深いものであり、リゾート内に計画されているホテルについて関心がありましたので、実際にGEGに会い、詳しい説明を受けることにしました。
GEGからは、建設中の統合型リゾートはこれまでに創られているいわゆるゲーミングリゾートとは異なり、ファミリーやカップルの利用に焦点を当てたコンセプトの施設が中心であり、さらに計画しているホテルは日本らしいきめ細やかさを模索しているとの説明がありました。 GEGは、私どもがもっとも重要視しているおもてなしの精神や顧客の満足という点において同じヴィジョンを持 っていることを感じました。
それが始まりです。
IAG:なぜオークラはマカオでのパートナーとしてギャラクシーを選んだのですか?
GK:当初、私どもは、ゲーミングリゾートでのホテルはオークラブランドに適さないと考えていました。 しかし、GEGの説明を受け、ギャラクシー・マカオは単なるゲーミングリゾートとして見なされるべきではない、新しいタイプのリゾートである、ということを確信するようになりました。 ゲーミングが統合型リゾートにおいて重要な施設であることは事実であり、財政的に成功している世界中の統合型リゾートを見ても欠かせない要素であることは理解できますが、GEGのコンセプトは、むしろ、ファミリーとカップルの利用を中心に人々が集うためのリゾートであることを全面的に押し出した広範囲な施設から構成されるリゾートだったのです。 これが、私どもが取り組むに値すると判断したきっかけです。
GEGの考えに興味を持った私どもの代表取締役社長はマカオへの訪問を決心し、GEGの創始者であり会長であるルイ・チェ・ウ ー博士、およびGEGの将来のヴィジョンを話してくださった副会長のフランシス・ルイ氏とお会いしました。
その後、双方がさらに理解しあうための議論を重ね、その年の12月にホテル管理運営受委託契約を締結致しました。 私どもは、その時からギャラクシー・マカオのプロジェクトチームのチームメンバーとなった訳ですが、工事は順調に進み、計画が日いち日と具現化されてゆくことに強い興奮を覚えました。
IAG:ギャラクシーと協働することの一番の利点は何でしたか?
GK:たくさんあります。 ひとつは、統合型リゾートが何であるのかを学ぶことができたということです。
ご存じの通り、統合型リゾートに計画されるホテルは、一般的な従来のホテルビジネスモデルとは大きく異なります。 日本のホスピタリティを具現化したオークラマカオは他に類を見ないユニークなホテルですが、開発段階において、また運営をとおして、世界のラグジュアリーホテルが集まるマカオにおいてさらに世界の最新のホスピタリティの動向についても学ぶ機会を得ることができました。
オークラマカオは、大規模で総合的な統合型リゾートを構成する施設のひとつとして利益を得ています。 ギャラクシー・マカオは、リゾート全体での効率の良い運営を図るために売り上げの増大と費用の削減を目的として、調達、清掃、ランドリーとユニフォーム管理、輸送、警備、さらにはIT、HR、マーケティングに至るまでシ ェアードサービスの対象とし、導入を試みています。 ビジネスパ ートナーの持つ営業管理データや顧客データを共有化することはハードルが高く、課題が多いのですが、ギャラクシー・マカオの利益を向上させることがビジネスパートナーそれぞれの利益をさらに向上させるという考えから、GEGの強力なリーダーシップとビジネスパートナー間の密なコミュニケーションがこれらの困難を克服しています。 またギャラクシー・マカオの利用者にとっても、滞在ホテルにかかわりなくあらゆる施設を利用できるというメリットを享受することができるのです。
この結果、オークラマカオの客室稼働率は安定して高い数値を示しており(2019年はほぼ99%)、マーケットをけん引するGEGの財務状況にも安定して反映されています。
IAG: オークラは、ギャラクシー・マカオでの開業前に統合型リゾ ートを運営されていたのですか?
GK:いいえ、運営しておりませんでした。ギャラクシー・マカオが最初です。
オークラマカオは、ギャラクシー・マカオにおいて営業する最初のブランドホテルとなりました。 従来の統合型リゾートにおけるホテルのたいていは、マカオで見られるような「事業ブランド」ではなく、「企業ブランド」型でした。 これは意義深いものであります。GEGは、アジア全域の一般的な顧客と富裕層の顧客をターゲ ットにするためにはブランドが非常に重要であるということを認識していました。
IAG:オークラは最初にこの点について懸念はありましたか? もしあったらそれらは何だったでしょうか?
GK:オークラは統合型リゾートでのホテル運営経験を持っていなかったことから、数多くの懸念がありました。
日本でのマカオのイメージはカジノの街であり、日本との結びつきが約470年前からあったと言われる割にはあまり健全な印象を持たれてはいませんでした。 しかし、私どもはマカオが観光都市として大きなポテンシャルを持ち、かつ近年、急速に変化していることに気づき、GEGとの話し合いを重ねた結果、そのような懸念はすぐに払拭され、GEGが、それまでの先入観にとらわれたマカオの姿やカジノの街の慣例を打破する能力を有していることを確信しました。 それは、紹介者である金融機関が、GEGの親会社であるK. WahとGEGの2つの会社を大変に信頼力があると高く評価していることからも理解することができました。
その他の懸念としては、マカオが主たる客層の焦点を観光客に当てていた思われたことに対して、オークラの顧客プロフィールは特に金融を中心とした国内外のエグゼクティブビジネスパーソンであったということです。 しかしながら、私どもは、マカオでGEGと協働することで、マカオに新しい市場をつくり出し、そのセグメントに私たちのビジネスを展開、拡大できるということに気づきました。 また、当時、日本国外でのオークラの認知度は必ずしも高くはなかったことがあり、マカオにオークラを展開することで国際的な拠点とブランド力を拡大させることが可能となるだろうと考えたのです。

IAG:統合型リゾートでのホテル運営は独立型のホテル運営とは異なるのではないでしょうか。 オークラマカオに対して、ギャラクシーからはどのようなサポートがあったのですか?
GK:すべての関係者への情報提供と密接なコミュニケーション、シ ェアードサービス、相互の信頼と敬意など、それらを可能せしめる強力なリーダーシップの提供です。 それは、GEGが定める「ひとつの屋根の下でのひとつのチーム」というギャラクシー・マカオの方針によく表されています。
ホテル間において往々にしてありがちな顧客の取り合いやスタ ッフの引き抜きはギャラクシー・マカオにおいては見られず、ホテルのみならず施設内の施設全体の格を下げしめるようなことはありません。 パートナーシップ、コラボレーションなどの実例の結果としてそれぞれのビジネスパートナー、関係するあらゆる団体、人の利益となるよう、ギャラクシー・マカオ全体が常に気を配り、取り組んでいます。
IAG:マカオのマーケットは日本とはかなり異なると思われますが、これを解決するのにオークラとGEGの2つの組織はどのように一丸となって取り組んだのでしょうか?
GK:GEGはマカオ政府観光局と強力な関係を築いており、類まれなマカオの文化遺産の保護、安心かつ楽しく滞在できる都市環境の整備、質が高く変化にとんだ飲食の提供などを推進するべく、関係者すべてを積極的に支援しています。 それらはマカオを訪れるすべての旅行者のみならず日本人旅行者に対しても細心の注意を払い、提供されています。
マカオと日本は、約470年前のキリスト教宣教師であったフランシスコ・ザビエルの時代から長い交流の歴史を共有しています。 私どもは、マカオが観光の街であり、リゾートとして世界的な中心として位置づけられていることを認識し、そのために2019年の日本人観光客数は2005年の観光客数のほぼ2倍、約30万人に達したことを嬉しく思っています。
IAG:オークラはギャラクシーから何を学んだのでしょうか?
GK:互いにたくさんのことを学ぶことができたと思います。
たとえば、オークラには日本の「おもてなし」があり、気配りがあり、誠実なサービスがあり、それらの日本の価値観やオークラの持つ先見性はギャラクシー・マカオにおいても明白に示されており、さらには、全ての顧客や従業員、ビジネスパートナーが敬意と最高のおもてなしを受けられるというアジアの心が反映されています。
私どもは、GEGが常に顧客の満足に焦点を合わせ、最高の基準を安定的に維持することに全力を挙げ、この理念とギャラクシー・マカオのコンセプトに忠実でありつづけることに感動を覚えました。 GEGは、常に利用者に質の高い顧客体験を提供するということに目を向けており、すべての利用者がリラックスし、リフレッシ ュしてリゾートライフを過ごし、満足して施設を後にするということをもっとも大切にしています。 このことはギャラクシー・マカオにおいて徹底されており、これらの事例を通してオークラマカオにおいては多くのお客様が繰り返しご利用いただいていることからも明らかです。
オークラは、統合型リゾートにおける効果的なホテルのレイアウトやデザインについてもたくさん学びました。 たとえば、ギャラクシー・マカオでは、ゲーミングエリアはパブリックエリアから見えないように設計しており、ノンゲーミングエリアでは特にファミリーでの利用者に配慮し、利便性と安全性を確保しています。 統合型リゾートの多くでは、ロビーにたどり着き、レセプションから客室に向かう途中においても何度もゲーミングエリアを通り抜けなければなりませんが、これはファミリーにとっては好ましいことではないでしょう。
こういったことはひとつの例ですが、日本人利用者に対しても大切な側面であり、GEGが日本に計画するであろう統合型リゾートにこのようなコンセプトが適用されるなら大変に大きな意義があると考えています。