マレーシアのゲーミング大手、ゲンティンのリム・コック・タイ(林国泰)会長兼CEOが、問題を抱えるクルーズ船運営会社のゲンティン香港に持つほぼ全株を、融資の担保および新型コロナウイルスが世界的に流行する中での救済に充てることを約束している。
ブルームバーグによると、リム会長は同社が生き残りを掛ける中で、76%に相当するゲンティン香港株600万株のほぼ全て、そしてゲンティン株の3分の1近くを差し出すことを約束している。
この情報が明かされる前の先週、ゲンティン香港は、増大する新型コロナウイルスの圧力の中で流動性を保持するために、利息や用船料を含むグループの金融債権者への全ての支払いを一時的に停止することを発表していた。その決断は、ドリームグローバルワンリミテッドとドリームグローバルツーリミテッドの2社の子会社が、370万ユーロ(約4.6億円)の銀行手数料を支払えず債務不履行に陥ったことによって下された。
ゲンティン香港は、ドリームクルーズ、クリスタルクルーズそしてスタークルーズの3つのクルーズラインを運航し、MV WERFTEN造船所で造船事業を運営、そしてフィリピンのIR、リゾートワールド・マニラで合弁事業パートナーとなっている。同社は、当時、全ての債権者をバーチャル会議に招待し、そこでグループの財務状況に関する詳しい情報と、債務の再編および借り換えの選択肢について説明する計画であると述べていた。
同社は今月に入って、2020年上半期に予想される合計6億米ドル以上の損失計上の前に業績警告を発していた。
ゲンティン香港に債務残高の返済能力がないというニュースによって、同社の株価は木曜、始値の0.370香港ドルから午後中盤には0.290香港ドルへと20%以上も下落し、ブルームバーグは追加証拠金発生のリスクを警告した。株価は年初の0.770香港ドルから62%も低下している。
米国を拠点にする法律事務所、Winston & Strawnのパートナーであるマイケル・メルビンジャー氏はブルームバーグに対して、「多くの企業が走っている最中に問題にぶつかり、突然株価が急落することはある。そういったことは起こる。しかしながら、この問題によって、最大株主で同社の取締役が株を売却せねばならない、または追加証拠金が自動的にその売却のきっかけとなるとなれば、問題はさらに一層悪化する」と述べた。
「ブルームバーグ・ビリオネア指数(Bloomberg Billionaires Index)」によると、リム会長の個人資産は2020年に15億米ドルから約7億米ドルにまでほぼ半減した。
マレーシアの超大物である同氏は、ゲンティン社、ゲンティン香港そしてゲンティン・マレーシアの会長兼CEO、ゲンティン・シンガポールの代表取締役会長、そしてリゾートワールド・マニラを運営するトラベラーズ・インターナショナル・ホテル・グループの取締役を務めている。