カンボジアで最も高いビル、屋上スイミングプール、そしてランドマークのVIPプレイ。ゲーミング営業を再開する中で、ナガコープは新型コロナ禍でも35億米ドルをかけたナガ3に固い決意を変わらず持っている。
ナガコープが、世界の統合型リゾートのトップグループへの仲間入りをかけたナガ3計画を「全速力で前進」させると宣言する。新型コロナウイルスの影響で、ナガワールドのカジノフロアは、4月1日から7月7日まで営業を停止し、ゲーミング粗収益、EBITDAおよび利益増加の流れが断ち切られる可能性が高い中でさえも、同社の役員たちは、メコン川を見下ろすプノンペンの35億米ドルをかけた統合型リゾート拡張計画にゆるぎない決意を持っている。
Inside Asian Gamingがナガコープ幹部から匿名を条件に手に入れた情報から、ナガ3の重要な要素が明らかとなった。しかしながら、幹部たちは詳しい内容の多くが、計画の進化に合わせて変化する可能性があると注意を促している。リゾート設計で有名な建築事務所のスティールマン・パートナーズ、超高層ビル専門のスキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル、地元建築家そしてナガコープが協力してそのデザインを仕上げている。
予定されている2025年の完成時には、ナガ3によってナガワールド複合施設全体の合計客室数は5,000室に、ゲーミングテーブルは1,300台に、そして電子ゲーミング機は4,500台に増加する。カンボジア政府は、この投資に対する見返りとして、ナガコープのプノンペンでの独占営業権を2045年まで10年間延長し、そのゲーミングライセンスを2065年まで有効にした。
業界ウォッチャーの中には、客室3,500室、テーブル700台、そしてゲーミングマシン2,000台を追加するナガ3の規模を疑問視している人もいる。他には、ナガやその創業者で、フォーブスによると40億米ドル以上の資産を持つチェン・リップ・キョン (曾立强)氏に賭
けることをどうかと思う人もいる。同氏の資産は、香港に上場するナガコープ株の3分の2近くを所有していることに由来する。医学博士号を取得し、短期間医師として働き、その後ビジネスの世界に生きる道を見出したチェン博士は今年、3,500万米ドルを超える額で、持ち株にナガコープ株2,800万株以上を加え、ポケットマネーからナガ3プロジェクトの半分の資金提供を約束している。
ザ・イノベーション・グループのシニアバイスプレジデント、マイケル・ジュー氏は、「マカオでは願望であろう、はるかに低い税率、寛大な規制環境、中国政府のレーダーから外れている(ある程度は、しかし確実にマカオ『よりは外れている』)、安価でありながら勤勉な労働力といったほぼ全ての要素を提供している点で、カンボジアは、ジャンケット事業者およびプレミアムのプレイヤーにとって今なおマカオを補完する最も理想的な場所の1つだ。さらに、ナガコープは、(カンボジアが昨年中国の強い要請により禁止した)オンラインギャンブルの落とし穴をスムーズに回避してきており、プノンペンでのカジノ独占営業権をさらに10年延長することに成功した。それら全てのおかげで同社の展望はかなり明るくなっている」と述べた。

川と街の絶景を望む一流のゲーミング体験
連勝
2014年から2019年の終わりまで、ナガコープの売上は4倍以上の17億6,000万米ドルに増加し、純利益は3倍以上の5億2,100万米ドル、そしてEBITDAも4倍近い6億7,100万米ドルに増加し、各カテゴリーでの複合成長率は30%以上だった。最大の伸びは、ナガ2が2017年11月にオープンした後のことで、VIP売上は昨年中に倍以上に、そしてマスGGRは58%増加した。幹部たちは、マスプレイが利益の大半を占めていることを強調する。
ユニオン・ゲーミングのインスティテューショナル・リサーチ部門トップのジョン・ディクレー氏は、「明らかにナガ2は大成功を収めており、同社はより質の高いVIPプレイヤーだけでなく、伝統的にマカオやシンガポールのような地域をひいきにするいわゆるプレミアムマス層もターゲットにできている。ナガ3によって、同社には全てのゲーミング客層にアピールすることができる充実した施設が加わり、それが観光客の増加と相まって、ナガが世界的に最も早いスピードで成長するゲーミング企業という位置に留まることに繋がるはずだ」と話す。
長きにわたって東南アジアでゲーミング幹部を務めるマイケル・ゴア氏は、「ナガ3は完全に理にかなっている。ASEANの大勢のプレミアムプレイヤーを本当にターゲットにできる。シアヌークビルとは異なり、中国に依存する必要がない」と語る。

プノンペンの最高地点
当初5棟のタワーとして発表されたナガ3の設計は、1.2ヘクタールの土地に広がる公園に、カンボジアで最も高い75階建のタワー1棟、そして61階建タワー2棟を建設するものへと修正されている。この新バージョンは、低い方のタワーの屋上と最も高いタワーとを結ぶスカイストリートと呼ばれる4階分の上階ポディウムを新たに設置している。ナガコープの資料によると、2階分のVIPゲーミングが作られ、残りは「シンガポールにあるマリーナベイ・サンズのスイミングプールエリアに似せた、メコン川と街全体のロマンチックな風景を望む巨大なレクリエーションエリア」として残されている。
プールエリアは主に低い方のタワーの屋上を占めており、高い方のタワーと繋がっている。同社幹部は、屋内外のレクリエーションスペースのミックスは、今後の強風試験の結果によって決まると述べ、プノンペン周辺のフラットな地形が高い場所での強風のリスクを増大させることを指摘した。
4階分のVVIPゲーミングエリアが、最も高いタワーの最上部に作られる。そのエリアには、ランタンのような電飾が施され、時間によって光が調整される。ナガが多くの中国語方言で「金」と訳されることを考えると(インド神話ではナガはヘビで、東南アジアの言葉の多くでその意味または龍という意味となる)、金の色がカンボジアの首都の空へと延びていく光景を楽しみにしよう。

様々な設備、自然、そしてアートを提供する広々とした空間
ストリートの街並み
これらのタワーは、ナガが呼ぶところの縦横に延びる一連の「ストリート」を採用する下層ポディウムを通じて繋がっており、そこには「現地の生態系を中に招き入れる」「アーバンオアシス」での様々な飲食、ライフスタイルそしてエンターテイメント施設が用意されている。 上階へと連れて行ってくれるのは建物の外部に設置されたカプセルエレベーター。
ナガ3は、ナガ1とナガ2の間260メートルに延びる小売およびエンターテイメントスペースのナガシティウォークを延伸することで既存の複合施設と繋がる予定。予想されているナガ3への追加距離は480メートル。ナガは、接点間を結ぶ地下および地上の輸送手段を作る予定だと述べ、スティールマン・パートナーズのポール・スティールマンCEOによると「非常に未来的な輸送ネットワーク」になる可能性があるという。
ナガ3の資金調達は、チェン博士が株と引き換えに3億9,200万米ドルの建設費を支払ったナガ2でのゲームプランに倣う。博士は、ナガ3の35億米ドルの費用の半分を、同社の11億4,000万(単位を挿入)の株式と引き換えに提供することに合意しており、昨年8月に株主(チェン博士を除く)がほぼ全会一致で承認した。プロジェクト完成時点で、ナガコープのCEOであるチェン博士は、増加した株式ベースの73%を所有することになる。ナガは先月、3億5,000万米ドルのシニア債発行を完了させ、世界の債券市場を活用する能力を明確に示したものの、残りの開発費用は、内部留保から出される見込み。
ナガワールドの最初の2つのブロックとは異なり、ナガ3には世界的なホテルブランドが進出する。契約締結を待つ現在の計画では、世界的に広く知られる高級ブランドに声がかかっており、その全てがプノンペン初進出となる。ナガコープ幹部は、世界的ブランドの計画を認め、ある幹部によると「主には、特に中国からの関心を高めるためだ」という。
収益創出領域
ナガコープが「洗練された」ナガ3設計と呼ぶものは、当初の計画から客室数を1,200室カットし、株主に承認された544,801㎡の建築面積は維持、もしくはわずかに増加すらしている。ナガコープは、客室を、スカイストリートのレクリエーションやハイエンドのゲ ーミングエリアといった、より「多くの収益を生み出すスペース」に置き換えることを見込んでいる。ただしカジノスペースがIRの建築面積の7%を超えることはない。
香港証券取引所への報告書は、ナガ3が「ホスピタリティ、ダイニング、会議およびテーマパークエリアといった家族連れやゲストのための多様なアクティビティを提供する」ことを示唆しているが、同社は具体案については固く口を閉ざしたままでいる。
内装建築と設計を請け負う建築事務所代表であるスティールマン氏は、「提案されているナガ3の利用方法というのは、建物を活力で溢れ、全客層にアピールする利益創出スペースで埋めることだと思う」と述べ、
「チェン博士は非常に多くの素晴らしいアイデアを持っている。彼は統合型リゾート業界に革新をもたらす人であり、ナガ3は彼の最も魅力ある資産になるだろう。チェン博士の作業チームとナガ3について協議していると、その高まる興奮が1986年にスティーブ(・ウィン)、そしてザ・ミラージュとの間で最初に持ったミーティングを思い起こさせる。スティーブとチェン博士は頭の中で長年完璧なリゾートとはどうあるべきかを夢見て、計画していた」と付け加えた。
ナガ3は重大な開発の課題を提起している。床面積544,801㎡の新しいIRは、581,400㎡のマリーナベイ・サンズ(MBS)とほぼ同じ総床面積を持つ。しかしながら、MBSの11.5ヘクタールという土地の広さに対してこちらは1.2ヘクタールの土地に押し込まれている。
ナガ2の建築・設計も行なったスティールマン氏は「ナガ3はプノンペンの都会的構造に合わせて独自に設計された非常に巨大な建物だ。ラスベガスやマカオの統合型リゾートと比べて、比較的小さな土地区画に建てられるよう設計されている。しかし、カンボジアの大都市かつ商業の中心地に建つものとしては非常に大きい」と話す。
建築家のスティールマン氏は、ナガ3の垂直的な設計を、ギャラクシー・エンターテインメントのスターワールドと比べている。スタ ーワールドは建築面積で言うと、世界で最も高い収益を生み出す施設の1つだ。

日帰りか宿泊か?
ナガ3の設計変更は、プノンペンの変化する現実も反映する可能性がある。観光省によると訪カンボジア外国人旅客数は昨年、6.6%増の660万人に達した。ビジネス関連の訪問は倍以上の130万人に達し、その4分の3が中国からの出張客だった。カンボジアは一帯一路構想における主要中継地と見なされており、加えてタイ、インドネシアそしてチェン博士の出身地であるマレーシアからの高い伸びがある。
旅客数の拡大に伴って生まれたのが、成長を続ける1万人以上のプノンペン海外駐在員ビジネスコミュニティだ。現地メディアが 「急成長するチャイナタウン」と呼ぶものが、ナガの玄関口で急成長している。ナガコープ幹部は、7月8日、獅子舞と入場を待つ客とともに再開したカジノビジネスを刺激しているのは駐在員だと考えている。
ナガコープ役員たちは、ナガワールドは一度も完全休業していないと強調する。カンボジアは比較的新型コロナによる打撃が軽く、7月17日時点で報告されていた感染者数はたった171人、そして一部の旅客は感染者数の多い場所に戻るよりも、そこでウイルスが過ぎ去るまで待つことを選んでいる。入国時に新型コロナ検査結果、14日間の隔離そして少なくとも5万米ドルをカバーする医療保険は求められるものの、国境についてもカンボジアでは一度も閉鎖されていない。それら障壁にもかかわらず、旅客はこの王国にぽつりぽつりとやってきている。
その人達にサービスを提供するため、ナガの宿泊施設は4月1日のカジノ閉鎖後も営業を続けており、ホテル稼働率は1から2割だと報告されている。政府は、スパ、バー、ナイトクラブおよびカラオケの閉鎖は義務付けたが、ナガの小売店や一部レストランも営業を続けた。ナガ幹部は、健康・安全対策を行いながらそれら最低限の営業を行い、それがリゾートやカンボジア保健省に、カジノ再開のためのひな型を与えてくれたと話す。
安全第一
再開後の営業では、全従業員及びゲストには体温チェックが実施され、マスクの着用が義務付けられている。テーブルゲームは最初、VIPエリアに限定され(VIPのテーブルリミットで誰でも利用可能)、1テーブル最大3席、立ち見は禁止。マスゲーミングエリアはスロットのみ、1台間隔で稼働。7月18日、ナガは、保健省からマスゲ ーミングテーブル営業の再開許可を与えられた。

レストランのテーブルは1.5m間隔で設置され、全体の人数は5割に制限、ビュッフェは中止されている。厳しいスケジュールで消毒が行われ、施設全体に消毒剤が設置されている。ナガは健康に問題が生じたゲスト用に隔離部屋を5部屋用意しているが、再開から数週間、使用されることはなかった。
クレバナウ・コンサルティングのプリンシパル、アンドリュー・クレバナウ氏は「全てのカジノ同様、収益の最適化方法に関する学習曲線があるだろう。ナガには、俊敏な運営・マーケティングチームがあり、彼らはそれを比較的早く見つけると予想している。
メコン地方で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が少なかった点においてもナガは幸運だ。私はカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムそしてマレーシアの政府はトラベル・バブルを構築し、それらの国の人々がバブル内を自由に行き来できるようにすると予想している。そのバブルには中国の幾つかの省も含まれる可能性がある」と話す。
スティールマン氏はナガ3に関して、「COVIDは長年我々が予期していた変化をもたらした。昔は、当社のデザイナーは皆、『タッチポイント(接触点)』に注目しなければならなかった。今はそれが『ノンタッチポイント(非接触点)』だ」と話す。 チェン博士はゲストの安全を守る最も画期的な機能を持つ統合型リゾートを全面的に支持している。
それらの機能には、客室消毒システム、ゲストの携帯電話によるドアおよび客室内操作、音声運転エレベーターなどがあり、そして現在規制機関の承認を待っているのが、スティールマン・パートナ ーズと関連会社のコンペティション・インタラクティブが開発したデジタルウォレットシステムだ。
新型コロナウイルスが広がる中でもナガ3の土地整備は続いている。土壌検査が完了したことで、同社は杭打ちと基礎工事のための入札書類を準備しており、今年中の工事開始、そしてそれが30カ月続くと予想されている。ナガは、関心提案には18社の建設請負会社が回答し、その中には中国国営企業が数社含まれていたと話す。
ユニオン・ゲーミングのディクレー氏は、「中国とカンボジアは兄弟のような関係で、それがナガ物語を魅力的なままにさせる。中国(そして中国以外)のFID(直接投資)がカンボジアに継続して注がれているために、IRをベースにした活動や娯楽に飢えた既存の駐在員基盤を作り出すという継続的なプラスの効果があるだろう。そして同時に国の経済を持ち上げ、現地の豊かさも生み出す。ナガが長期的に他を入れない状態にあることで、同社は独占支配を維持し、インドシナ全体のゲーミングを考えると、主要受益者になることができるだろう」と話す。