横浜が事業者公募(PRF)を始めたことで自治体誘致レースのゲートが開いた。選ばれるのは最大で3つのエリア。「大阪」「和歌山」「長崎」「横浜」の中、地域性で気になるのが隣接する大阪と和歌山だ。これがプラスに出るのか、マイナスに働くのか。
今年の1月は日本版IRにとってはエポックメーキングな1カ月になった。北海道が2020年代後半開業の第1フェーズに参戦しない意向を伝えたのは残念だったが、和歌山では事業者公募の提案審査書類の提出を締め切り「サンシティグループホールディングスジャパン」と「クレアベストニ ームベンチャーズ」の一騎打ちとなった。結論は3月末にも出る。
また長崎も事業者の公募を開始。早くから参戦を表明している「カジノオーストリアインターナショナル」の他に、最近「モヒガン・ゲーミング&エンターテインメント」との連携を発表した「オシドリインターナショナル」、「ゲット・ナイス・ホールディングス」と連携した「カレント」、「パルトゥーシュ・グループ」と連携した「ピクセルカンパニーズ」 、日本のTHE NIKIと連携した台湾のチャウフー ( パークビュー)グループに加え、新たに少なくとも3者が関心を示しているといい、こちらは8月に審査結果が出る。

さらに”真打ち”の横浜がようやく事業者公募をスタートさせた。これにより、すでに「MGMリゾーツ」と「オリックス」のコンソーシアムで一本化している大阪を含めた4地域が出そろい、国が最大3カ所としている自治体のIR誘致レースが本格化することになった。
止まっていた時間が動き出したわけだ。これほどダイナミックな動きがあったのはいつ以来だろうか。
しかし、4地域とも一長一短があり、現時点ではどこが生き残り、どこが脱落するかは予想しづらい。多く残る4地域についての疑問の中で、和歌山の一番大きな疑問は、大阪に近くてもIRの誘致は成功が出来るかどうかだ。
直線距離60kmの大阪と和歌山の関係は?
大きなポイントなりそうなのが今年8月の任期満了にともなう横浜市長選だ。国の基本方針によれば、自治体はまず事業者を選び、次に、その事業者と共同でIR「区域整備計画」を作成。議会の議決を経て国に認定申請をする。申請期間は今年10月から来年4月末までとなっており、横浜市の場合、否が応でもIRが選挙の争点となる。
もし、反対派が当選した場合はIRが幻になる可能性があり、その場合は大阪、和歌山、長崎の3地域で決まることになりそうだ。
しかし、横浜が残った場合(反対派が多いため、その可能性は60 %か)は引き続き4地域の争いとなり、今度は別の論点が浮上する。それが今回のテーマでもある大阪(夢洲)と和歌山(和歌山マリーナシティ)の関係性だ。
大阪市と和歌山市は直線距離にしてわずか60㌔。誘致先の和歌山マリーナシティは関西国際空港から車で約30分の所にある。果たして、この近隣さがどう出るか。
県民性や郷土自慢を取り上げる人気テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」では大阪府民から「和歌山は何もない。おるのはパンダだけ」などと揶揄されたりするが、 実際は高野山や熊野古道といった世界遺産もあれば、海洋リゾートも楽しめ、大阪IRにはない趣がある。和歌山の関係者はこう話す。

「一般的にIR施設は1カ所にポツンとだけより、複数ある方が活気が出ると言われている。
シンガポールもそうだった。マリーナベイサンズにリゾート・ワ ールド・セントーサが加わり、選択肢が増えることで相乗効果が出た。事業者にとっても、ギャンブラーにとっても近くに2カ所あるのは歓迎でしょう。都市型の大阪とリゾート型の和歌山。近すぎると言われますが、住み分けはできるし、むしろ、近いことで相乗効果は見込めると思う」。
なるほど、国は区域選定にあたってIR施設の中身やコンセプトなどを重要視し、地域性は考慮しないと明確に回答している。しかし、これを建前と見る関係者もいた。
「IRの効果を全国に浸透させたいので地域が偏るよりは散らばった方がいいでしょう。国はそれを望んでいる。関西に2つは微妙。
地方創生もうたっている以上、和歌山と長崎のどちらかが選ばれるでしょうが、常識的に考えたら規模が大きくて東日本にある横浜と西日本の大阪が順当に選ばれ、あともうひとつはバランスを考えると九州の長崎かな」
大阪IRが危ないってホンマかいな?
そんな中、大阪府の幹部職員から思わぬ話も聞いた。
「大阪はこれまでIRレースの先頭を走り、一時は事業者から引く手あまたのときもあったが、MGMに決まってからコロナ騒動が勃発。MGMの業績は悪化しているし、決して安泰とは言われへんよ」

さらに政府筋からは「区域選定は最大3カ所となっており、それより少ないこともありうる。もしかするとスタートは2カ所に収まるかもしれない」と伝わってきたが、これは参考までにとどめておく。
4地域のうち、どれが生き残るのか。大阪、和歌山の両立はあるのか。
競馬で言えば、4頭立ての3連複を当てるようなもの。いとも簡単に的中しそうなものだが、このIRレースはそうでもなさそうだ。