オーストラリアの元ゲーミング規制担当者、ピーター・コーエンがマカオの責任あるギ ャンブルへの取り組みがなぜ他の多くの有名な法域よりも優れているかを説明する。
全ての法域は異なる。ある法域でギャンブルからの危害を最小化するために機能するものが、別の場所では上手くいかない場合がある。
それでもなお、他よりも危害最小化策の開発により多くの力を注ぐ法域がある。可能性を制限してしまうような政治的環境を問題にしなければ、地域ごとの比較でより多くのことがわかる。
世界最大規模かつ最も大きな成功を収めるような統合型リゾ ートは、明らかに異なる環境でカジノを運営する。これら法域の一部は、ギャンブルと非ギャンブルサービスの両分野で、より優れた体験を提供しているとしてきっちりと突出している。それでもなお、責任ある形でギャンブルを提供するためのそれぞれの努力の比較は、予想だにしないような結果をもたらす。
その並外れて高いゲーミング支出(プレイヤーの負け)が原因で、多くの人が、マカオは一般的に広く知られる競合地域よりも危害の最小化へのコミットメントレベルが低いと考えている。しかしながら、エビデンスは全く異なる様相を描き出す。
マカオには実証されている危害最小化ツールである断固たる自己排除プログラムがあり、ネバダ州にはない。同様に、マカオではゲーミング中の喫煙は禁止されているが、シンガポールやネバダ州ではそのような制限はない。
喫煙禁止は、一般的に公衆衛生対策として見られていると同時に、関連するゲーミング危害最小化の側面もあり、禁止されているカジノでなおも喫煙したいと思う人というのは、そうするためにゲ ーミングから休憩をとるべきということだ。これが重要だ。研究では、カジノ訪問ごとのゲーミングに費やす時間は、有害なギャンブルへとつながる3つの主要パラメーターの1つであることが証明されている(他には賭け額と訪問の頻度)。
同様に、マカオではカジノゲーミングの広告に制限があるが、ネバダではそのような制限はない。昨年施行された法律の中で、マカオ政府は非番のカジノ従事者が休日にカジノに入場することも禁止した。それと同様の規定はネバダ州でもオーストラリアのどの法域においても見られない。
必須要件に加えて、中には法で定められた基準を超えた対策を行う事業者もある。顧客を大事に思うということだけでなく、持続可能なビジネスを確立する助けとなる賢明な経営判断という両方の理由でそうすることがふさわしい。例えばマカオでは、ギャラクシ ー・マカオ、スターワールドそしてブロードウェイカジノを運営するギャラクシーエンターテインメントグループ(GEG)が、ルール上そのような義務はない中で、従業員向けに一連の責任あるギャンブル研修プログラムを実施した。責任あるゲーミング研修は、雇用された1週目からスタートし、定期的な再教育が継続して行われる。

マカオとその事業者たちはさらに上を目指せるか?間違いない。では、世界中の全ての法域の事業者も?各事業者は、既存の責任あるギャンブルへの取り組みの社外監査、そして一般的な研究の定期的なレビューから始めると良い。GEGは継続的にそれを行い、そのプログラムが確実に最新かつ地域のニーズにとって適切であるようにつとめている。
将来に目を向けた時、最先端の技術的なソリューションの継続的な開発が有害なギャンブルを最小化するのに役立つ新しい先進テクニックを与えてくれる可能性があり、それは真剣に検討されるべきだ。しかしながら、新テクノロジーへの決定を行う中で、事業者は継続して科学を観察し、不測の、または予想に反する結果を持つかもしれない対策を導入しないようにしなければならない。それに似た理由で、規制機関や議員はエビデンスで裏付けられていない対策の導入を求めないことが重要だ。
法域の社会的なニーズが、どこか他のゲーミング市場のものとは異なる可能性がある一方で、エビデンスは、ギャンブル依存症の裏にある科学は世界中のほとんどのゲーミング市場で普遍的であることを示している。故に、日本のような新市場は、IR実施の準備を進める中で、効果的なプログラムに関する指針に関しては、マカオのような責任あるゲーミングに良識的なアプローチを持つ法域を参考にすべきである。