金曜、安倍晋三首相が、持病である潰瘍性大腸炎の悪化で辞任する意向を表明した後、「他の様々な政策が実現途上」にあるなかで、職を辞することへの悔しさをにじませた。
在職期間が7年8カ月あまりとなった安倍首相は記者会見で、「体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない」と述べ、「国民の皆様の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」と述べた。
任期をあと1年余り残しての辞任について、「他の様々な政策が実現途上にあるなか、コロナ禍の中、職を辞することに国民に心よりおわび申し上げる」と付け加えた。
「(北朝鮮による)拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みだ。ロシアとの平和条約、また、憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思い」と付け加えた。
安倍首相はまた、日本初の統合型リゾート開発を見るという夢も実現できていない。政府は未だ基本方針を発表しておらず、今後数カ月以内に、候補地である地方自治体とその提携事業者による政府への申請提出期限の延期が発表されると見られている。提出期間は現在2021年1月から7月に設定されている。
横浜に拠点を置くコンサルタント会社ベイシティ-ベンチャーズ株式会社のマネージングディレクター、國領城児氏は、先週のオンラインイベント『GAME』の中で、Inside Asian Gamingに対して、延期される可能性はあるが、安倍首相の辞任によるIR政策への影響はないだろうと話した。
國領氏は、「これはすでに衆参両院を通過し、成立した国の政策であるために、誰かが前の法律を無効にする新法案を提出しない限り、政策自体が変わることはない。
それが進められるかどうかは別の話だ。衆参両院で別の多数党が政権を取らない限り、この方針は、遅かろうが早かろうが、その政策は前進し続ける。
将来それが実現するかどうかに関してを本気で心配する必要があるとは思わない。また、それは現時点で強力な反対派がいないという事実にも基づいている。
今年または来年に衆院選が行われたとしても、それが全てを変える唯一の要因とはならないだろう。単なる一歩に過ぎない。この段階では、日本政府の中では現状がかなり守られていると言える」と話した。
今後について安倍首相は、「次の総理が任命されるまでの間はしっかりと責任を果たす」と、政治的空白を生じさせないことを強調した。
安倍首相の後継を選ぶ総裁選の方法は、9月1日の総務会で正式決定する見通し。任期は前任の期間を引き継ぐ。今回の場合は来年9月までとなる。候補者としては、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、河野太郎防衛相、下村博文選対委員長などが意欲を示している。
麻生太郎 副総理・財務相は総裁選への立候補はしないことを明らかにしている。
野村證券金融経済研究所のアナリスト、美和卓氏は、レポートの中で、誰が安倍首相の後任になっても、その経済政策から大きく逸れるという可能性は低いと述べた。
「しかしながら、安倍首相が維持した政策への厳しい統制と比べると、たとえ一時的のみであっても、政治的団結が幾分失われるであろうことはほぼ不可避だ。そして市場が安倍政権の方針の継続の可能性が高いことを間違いなく歓迎する一方で、それらの方針は、かつてほどに持続可能であるとはもう見られていない可能性がある」と述べた。
美和氏は、菅官房長官が、中でも特にIR開発など、安倍首相の政策目標に最も近い形で進める可能性が高いと付け加えた。
「2012年12月から内閣官房長官を務めてきた同氏は、歴代安倍内閣(第2次から第4次)が政策を厳しく統制するやり方の中で、指導的な役割を果たしてきており、もし選ばれればそのスタイルを維持すると予想できる。社会保障制度の改革といった安倍氏の政策の継続と合わせて、菅氏がカジノ合法化を含む観光振興の政策を踏襲すると予想している」と述べた。