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オンラインが ライフライン?

ムハンマド・コーエン 文責 ムハンマド・コーエン
2020年 7月 16 木曜日 13:41
オンラインが ライフライン?
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アジアが新型コロナウイルスから深刻な打撃を受けた収益を強化するためにオンラインゲーミングの拡大を検討する中で、欧州と米国が厳格なコンプライアンスの下でそれを責任ある形で行う方法を示している。

カジノを閉鎖させ、旅行を事実上の停止に追い込んだ新型コロナウイルスのパンデミックの中、ある業界が大きな成長を見せている。それがオンラインゲーミング業界だ。新型コロナウイルスの有効な治療薬またはワクチンが無い状態で、通常通りのビジネスに戻ることへの見通しが不確かである中、アジアがゲーミング売上と税を回復させ、業界の雇用を守るための最もシンプルな方法はオンラインゲーミングを拡大させることだ。アジア諸国の政府がその一歩を踏み出したいのであれば、ヨーロッパとアメリカでは厳しく規制されたオンラインゲーミングが国内市場で繁栄できるということを示している。

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、世界中でオンラインゲ ーミングの売上が急増している(この記事ではオンラインゲーミングを、ポーカーやその他のピアツーピアプレイなどのカジノゲームと定義する。ただしスポーツくじは除く)。カジノがマカオ以外のほぼ全ての地域で営業を停止し、旅行が制限され、そしてメジャーなスポーツリーグが開催を中止する中で、3月中旬からカジノゲーミングは事実上、今遊べる唯一のゲームになっている。ヨーロッパのオンラインプレイは今年、予想額79億ユーロ(約9,500億円)から2割も増加したと伝えられている。米ニュージャージー州でのオンラインゲーミング収益は4月、118%増加し、8,000万米ドル(約86億円)に達した。

マカオはこれまで、オンラインカジノギャンブルを受け入れよという提案に抵抗してきた

オンラインゲーミングが上昇する一方で、ゲーミング全体は下降している。カジノが閉鎖され、スポーツくじが益々低迷する中で、ニュージャージー州の4月の合計ゲーミング粗収益は69%減、金額にすると1億8,300万米ドル減の8,300万米ドルにまで落ち込んだ。その他の法域も似たような数字になっている。

実店舗の回復の見通しは依然薄暗い。渡航制限が敷かれたままになっているために、4月のマカオカジノのGGRは97%減、5月もたいして変わらない流れになっている。制限を解除したからと言って、自動的に、人々が特にバス、列車および飛行機などの交通機関を利用して旅行を再開するということにはならないだろう。

魂の殺人

テーブル周辺やマシンの間にプラスチック製のしきりを設置するなど、安全および社会的距離の確保のための提案によって収益の急速な回復はほぼ見込めない。グローバル・マーケット・アドバイザーズ(GMA)のパートナー、ジョン・イングリッシュ氏は、「カジノから社会的な要素を取ったら、その魂を奪うことになる」と話す。

ゲーミングテーブルの席数は3席か4席に削減される可能性が高く、ゲーミングマシンおよび端末は1台ごとにスイッチが切られる。

FootballBet.comのデイビッド・レッポ会長兼CEOはこう話す。「 事業者のGGRを半分にカットしている。もし政府が新型コロナ前の数字まで戻したいと願うなら、ワクチンができるまで、規制当局は顧客にオンラインサービスを提供しなければならないだろう。

多くの企業や規制機関が、オンラインという選択肢を『未来の波』として見てきた。その未来は3カ月前に今の現実になった。

オンラインゲーミング無くして、カジノ従業員の給与を支えるライフラインは無く、多くの場合、全体的に税収が激減する中、歳出が急増している政府にとって別の収入源は無い。

ラスベガス・サンズは、営業を行うアジアの法域を含め、オンラインギャンブルに反対の姿勢を維持すると主張している

禁止か規制か

事業者や政府職員はオンラインゲーミングが収入不足に立ち向かうためのやむを得ない選択肢だと考えるかもしれない。その理由は特に、アジアのプレイヤーは年間500億米ドルほどをオンラインで負けていると予想されており、プレイの圧倒的大部分が、国によって規制も課税もされていない中、国民が賭けを行なっているためだ。

「アジアでは、政府は決断を下さなければならない。規制したいのか否か?」 ロンドンを拠点にするTottenham & Coのマネージングディレクター、アンドリュー・トッテナム氏は言う。「政府はこう言うことができる。自国民がギャンブルをしている。禁止し、銀行と協力してそれを止め、IPアドレスをブロックして、決済をブロックすることもできる。または、規制し、公平性を確保するようにすることもできる」。

これまで、アジアの規制当局は、自分の領土内でオンラインギャンブルを受け入れることに消極的な姿勢を維持してきており、監視やギャンブル依存症に関して問題が生じる可能性を恐れている。マカオはその住民(公務員を除く)のカジノでの自由なギャンブル、競馬への賭け、オンラインまたは電話によるスポーツくじを認めてきたが、オンラインギャンブルは禁止している。

マカオのゲーミング規制当局、DICJはInside Asian Gamingからの質問に書面でこのように答えた。「政府は、業界の発展に役立つあらゆる提案に耳を貸すだろう。しかしながら、インターネットまたは電話を通じたギャンブルのリスクから、政府はその判断を慎重に検討しなければならない」。

マカオで長きにわたってカジノ幹部を務める2NT8のマネージングディレクター、アリダッド・タッシュ氏は、「中国はカンボジアでのオンラインギャンブルに反対し、そしてそれが中国とフィリピンの間の緊張関係の原因となっている。だから、彼らがマカオでそれを許可などするだろうか?」。

こちらにとってはなおさら

マカオトップのカジノ事業者たちもそれを望んではいない。

サンズ・チャイナの親会社ラスベガス・サンズの国際コミュニケ ーションおよび総務部のシニアバイスプレジデント、ロン・リース氏はIAGに対して、「当社はオンラインゲーミングに反対であり、どの都市、国、大陸であろうとそのビジネスに参入する予定はない」と話す。

住民に対する150シンガポールドル(約11,500円)の入場料はあるものの、マカオとほぼ同じゲーミングオプションを持つシンガポ ールは、2015年に制定された遠隔賭博法(Remote Gambling Act)を通じて無認可オンラインゲーミングを禁止した。同国のカジノ規制庁は、IAGに、その禁止を繰り返して説明し、スポーツおよび富くじの唯一の認可プロバイダーであるシンガポール・プールズが国の新型コロナウイルス感染拡大防止策である「サーキットブレーカ ー(緩やかな外出禁止令)」」による4月7日からの生活に必須でないサービスの営業停止の一環として遠隔サービスの営業を停止したことを付け加えた。

シンガポールは2015年、無認可のオンラインギャンブルを禁止した

フィリピンは、オンラインゲームに対するアジアでの優勢な考え方を具体化する。国民はカジノでギャンブルでき、ベッティング店でビンゴやその他ゲームを、そしてスポーツくじには直接、電話またはオンラインで参加できる。しかしオンラインカジノゲーミングは、海外プレイヤー限定となっている。POGO(フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーターズ)を通じて、規制当局のPAGCORは昨年64億比ペソ(約137億円)の手数料を徴収しており、これはゲーミング粗収益(GGR)が、50億米ドル(約5,300億円)を超えたことを示している。これはフィリピンにある実店舗のカジノのGGR、43億米ドル(約4,610億円)よりも多い。

近隣窮乏化政策はやめよ

近隣窮乏化政策スタイルのオンラインゲーミングには限界がある。カンボジアのシアヌークビルでは、中国本土のプレイヤーを主にターゲットにしたオンラインゲーミングの基礎に何十億ドルもの投資が行われた。中国の法律では中国本土のプレイヤーの参加は違法だ。中国政府が異議を唱えた時、カンボジアには、その主要な経済支援者の声を聞き、2019年末にオンラインゲーミングを禁止する他選択肢はなかった。これによってその投資の大半が停止した。

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長期的には、アジアでオンラインゲーミングを持続可能にするには、国内のプレイが必要になるだろう。アジア各国の政府が自国の市場でオンラインゲーミングを許可すると決めた場合、成功モデルは豊富にある。

「ニュージャージー州は、2013年末頃からオンラインゲーミングが州によって効果的に規制でき、事業者は責任をもって提供できることを示してきた」。以前はニュージャージー州の規制当局側の人間で、今はスペクトラム・ゲーミング・グループのマネージングディレクターを務めるフレッド・グシン氏は言う(州のカジノ管理委員会およびゲーミング法執行局はこの記事に関する問い合わせに回答しなかった)。ペンシルバニア州とデラウェア州は、もっと最近になってオンラインゲーミングを合法化しており、その他の州は検討中だ。

ニュージャージー州は、オンラインゲーミング税15%と2.5%の代替投資税(investment alternative tax)を課している。実店舗でのプレイに対してはそれぞれ8%と1.25%だ。オンラインライセンス保有者は、実店舗のカジノと提携しなければならないが、カジノは複数のオンライン提携会社を持つことができる。サーバーおよび他のインターネットゲーム装置もカジノ敷地内に設置されていなければならない。アトランティックシティにあるボルガータの施設を通じてオンラインゲーミングを運営するMGMは、この記事に関する問い合わせに回答しなかった。

デジタルトレイル

ニュージャージー州のオンライン事業者はマネーロンダリング対策と顧客の身元確認要件を満たして、プレイを監視しなければならない。

クレバナウ・コンサルティングのトップ、アンドリュー・クレバナウ氏は「1つの賭けが行われる前に、カジノはオンラインの客が誰なのか、どこに住んでいるのか、そして彼らのクレジット履歴まで把握しており、行われた全ての賭けを追跡することができる」と話す。

バード&バード法律事務所のパートナーで、同事務所の国際賭博グループを率いるアンディ・ダンソン氏は「実在のカジノではその人物を実際に見ることができるというだけで、よりしっかりとAML(マネーロンダリング対策)ができるというのは誤った通念だ。まっとうな(オンライン)事業者を欺くのは難しい」と話す。

カンボジアのシアヌークビルは昨年中国が介入するまで、オンラインゲーミングの後押しを受けて建設ブームの真っ只中にいた

プレイヤーは物理的にニュージャージー州内にいる間のみ賭けを行うことができる。「ジオフェンシング(Geofencing)・ジオロケーション(Geolocation)ツール、または第三者企業は、その客の賭けが合法である場所にいるかどうかを特定するための正確な報告を提供する」。GMAのスポーツくじ・テクノロジー部門マネージングディレクターで、米国の合法モバイルスポーツくじのパイオニア、イングリッシュ氏はそう話す。

十国十色

欧州連合(EU)は、加盟国に独自のインターネットゲーミングのルールを設定することを認めており、アジアの法域に様々な例を見せてくれる。法域によって、サーバーやバンキング機能がライセンスを供与する国に設置される必要があるのか、または単にEU内で良いかは異なる。

1986年に創業したトッテナム氏は、「事業者にとってあちこちに異なるサーバーやバンキングを持つことは煩わしい事だ。しかし、それは、規制側には安心感を与える」と話す。

ベルギーなどの一部の国は、オンラインライセンスを実店舗のカジノにリンクすることを求めており、英国などの国では求めていない。

「資本主義者としては英国モデルが好きだ」。ロンドンを拠点とするダンソン氏は言う。「しかし、従来の実店舗型業界を守ろうとするならば、別のモデルになるだろう」。

ダンソン氏によると、近年、特にイギリスでは、コンプライアンスや責任あるゲーミングがさらに重要視されるようになっており、登録時により詳しい情報を集めることから始められている。

「定期的に、事業者は自撮り写真とパスポートを要求し、支払い能力の確認のために信用調査会社を使っている。誰かが大きなお金を使っていれば、事業者は電話を取り、彼らに支払い能力があるかどうかを確認すると予想される。

大西洋の両側の法域は、登録およびプレイ手続きの一環として責任あるゲーミングのメッセージ表示を義務付けている。

ワシントン州立大学の責任あるゲーミング専門家の、カリル・フ ィランダー氏は、「最も優れたゲーミング場は通常、時間や金、預け金や損失額など、複数基準の上限設定機能、自己排除プログラム、責任あるゲーミングの教育コンテンツ、そしてリスクの測定レベルに基づいたプレイヤー情報を与えることのできる何らかのフィ ードバックツールを持っている」と話す。

オンラインゲーミングの成長は、オンラインゲーミング障害支援の拡充を伴ってきている。

カルガリー大学の中毒行動研究所のデイビッド・ホジンズ教授は「研究は、オンラインおよび遠隔治療の効能を立証している」と話す。

プロキシーの矛盾

マカオのプロキシー・ベッティング復活の可能性は?

マカオが近い将来オンラインカジノゲーミングを受け入れる可能性は低そうだ。しかし、新型コロナウイルスが、制限緩和後でさえも旅行を抑圧する可能性がある中で、一部の業界ウォッチ ャーたちはプロキシー・ベッティング(代理賭博)が、ゲーミング粗収益を再び増加させる助けになる可能性があると指摘する。マカオは、カジノのVIPルームにいる賭けを行う人物にベットを電話で指示して賭けを行うプロキシー・ベッティングを2016年に禁止した。マカオの禁止が他の法域、特にフィリピンでのプロキシー・ベッティングを促進した。フィリピンではしばしば現場にいない参加者に対してライブ配信を加えている。

2NT8のマネージングディレクター、アリダード・タッシュ氏は、「 オンラインでの賭けとは逆に、プロキシー・ベッティングは(マカオ)政府にとってより受容・許容できるものだ。彼らが以前に行なっていたことへのスイッチを再びオンにするだけのことだ」と話す。

マカオのDICJは2016年にプロキシー・ベッティングを禁止した

マカオのゲーミング規制当局、DICJはInside Asian Gamingに対して、大きな打撃を受けている地元ゲーミング業界を助けるために「どのような提案にも耳を貸す」と述べたものの、「インターネットまたは電話を通じての賭博にはリスクがあるために、検討は慎重に進められる」と話す。

MdMEのシニアアソシエイト、カルロス・エドワルド・クエリョ弁護士は、「プロキシー・ベッティングは2016年に正式に禁止された。その主な理由は、特にギャンブラーの身元とその資金源といったAML(マネーロンダリング対策)問題によるものだった。プロキシ ー・ベッティングの復活は予想していない」と述べた。

屁理屈

プロキシー・ベッティング支持派は、屁理屈を用いて、プロキシ ー・ベッティングをオンラインゲーミングと区別し、コンプライアンス問題に対処している。彼らは、代理人によって合法的に賭けが行わているとしており、遠隔ゲーミング取引を作り出すのを避けるために、施設外にいる実際の客を見ないようにしている。支持派は、ジャンケットプロモーターのリモート客との関係がAML要件を満たしていると強く主張する。カジノや規制当局が、リモート客がいることを確認できないにもかかわらず。

スペクトラム・ゲーミング・グループのマネージングディレクター、フレッド・グシン氏は、「カジノでのプロキシー・ベッティングは、カジノが知らないプレイヤーたちがカジノで賭けを行えるよう設計されている」と話す。ニュージャージー州で以前規制当局側にいたグシン氏は、プロキシー・ベッティングをオンラインゲーミングと区別する理論を「違いのない区別」を作り出すとしてはねのけている。

プロキシー・ベッティングとオンラインゲーミングの実質的な違いの1つが、ターゲットプレイヤーだ。

「ジャンケット客は代理賭博への参加に必要な資金を持っている。彼らには大きな信用与信枠があり、過去のVIPルームへの旅行からその財産を示している」クレバナウ・コンサルティングのトップ、アンドリュー・クレバナウ氏は話す。「オンラインゲーミングはローエンドのマス層プレイヤーをターゲットにしている」。

マカオは社会的距離措置を促進しながら、ゲーミング粗収益を増やす、プロキシー・ベッティングに勝るツールを持っているかもしれない。テクノロジーによって、カジノが支給するデバイス、またはプレイヤーのデバイスにインストールされたアプリを使って、カジノ構内でテーブルやマシンから離れた状態で行うゲーミングを実現できる。そのアプリを使えば、何十人ものプレイヤーがテーブル周辺に集まることなく同じテーブルを使用することができる。カジノは、リモートプレイヤーに、空いたテーブルに座って、またはFootballBet.comのデイビッド・レッポ氏が勧めるように、飲食サービスのあるラウンジにいる状態でプレイしてもらうことができる。

クエリョ弁護士は、承認されたデバイスによるカジノ敷地内でのモバイルゲーミングを許可するマカオの行政規則を引き合いに出し、「カジノ構内」を構成するものを指定するための広い裁量を政府に与えている。

21歳以下の入場不可など、カジノフロアと同じ入場規則やその他の必要な制限を課すことによって、レストランまたはホテル棟でさえも、モバイルゲーミングのためのカジノ構内に指定することができる。

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ムハンマド・コーエン

ムハンマド・コーエン

ムハンマド・コ ー エンはInside Asian Gamingの総合編集長でありForbes Asiaの寄稿者。著作に、1997年香港返還時にTVニュース、恋愛、裏切り、巨額の金融取引そして安物のランジェリーをテーマにした「Hong Kong On Air 」 がある。

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