騒動となっている一連のメディア報道や業界の報復的な対応の最新の動きとして、マカオを拠点とするVIPゲーミングプロモーター、サンシティー・グループのアルヴィン・チャウCEO兼取締役が、名誉棄損および弁護団が「虚偽の主張」と説明する内容で、豪メディアのThe Ageに対して法的措置を開始した。
この騒動が始まったのは7月末のことで、オーストラリアの新聞、The Sydney Morning HeraldとThe Age、そしてチャンネル9のテレビ番組「60 Minutes」がそろって一連のニュースを伝えた。この全てのメディアを所有しているのが豪メディアコングロマリットのナイン・エンターテインメントだ。この3つのメディアは、オーストラリアで統合型リゾートを運営するクラウン・リゾーツ、そして「ジャンケット」または「ジャンケット事業者」と呼ばれる多数のVIPゲーミングプロモーターの1社で、クラウン・リゾーツと取引のあるサンシティーに対して数多くの主張を行い、遠回しに非難した。ナイン・エンターテインメントの報道には、チャウ氏が大規模なマネー・ロンダリングに関与し、組織犯罪につながりがあったという主張も含まれていた。
その次の週末には、The Sydney Morning HeraldとThe Ageが、匿名を条件にした当局関係者の話として、チャウ氏が豪内務省からオーストラリアへの入国を禁止されているとというニュースを報じた。
この報道の後の8月5日にサンシティーは、チャウ氏には今後12か月間にオーストラリアを訪問する意図はないという声明を出した。その声明はまた、チャウ氏が豪当局による捜査対象になっていないとも主張し、サンシティーの香港に上場する会社がオーストラリアでは営業活動を行っていないことも明確に述べた。そして「グループおよびその取締役の両方またはいずれか一方に関する誤った、悪意のあるまたは根拠のない情報を広める者に対してあらゆる措置を取る権利」を留保すると警告していた。
この問題を良く知る人物が匿名を条件にIAGだけに語ってくれた内容によると、チャウ氏は、同紙が豪メディアの「虚偽の報道」と話す主張に「深く傷ついて」おり、Fairfaxの報道によってサンシティ―の、そして彼個人の名声が「著しく傷つけられた」と考えているという。
IAGは、チャウ氏が弁護士の専門家チームとファイナンス・バンキングの業界専門家を集め、メディアによる主張に関してアドバイスをもらい、彼らのアドバイスを検討した後に、「反撃」するとチームに対して宣言したことを突き止めた。 The Ageの編集者への法的書簡がチャウ氏の反撃の最初の一歩になるようだ。IAGはそのコピーを入手した。
メルボルンの法律事務所が発行し、8月12日の日付が入ったその書簡は、The Ageが以下の3つの主張を撤回するよう要求している。チャウ氏が組織犯罪とのつながりによって豪内務省からオーストラリアへの入国を禁止されていること、チャウ氏がこれまでに大規模なマネー・ロンダリングに関与していたということ、そしてチャウ氏が犯罪組織の多数の人間とつながりを持っていること。
書簡は、今回の主張は「真実ではなく全く法的根拠がない」、「明らかな中傷的行為」そして「チャウ氏に苦痛、羞恥感、屈辱感を与えた、また継続して与え続ける」と訴えている。 また、The Ageに対する金銭的責任の可能性も示唆し、「明らかに、そのような虚偽の主張を広めることは、重大な金銭的ダメージをもたらす可能性がある」とも述べている。
撤回に加えて、チャウ氏の弁護団は、The Ageがチャウ氏のオーストラリアへの入国が禁止されていると伝える記事を同紙のウェブサイトから削除すること、そしてその主張を今後さらに広めないことまたは繰り返さないことに同意することを要求している。
IAGは、チャウ氏が2018年にオーストラリアの観光ビザを申請し、その申請が承認されなかったことを突き止めた。しかしながら我々は、チャウ氏のプロの顧問団の見解は、このことが組織犯罪とのつながりに関係しているとThe Ageは誤った結論を出し、それによって読者に誤解を与えているというものだと理解している。これは我々の理解であり、オーストラリア政府からチャウ氏に対して正式な説明は行われていない。

