横浜市の林文子市長(75)が、任期満了に伴う8月の横浜市長選に4選を目指して立候補する方向で調整に入った。主要メディア群が報じた。
満を持しての登場か。候補者が入り乱れ、混迷を極めている横浜市長選。今まで正式に態度を明らかにしてこなかった現職の林文子市長が、4選目を目指して名乗りを上げるようだ。
いまやIR誘致の是非が最大争点の様相を呈している市長選だが、今まで出馬を表明している候補者のほとんどがIR誘致、特にカジノ反対の立場からの立候補となっている。林市長はIR誘致推進派であり、選挙戦の構図がいくぶんハッキリしてきたが、選挙は水物であり、安易な予想は出来ないというのが本音だ。
市長選を巡っては横浜市議の太田正孝氏、動物愛護団体代表理事の藤村晃子氏などが反対派として出馬を表明しているがいずれも党の推薦などは無かった。6月末に「IRを断固阻止する」として横浜市立大学元教授の山中竹春氏が出馬を表明。山中氏は立憲民主党が推薦し、IR反対の統一候補として支援を呼びかけているが、一本化出来るかは不透明だ。さらには自民党の小此木八郎衆院議員・国家公安委員長(当時)が、「IRとりやめ」を掲げ、閣僚を辞任してまで出馬を表明。統一候補を出せずにいた自民党は対応に窮した。
そこにきて、多選・高齢などを理由に自民党横浜市連は推薦出来ないと伝えていた林文子市長がIR推薦派として出馬するとなると、さらに対応に窮するはずだ。
そもそも横浜市は菅義偉首相のお膝元。自民党としてはどうしても落としたくないところだろう。野党に取られたとなると、後に控える衆院選にも影響を及ぼす。だが、国策として推進しているIRも成功させたい。反対派候補者が乱立する中、IR推進を掲げているのは林文子市長と、元衆院議員・内閣府副大臣の福田峰之氏(57)の2人だけである。福田氏は、当初IRに関しては「ニュートラル」というスタンスを強調していたが、有権者から「立ち位置がわからない」との声を受け、改めて誘致賛成を表明しており、推進派としてはトーンが低い。
さらにここ数日の間に、元長野県知事の作家・田中康夫氏(65)、元検察官で弁護士として活動するほか、平成29年からは横浜市のコンプライアンス顧問として務めていた郷原信郎氏(66)がIR反対を掲げて出馬の意向を表明した。郷原氏は、7日、横浜市役所で記者会見し「自分はカジノに反対だが、民意を問うプロセスとして住民投票をしたい」と述べている。
横浜市が市長選を経て、IR誘致を決定、または破棄に至る道のりには6つのパターンがあると考えられる。
①推進派が当選し、誘致決定。
②推進派が当選し、住民投票で誘致決定。
③推進派が当選し、住民投票で破棄決定。
④反対派が当選し、破棄決定。
⑤反対派が当選し、住民投票で誘致決定。
⑥反対派が当選し、住民投票で破棄決定。
いずれの道を辿るにしても一悶着も二悶着もありそうだ。