和歌山県は誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の運営事業者公募(RFP)に応じていた「クレアベストニームベンチャーズ」(東京)を優先権者に決め、きょう2日に発表することが確実となった。仁坂吉伸知事が午前中に会見を行う。IAGが複数の関係者を取材し、分かった。
苦渋の決断だったようだ。県が1月15日に締め切ったIR事業者公募には「クレアベストニームベンチャーズ」(東京都)と「サンシティグループホールディングスジャパン」(東京都)の2者が応募。両者の一騎打ちとなっていたが、選定作業が大詰めを迎えた5月12日にサンシティグループホールディングスジャパンが辞退を表明した。
これを受け、仁坂知事は「1社を選ぶかどうかということになったので、痛いなという感じがする」と誤算を嘆くとともにクレアベストについて「国に提案する区域整備計画が合格する可能性が非常に低ければ、選ばないこともあるかもしれない」と誘致断念も視野に入れていた。
一方でIR事業は自身の政治家生命をかけた事業でもあり「私はずっと推進をしている。選ばないということは、ここ数年間、IR誘致は諦めたことになる。これだけ大きな投資案件、雇用・所得拡大につながる案件はめったにない。和歌山の将来のためにチャンスは絶対生かした方がいい」とも述べていた。
和歌山に残された選択肢は事業者をクレアベストに決定するのか、再公募か、あるいはIR事業からの撤退か。実際、地元の財界などからは再公募を求める声もあったが、県は外部の有識者9人からなる選定委員会の意見などを元に最終的にはスケジュールなどを含めて知事が総合的に判断し、優先権者を選定した。
IR候補地は和歌山マリーナシティとし、今後はクレアベストと組み、県が掲げる「Sports&Wellness」などを柱とする地方型IRを目指し、区域整備計画を進める。国に対して今年10月1日から22年4月28日までの間に認定申請。国内最大3カ所とされる区域認定を勝ち取った場合には、全国に先駆け、2026年春のIR開業を目指す。
優先権者となったクレアベストニームベンチャーズは、カナダの投資会社クレアベストグループの日本法人。同グループはカナダ、アメリカ、チリなどのIR、リゾート開発に投資家、運営者として関わっているほか、イギリスやインドではオンラインゲーミングやeスポーツビジネスにも携わっている。しかし、業界関係者からは「運営実績に乏しい」との指摘もある。
IR誘致レースには横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県が参戦。これで大阪の「MGM」「オリックス」に続いて事業者が決まったことになるが、実績で見劣るクレアベストにとっては、ここからが正念場となる。