大阪IRの事業者が米カジノ大手「MGMリゾーツ・インターナシ ョナル」とオリックスの共同体に決まることが確実になったことを受け、ディーラー養成校の動きが再び活発化しつつある。
またひとつ、大阪に鳴り物入りのカジノディーラー養成学校が誕生する。IGS(International Gam-ing School)大阪校(大阪市中央区)は世界最高基準のディーラー育成を目指し、7月開校予定。すでに学校説明会、体験授業などの準備も着実に進んでいる。
このスクールの特徴は大阪校校長兼IGSゲーミングインストラクター、北垣智佑貴氏の言葉を借りれば「世界的な組織力」と言うことになる。なるほど、最高顧問のスティーブ・キャロル氏は世界中で40年以上にわたり、カジノコンサルタントやカジノマーケティングに関わってきた。
北垣氏は「シンガポールのマリーナベイサンズホテルの立ち上げなど、100カ国以上のカジノオペレーションを担ってきた。そんな彼らが私たちの日本でのIR事業に必要な人材育成のためのスク ールをつくる企画に賛同し、サポートを約束してくれた。バックボーンとしては絶対に欠かせない人物」と話す。
もう1人の重要人物はIGS名誉校長のロイ・ウィートリー氏だ。こちらもカジノ業界40年のベテラン。オーストラリアでカジノディーラーとしてのキャリアをスタートさせ、シンガポールでのマリーナベイサンズホテルの完成にともない現地でゲーミングインストラクタ ースクールを開校し、成功を収めた実績がある。
「マリーナベイサンズやゲンティンが運営するクルーズ船との太いパイプは彼ら抜きでは語れません」
明確な出口戦略
こう話す北垣氏自身は2005年に日本初のカジノ養成学校「日本カジノスクール」を卒業し、その後米国ラスベガスのディーラースクール「PCI」へ。そこから韓国・ソウルの「セブンラックカジノ」経て一時帰国すると、2014年からシンガポールのマリーナベイサンズでディーラーとして腕を磨いてきた。複数の国のカジノ事情を知るのは大きな強みかもしれない。
北垣氏によると、このIGS、実は2020年4月に大阪・南港に開校する予定だったという。しかし、延期となり、その後はコロナ禍で開校がここまでずれ込んだ。
今回のスタートを前に世界基準のプログラム、最先端のゲームテーブルで学べる点をセールスポイントとして強調。さらに、ラスベガスとイタリアのカジノスクールとも3校提携を結んでおり、卒業後は短期間の留学プロブラムに参加できるが、最も力を入れているのはやはり”出口戦略”だ。
関係の深いマリーナベイサンズやゲンティンのクルーズ船でのディーラー業務は言うに及ばず、大相撲の元大関・把瑠都(カイド・ホーベルソン氏)が現在、国会議員を務めるエストニアともつながりがあり、この4月には、北垣氏が指導した生徒ら10人以上がディ ーラーとして現地に向かい、すでに働いている。
専門学校がIRコース新設
また、大阪ではIR開業に備え、学校法人・滋慶学園グループが運営する「大阪ウェディング&ホテル・IR専門学校」もディーラー養成に本格参入し、話題となっている。昨年4月に国内の専門学校として初めてIRコースを新設。カジノの運営やゲーミング手法を幅広く学ぶとともに、ホスピタリティやエンターテインメント分野で活躍できる人材を育成中だ。
滋慶学園グループでは大阪のほか、東京、福岡でもIRコースを創設しており、こちらは2年目にラスベガス教育サポート校のカレッジ・オブ・サザン・ネバダ(College of Southern Nevada)へ留学する制度を設けている。
一方、昨年の5月、コロナ禍の中で開講した「IR GAMING INSTI-TUTE JAPAN」(大阪市中央区)は社会貢献を柱に掲げ、少数精鋭ながら確実に根を張っている。
本場ラスベガスで15年のディーラー歴を誇るロッキー片桐寛士さんの指導を仰ぐため、生徒は東京、名古屋、岡山はもちろん遠くは沖縄からも入学し、順調にカリキュラムを終え、巣立った人もいる。
「コロナで大変な1年でしたが、生徒のやる気が凄くて、こちらも勇気づけられた。卒業生はラスベガスのカジノの現場でやっていて不思議ないレベル。ディーラーはもちろん、カジノマネジャーになるぐらいの高い意識を持って取り組んでいる」
そんなロッキー氏がスクールと同時にいま熱心に取り組んでいるのがカジノイベント活動だ。3月に大阪・新今宮の「YOLO BASE」で初開催した際には若い女性客を中心に100人が参加。
会場にはルーレット、バカラ、ブラックジャック、ポーカーのテーブルが用意され、「IR GAMING INSTITUTE JAPAN」の講師や生徒がディーラーを担当した。この成功を受け、今後は百貨店など他の施設などでの開催も模索する。
「思った以上の反響がありました。今後もカジノを体験してもらえる機会を増やし、プレーヤー市場もどんどん増やしていきたい。イベントをすることでディーラーも育つし、カジノへの理解も深まっていくはず」
もともと商都大阪には民間の活力で文化を築いた歴史がある。
間もなく産声を上げる「IGS」をはじめ、老舗の日本カジノスクール、日本カジノ学院、「IRGI JAPAN」など現在、7校ある大阪のディ ーラー養成校は今後も個性をぶつけ合っていくことだろう。
「この7月にはMGMの事業計画も明らかになるでしょう。そうなると気運は一気に高まると思います。ディーラースクール全体で大阪IRを盛り上げていきたいですね」と北垣氏。それは業界全体の思いでもある。