急成長する経済に支えられ、ベトナムが古い伝統と現代の豪華さとをブレンドした多様な観光地へと変身を遂げている。
歴史と文化の独特な融合、非の打ちどころのない景色と人間が作り出した素晴らしい建物、大きく異なる特徴を持つ各地方、そして真にフレンドリーな国民性で有名なベトナム。今世界の観光シーンの強国として急速に台頭してきている。
西ではカンボジアのラオス、北では中国と国境を接し、ターコイズブルーの東シナ海がその東岸から南海岸までの全長3,260kmに延びる東南アジアのこの国は、2019年、前年比16.2%増で、過去最高となる1,800万人の海外旅行客を迎えた。
メコンデルタはメコン川を中心として多くの水路が広がる地域。
2019年の実質GDP(国内総生産)成長率が7.0%と、世界で最も早いスピードで経済成長する国の1つで、世界11位、アジアではカンボジアと並ぶ早いペースで成長している。ベトナムは旅行と観光産業にどんどん押し進められており、昨年はそのGDP成長の9.1%に貢献した。

そして、新型コロナのパンデミックを除外すると、近くそれが鈍化するような兆しはなく、政府は2030年までに観光業から、15%から17%の間のGDP寄与を目標にしている。
「ホイアナ」の合弁事業運用機関であるホイアン・サウス・ディベロップメント(HASD)のCEO、スティーブ・ウォルステンホルム氏はこのように説明する。
「ベトナムは長い道のりを歩んできた。
まだ価格面では若さによる魅力を持っているが、成熟し始めている。10年前はバックパッカーとしてこの地を訪れたかもしれない。今、その多くが再訪し、あの頃とは違う、もう少し贅沢な体験をしたいと思っている。
ベトナムにやって来る顧客の実際の特徴が、より洗練された少しだけ高級な顧客へと進化しており、今では彼らに合う様々な施設が用意されている」。
ベトナム観光業界の爆発的な成長は、ホテル客室の供給数に反映されている。1996年には全国で5万1千室だったものが、現在ではおよそ65万室、そのうちの13万室が2016年から2018年までの3年という短期間で作られた。
この成長に飛びぬけて貢献してきたのがハイエンド部門で、5つ星ホテル152軒を含む国内ホテル466軒にある客室のうちの97,098室を占めている。ベトナム観光総局(Vietnam National Ad-ministration of Tourism)が公表した数字によると、2019年だけで5つ星ホテル50軒、4つ星68軒がオープンした。
そしてまだなお新オープンが控えている。ホテル建設の国際デ ータベース『TOPHOTELPROJECTS』が実施した調査によると、8月時点で、ベトナムの開発パイプラインには現在116のホテル計画があり、さらに43,947室増える予定。新型コロナによって遅れが出る可能性はあるものの、そのうちの44軒が今年中のオープンを控えている。
ホーチミンという南部の人気観光地が最も多い18軒を占めていたものの、リゾート地のフーコック島が9軒で、それぞれ8軒の首都ハノイや、海岸沿いのホイアンおよびカムランを抑えて2位につけた。
そのように地理的に広い範囲に広がっていることこそが、ベトナムが世界の観光のホットスポットになっている理由を裏付けている。旅行客は、南へ向かい、国内最大の都市を体験したり、その近代史をより深く学ぶ。そして北へ向かってフランスと中国の建築が独特な形で混在する昔からの政治の中心地を探索。そして中部でより伝統的な文化体験、そして世界有数のビーチでのんびりする。

最もオープンで友好的かつホスピタリティにあふれる地域という人もいるベトナム南部は、かつてのサイゴン、ホーチミン市の活気ある通りと終わることのないナイトライフが最も良く知られている。また、胸が痛むようなベトナム戦争の歴史を振り返る戦争証跡博物館や、ベトコンが米兵の手が及ばない場所に移動するために使用した地下トンネル網のクチトンネルなど、本当に素晴らしい史跡もある。
南部はまた広大なメコンデルタのホームでもあり、メコン川を中心に支流やそれを結ぶ水路が四方八方に広がり、膨大な数の野生動物が生息する地域でもある。
北部にあるハノイは、様々なベトナム文化のるつぼとして有名で、建築と有名なストリートフードを通して過去の入植者たちの影響を垣間見ることができ、そこからまっすぐ東へ進むと、国内屈指の観光地で、世界遺産にも認定されている4万3千ヘクタールの広さに1,600もの島々を持つハロン湾がある。
最後に古都ホイアンとその素晴らしい伝統文化、そしてずっと先まで、白い砂浜とターコイズブルーの海が延々と続く国内有数のビーチが複数あることで有名なベトナム中部。
「ベトナム中部は間違いなくリゾートビーチコミュニティーだ」ウォルステンホルム氏は言う。
「人々はまさにそのビーチ体験を楽しむために、またあまり遠くまで足を延ばす必要なく、ハノイで文化を体験するためにここにきている。
人口の多い由緒あるハノイや、非常にダイナミックなホーチミン市とは異なり、ベトナム中部は文化とレジャーが全てだ。しかしベトナムの素晴らしい点は、やってきた人がその全てを体験できることだ。
ベトナムを観光の目的地として見た場合、タイなどのような場所からはまだ遅れているものの、成長という観点から見ると、海外旅行客を惹き付けるという点でより成熟した観光地と競うのに非常に良いポジションにつけている」。
しかし、ベトナムが提供するものを認識しているのは旅行者だけではないとウォルステンホルム氏は指摘する。近年、ベトナム政府自身が、益々協調してベトナムを観光地、そして東南アジアの新興の投資ハブとして世界に売り込む取り組みをしている。
厳しいビザ方針で長年有名だったベトナムが、2015年、ビザ免除プログラム対象国に24か国を追加し、その範囲を拡大して入国要件を緩和し始めた。追加国は、アジアでは韓国、シンガポール、マレーシア、日本、台湾そしてフィリピン、ヨーロッパでは英国、ドイツ、イタリアそしてフランスなどの10カ国。
そのうち、韓国、日本、台湾の3カ国が2019年の訪越旅客供給市場上位4位にランクインし、その数はそれぞれ430万、95万3,000 、92万6,000人だった。中国が580万人で最大の単独供給市場となり、全旅客数の32%を占めていた。
観光の他、政府は海外直接投資(FDI)という手段で長期的な経済繁栄を追求していくという明確な意思を示した。昨年、ベトナムはFDIで過去最高の203億8,000万米ドルを達成し、2017年の水準を9.1%上回った昨年に達成した191億米ドルからも6.7%増加した。
最も大きく貢献したのが工業・製造部門で、ベトナムが多くのアジア諸国にとって製造施設の拠点を置くための最も安価な選択肢であることを示している。2019年は韓国が79億2,000万米ドル、全体の21%でFDI寄与度トップとなり、その後に香港の78億7,000万米ドル、シンガポールの45億米ドルそしてそれほど遅れを取らずに日本と中国が続いた。
2021年1月にはベトナムの海外投資プロセスのさらなる合理化を狙いにした改正投資法が施行される予定だ。主な変更点には、現在、様々な条件を基に海外投資家を制限または除外しているリストから、物流や貨物輸送サービスなど一部産業を外すこと、そして外資保有制限やM&A活動などの問題についてさらに明確化されたことなどがある。
アジアを拠点にする国際法律事務所、キング&ウッドマレソンズ(金杜法律事務所)のリサーチレポートでは、「ベトナムの最高指導レベルで、政府は、先進クリーンテクノロジーおよび環境保護に重きを置いて、積極的に高い質の投資案件を惹き付け、選択すべきだという認識が高まっている。
また、ベトナムは、外資の供給源とその形式の両方を多様化し、残りの国内市場と海外投資活動の間の相乗効果を高めて、国内経済の自給率と独立を保証する必要があるという認識も高まっている。
そのようなアプローチが2030年までの(ベトナムの)10年海外投資戦略の中で設計されており(中略)、新型コロナ後の環境ではさらに一層関係してくるようになると予想される」と分析している。
政府が既に投資条件を整えた主要セクターに観光業があり、より具体的に言えばカジノを持つ質の高い統合型リゾート開発だ。
2017年3月、政府はカジノビジネスに関する政令 03/2017号を公布し、ベトナムのカジノ法に2つの重要な追加が加えられた。一つ目が、カジノリゾートを開発する海外企業への最低投資要件を40億米ドルから20億米ドルに大幅に引き下げたこと。
2つ目が、待望の3年間の実験スキームで、ベトナム国民がベトナム政府の承認を受けた3つのカジノでギャンブルすることを認めることだった。そのうちの1軒、フーコック島にある不運にもコロナ・カジノという名のカジノのみが、これまでに国民に向けてオープンしている。

財政省は今年に入って、カジノビジネスに関する政令 03/2017号へのさらなる改正を提言する報告書を発表し、改正内容には、カジノ及び統合型リゾート投資家がライセンスを与えられる前に少なくともプロジェクトの合計投資資本の50%を支払わなければならないという要件の排除などが含まれていた。財政省によると、そのような要件は、インフラが不足し、投資家がインフラ改善に追加資金を注入する必要がある可能性もあるような地方で開発される計画に関してはふさわしくないという。
また、現在の規制によって空港などの入国地点でしかカジノを宣伝できないというものを、地域内のどの場所でも宣伝できるようするよう提言している。
これらの措置が海外投資家にどれくらいの影響を与える可能性があるかについては今後見ていく必要があるものの、すでにここ数年、統合型リゾートの分野では非常に大きな動きが見られている。
ホーチミン市から東に車で2時間半の場所にあるザ・グランド ホ ートラムストリップは、2013年にオープンした際には、ベトナム初の世界基準の統合型リゾートとなり、その後昨年始めのフーコック島のコロナリゾート&カジノが続いた。ホイアン近郊のサンシティによる40億米ドルのホイアナプロジェクトは最近、ホイアナ・サンシテ ィ・カジノなど一部施設の限定プレビューオープンを行い、グランドオープンは2021年に予定されている。
そして現在もカインホア省のKNパラダイス カムラン、そしてクアンニン省のヴァンドン経済特区で別の計画が開発段階にある。
クアンナム省文化・スポーツ・観光局は、ベトナムの発展にとっての全5計画がいかに重要であるかを総括し、Inside Asian Gamingに対してこのように話した。2021年に迫るホイアナのグランドオープンが「新しい魅力的な観光商品を作り出し、様々なエンターテイメントサービスが、観光客に、この場所を訪れ、リラックスし、滞在時間を長くし、もっと消費したいと感じさせる。
同時に、ホイアナはクアンナムのナイトライフに関する疑問も解決してくれる。ホイアナは、会議・展示会市場の発展においても重要な役割を果たしており、多くの出張客を惹き付け、MICE業界を作り出している。
将来のホイアナ統合型リゾートは、持続可能な形で発展し、観光業界とその地域の収益の大幅増加、同時に地元住民の何千もの雇用の機会の創出および収入増加、そして人々の生活向上に貢献するだろう」。