2019年11月、北海道の鈴木直道知事が統合型リゾート(IR)誘致レースからの正式撤退を発表し、それに伴い、北海道を統合型リゾート開発希望地に挙げていた事業者たちの希望も断たれた。しかし、まだ闘いを終わらせていない事業者がいる。
新型コロナウイルスが全国的にIRスケジュールに影響を及ぼし、ラスベガス・サンズが最近になって横浜レースから撤退するという状況の中で、ハードロック・ジャパンの町田亜土社長が、日本の現在の状況に関する見解を示し、同社が今なおその目標を見据えていることを明かす。
IAG:世界最大手の事業者の数社が、最近ではラスベガス・サンズが日本でのIRレースから撤退するのを目にしてきました。そして北海道知事が昨年11月に誘致断念を決めて以降、北海道を視野に入れていた企業からあまり声が聞こえてきていません。ハードロック・インターナショナルは現在日本に関してどの位置にいるのでしょうか?
町田亜土社長: 一部の事業者が日本撤退を決めたことは残念です。しかし、ハードロックにいる我々は、新型コロナウイルス感染症に関してトンネルの出口に光が見え始めればすぐに、日本でのIRライセンス獲得に向けた活動を再開できると今でも楽観的に見ています。
日本がなおも、多くの外国人観光客にとって訪れたいと思う場所であるという事実、そして日本でのIRの提案というものが今も非常に魅力的であるという事実は変わりません。
我々は事業者が取り組まなければならないフラストレーションの多くを理解していると同時に、75か国で250以上の会社を運営していることで、ハードロックは非常に多くの場所でこの種のフラストレーションを見てきました。最後には、政府および業界との適切な関わりによって、勝手に解決されるのです。

IAG:LVSの日本撤退は、日本の規制環境が、事業者にとって儲けるのが非現実的となる方向に進んでいることを示していると多くのアナリストたちが述べているようです。ハードロックはどう考えますか?
町田: 新しい法域または国でIRを開発するというコンセプトは常に気が遠くなるくらい難しいものです。考慮しなければならない文化、法律、言語そして社会的な問題があり、「全員にぴったりの」シナリオなどというものはありません。
我々は日本が今でもIR開発地として魅力があり、日本が新型コロナ後に海外からの観光客を惹き付ける革新的な新しい方法を探そうとする時に、IRは重要であると見ています。
当社の狙いは常に、日本市場用にカスタムした、他にはない「ハードロック体験」を提供することであり、日本で日本のパートナー企業と35年以上事業を行なってきた企業として、我々はその体験を生み出すのに適任だと考えています。
もちろん、平坦な道のりではないでしょう。事実、日本政府のIRに関する基本方針をまだ見ていませんし、理解もしていません。日本だけでなく世界中で新型コロナウイルがホスピタリティ業界に与えている壊滅的な影響を受けて、確実に草案から多くの変更があることを予測しています。
IAG:新型コロナウイルスが日本のIR業界の状況を変えていることを予想していますか?
町田: この後、世界が単純に「ノーマル」に戻るとは考えていません。しかし、顧客体験に関する「ニューノーマル」というものがあるとは考えています。我々は顧客が健康や幸せについて不安に感じることのない、安全な宿泊場所、安全な飲食店のチョイス、そして安全なエンターテイメント場および体験を保証する必要があります。
我々がいるこの業界はまた、新型コロナによる変化や経済的打撃に対して耐性がありません。シンガポール、マカオ、ラスベガスを見てください。確実に日本を含む、新しい開発や投資に対する我々の見方に劇的な影響を与えるでしょう。一部の事業者にとっては、この時期の撤退を駆り立てた要因というのは日本政府のIRへの姿勢よりも、新型コロナウイルスの方だったと思います。
しかし、我々は日本政府、そして地方自治体と継続して連携して、新型コロナウイルスの壊滅的打撃から回復する際の彼らの懸念を理解するよう努力し、将来日本にとって、永続的かつ誰もが知るシンボルになるIRを設計、建設、オープンする計画に取り組んでいます。
IAG:横浜市と日本政府は、LVSの撤退はIRプロセスまたはスケジュールに影響を与えないと言っています。どのようにお考えですか?
町田: IRプロセスまたはスケジュールに関する決定を下すのは時期尚早だと思います。日本は、これから新型コロナの感染者数を減らすための最善策、そしてその後は経済的な回復のための最善策を見極めていくことになります。それがどれくらいかかるかは分かりません。
日本政府は、スケジュールに関わらず、心から、日本の人達のことを一番に考えるべきであり、そうするでしょう。そしてそれこそが正しいアプローチなのです。
当社の日本でのIRプロジェクトは、未来に向けた持続可能かつ誰もが知るシンボルになると考えています。正しくそれが行われ、新型コロナによる新しい衛生関連要件の可能性など、将来のいかなる要件も満たせるよう、そして今後何年にもわたって続く方法で行われることを保証したいと考えています。
確実に思うのは、これらのプロジェクトが、今我々が体験しているものを考慮に入れていない、恣意的なスケジュールに単に対応するためだけに急がれるべきものではないということです。