業界が不確実である状態が何週間も続いた後、今確実に「再開の気運」が高まっている。
韓国のカジノが再び営業を始めている。ベトナムでは、残念な名前となってしまったコロナ・カジノが、制限はあるものの再開している。香港では、港珠澳大橋を渡るシャトルバス、通称「金巴(黄金バス)」が復活し、教師や学生は本土の出入境口を自由に往来できるようになった。そしてその入境口の完全開放、少なくとも本土との間の開放目標候補日は6月8日に設定されている。フィリピンでは、現在のECQ(強化されたコミュニティ隔離)の終了日である5月15日が迫っており、マニラ空港は非常に慎重に今日(月曜)運航を再開し、ドゥテルテ大統領は差し迫ってさらなる再開の発表を行なうと噂されている。シンガポールでは、マリーナベイ・サンズとリゾートワールド・セントーサの再開日として現在設定されている6月1日まであとたった3週間となった。
私が今、この記事を執筆しているここマカオでは、最後の新規感染者が出てから1カ月が経ち、現在の感染者数はたった5人、そしてマカオで唯一残った隔離用ホテルのポウサダ マリーナ インファンテで14日間の隔離生活を全うする人の数は100人を下回っている。中国本土の緑・黄・赤システムがマカオでも導入されるようになった。これもまた前向きな兆候だ。
マカオで「ゴー」のボタンを押すには2つの事が起こる必要がある。1つ目が、たとえ広東省の数都市限定であっても、IVS(個人訪問ビザスキーム)を復活させること、そして2つ目が中国本土へ戻る旅客に対する14日間の隔離措置を廃止すること。どちらか、またはその両方でさえも、上手くいけば今月中、可能性が高いのは6月中に起こる可能性がある。
その「ゴー」ボタンを一旦押せば、4つの因子がGGRの成長を推進するだろう。
中国のマクロ経済
アジア全土のIRの収益、特にマカオでの収益は常に、中国経済の状態と密接に相関してきた。業界のEBITDAは、それ自体がおそらく100から200万人いる「影響力を持つプレイヤー」に占められた大きな利益を生み出すダイレクトのプレミアムセクターによって決定されており、その多くが広東省や中国各地の事業主たちだ。
因子1:中国経済の回復
中国経済は新型コロナウイルス感染症によって深刻な打撃を受けており、その100万から200万人といわれる「重影響力を持つプレイヤー」は、IRを訪れようという気になるより前に、自分自身の事業の回復に集中しているだろう。
因子2:中国政府による刺激策
何十年もの間、中国政府は、その素晴らしい国内経済のパフォーマンスを自身の成功と国際的なソフト・パワーを測る主要基準として見てきた。中国はその経済を低迷させることを非常に嫌がっており、新型ウイルスによって米国経済が弱っているこの機に乗じることすらして、回復への道に向かって強力なスタートダッシュを切るために多くの刺激策を実施する可能性がある。
訪問客の心理
中国経済の回復だけでは足りないだろう。潜在的な訪問者が、IRを再び訪れるための適切な心理状態にある必要がある。
因子3:懸念要素
これは大きな要素だ。政府から公共の場所や大勢の集まりが危険だと何カ月間も言われ続けてきた後で、リゾートはゲーミングフロア、レストラン、ホテル、そしてリゾート内の他の共用スペースが、楽しみのためだけに訪問するのに十分に安全であると訪問客に納得してもらわなければならないだろう。これは簡単な仕事ではない。消費者の信頼を生み出す新たな取り組み、そしてその新たな取り組みに関するメッセージを効果的に届けることの両方が関わってくる。
因子4:お楽しみ要素
その懸念要素に対抗するための新たな取り組みの多くには、分離、社会的距離の確保、非接触型に向かうこと、そして壁を立てたりビニールで遮断するなどといった方法が関わってくるだろう。しかしカジノやリゾートというのは交流の場であり、訪問客はグループの中で触れ合うことによって楽しい時間を過ごす。これらの折り合いをつけることは簡単ではないだろう。
業界として、我々は基本的に中国経済についてはどうすることもできない。しかし、訪問客の心理を後押しするためにできることはたくさんある。本シリーズの次回記事では、その懸念要素に対処し、リゾートが訪問客にとってより安全だと感じられる場所にするための今後のイノベーションやイニシアチブを考察する。