ユーロ・パシフィック・アジア・コンサルティングのショーン・マクカムリー氏が、オンラインとランドベースゲーミング業界両方の将来的な発展の中でブロックチェーンが果たすことのできる役割を考察する。
ゲーミングビジネスで成功するために絶対に不可欠なことは、製品やゲーム開発の全ての分野において革新することだ。常に革新を求める人々に届けられている最新テクノロジーやプラットフォームの進歩を取り込み、その届け方やプロセスをより簡単に、かつ透明性の高いものにすることが成功へのカギとなる。
先進的な考えを持つゲーミング幹部たちが関心を寄せる最新イノベーションが、ブロックチェーンと呼ばれるものだ。実際何年も前から存在しており、否定のしようがないほど巧妙な発明であるブロックチェーンは、サトシ・ナカモトという仮名で知られる人物、または集団によって生み出された。
ブロックチェーンが、ゲーミング企業にもたらすことができる有用性を見る前に、まずは全員が尋ねる質問に応えることにしよう。ブロックチェーンとは何か、そしてどういう仕組みで動いているのか?

基本的な概念として、例えばコンピューターのネットワーク全体で何千回も複製されているエクセルシートを思い描いてほしい。そして、このネットワークが何千もの異なるコンピューターからこのエクセルシートを定期的にアップデートするのを想像してみよう。
ブロックチェーン上に置かれた情報は、絶えずリコンサイルされた共有データベースとして存在する。この方法でネットワークを使用することが、明かなメリットを持っている。ブロックチェーンデータベースは、単一の場所に保存されていない。つまり、それが保持する記録は、本当の意味で公開されており、簡単に検証できる。ハ ッカーが破壊できるような1カ所に集められた情報というのは存在しない。
何百万台ものコンピューターが同時にホストになっているそのデータは、インターネット上にいる誰もがアクセスできる状態である。従って、オンラインゲーミングビジネスにとって、透明性があり、金銭取引だけでなく事実上価値のある全てを記録するようプログラムすることができる破損することのない経済取引のデジタル台帳を提供してくれるために、この属性は特に役に立つ。
デジタル情報を複製ではなく広く配布できるようにしたことによ って、ブロックチェーン技術は新種のインターネットの骨格を作り上げてきた。当初はデジタル通貨用に作られたそのテックコミュニティが、今その技術の別の潜在的な使用法を見つけ始めている。そして良いニュースというのが、インターネット(または車)と同様、ブロックチェーンを使用するのにその仕組みを知る必要がないということだ。
ブロックチェーンをめぐるあらゆる大盛り上がりを考えると、少なくともゲーミング事業者にとって、このテクノロジーは何を与えてくれるのか?至る所での大盛り上がりにも関わらず、現時点では、ビットコインやイーサリアムといったデジタル通貨による支払いを受け付けたり、それで支払ったりする以上のことはできない。しかし、大きなプラス面は、デジタル通貨は非常に安全かつ透明性が高く、事実上瞬間的なもので、銀行やクレジットカード販売会社が無用となる。これは、費用削減、そしてオンライン事業者にとって最も重要な、支払い取り消しがないということを意味する。
デジタルゲームの普及は、ゲーミング業界の中で大きな影響を持ってきた。製作者とプレイヤーの間の距離が縮まることによって、業界に様々な新しい課題だけでなく、刺激的な新しい機会も提示されている。ランドベースカジノにとって、それは新たなブランディングの可能性を意味する。
現代のプレイヤーは、比較的シンプルなゲームからでさえ、より洗練されたゲームプレイを期待するようになってきた。我々は今、ゲ ームを新しいプラットフォームや配信手段へと押しやっていくテクノロジーでのトレンドによってゆっくりと、箱に入って販売されていたゲームの時代が廃れていくのを目にしている。その結果、収益化とエンゲージメントのための新モデルが必要になってきている。ゲーミング企業はすぐにこれを認識するようになり、ブロックチェーン技術を通じてランドベースとデジタルが連携できる潜在的な交差ポイントを探りながら、多くの会社がこのテクノロジーを理解する努力をし、そしてさらに多くの会社がビジネスモデルをそれに適用できるよう変化させている、または変化させる計画をしている。
新たなブランディングおよび収益化戦略で見て見ぬふりをされている話題が、基本無料のフリー・トゥ・プレイ(またはF2P)プレイモデルだ。F2Pゲームとは、プレイヤーが費用を支払わず利用できるゲーム。そして、ゲーム内でのアイテム課金がその後ゲームの収益化に使われる。または、一部の大きな施設の場合には、累積ロイヤルティ・ポイントをそのブランドの施設で交換できる。
プレイヤーは無料でプレイできるが、しばしば特定のゲーム内アイテム(強力なボーナス、レベルまたはコスチューム)を購入するよう勧められ、頻繁に行われるアップデートや修正を通じて長期間ゲームにつなぎとめられる。つまり、F2Pの時代には、ゲームは、製品というよりも、よりサービスに近づいていると言える。
革新的な事業者たちは現在、デジタル通貨を受け付けるだけでなく、個人所有とベーストークンの双方向の交換を可能にするブロックチェーンで動くプラットフォームの開発・統合を通じたより大きなビジョンを描いている。
ブロックチェーン技術を組み込んだビジネスモデルを構築してきたゲーミンググループの1つに、「RubieCon」というソーシャルゲ ーミング企業がある。ソーシャルカジノ市場、時に東南アジアでの大きなギャップを目にしたRubieConは、アジアの新世代プレイヤーをターゲットに、トークン化されたF2Pソーシャルカジノゲームの提供を計画している。開発計画の一環としてRubieConは、全てのゲーム販売会社、広告会社、マーケティング会社そしてプレイヤ ーにオープンかつ無料の基礎管理型独立プラットフォームも制作している。従来のやり方を壊し、スマートにブロックチェーンをコアコンポーネントとして使用することが、すでに空腹で待ちきれない市場にソーシャルゲーミング新時代の始まりを告げることになる。
オープンプラットフォームの使用を通じたトークン化経済の導入によって、ブロックチェーンは透明性の高い検証と共に新しいインセンティブを可能にさせてくれる。もう一つの企業、アルファスロ ットはオンラインとランドベースのオフラインゲーミング環境とを繋げる独自トークンの開発・立ち上げの意志を発表している。
ブロックチェーンの境界を広げ始めると同時に、単なるゲーミング営業以上に収益源を拡大させるのがこういったイノベーションだ。専用のスマートコントラクトウォレットを通じた暗号通貨決済オプションが限られていること、トークンが使用できるブロックチ ェーン対応のプラットフォームがほとんどないこと、そしてトークンベースのロイヤルティプログラムがないことが相まって、事業者が思い切って飛び込み、この新しいテクノロジーが自分たちの世界でどのように新規ビジネスチャンスを拡大・創出できるかを知り始めるには今が絶好のタイミングだ。